ヤドカリと磯の生き物の飼育

14話
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死海状態で続々昇天

↑劣悪な環境のなか、最後まで頑張っていたが、ついに力尽きた「チビ」。翌日産まれ故郷の海に埋葬した。


 いや〜、ミスッてしまった。4匹いたホンヤドカリのうち3匹が昇天。原因は海水の塩分濃度が高くなりすぎたため。

 このところの連日の猛暑で、ホンヤドカリとヒライソガニとゴカイのいる、海水のデスクボーイ水槽は水温がウナギ登り。放っておけば35度を超えてしまうので、金魚のコーナーで紹介した、冷却用ファンをやや遠くから(海水で使用すると塩分で故障するとある)回して、なんとか28度台まで下げていた。

 デスクボーイ水槽は容量が15リットルほどと少ないうえ、水面の開口部が60cm×17cmと大きい。したがって室温の変化に、直接大きな影響を受ける。いわゆる熱しにくく冷めにくい水なのだけれど、水量が少ないときはかなり敏感に反応してしまうのだ。風を送って海水を蒸発させ、気化熱を奪って水温を下げるのだから、蒸発した分だけ水面が下がるのは必定。冷静に考えてみると、蒸発するのは真水だけなのだけれど、蒸発とともに回りのガラスや水槽枠におびただしい量の塩の結晶が生じるので、ついつい塩分も同様に少なくなっていると錯覚してしまった。こちらの塩は、エアレーションなどで生じる泡の飛沫が乾いて塩の結晶だけ残ったもので、蒸発している海水は真水部分だけが減っているのだった。

 ホンヤドカリたちの元気が急になくなったのを、水温上昇のせいだと勘違いしてしまったわたしは、氷を放り込んだり、凍らせたペットボトルを水槽内に浸けたり、ファンを回したりすることに集中したのだけれど、結果2日ほどで、水面の高さが半分近くにまで蒸発してしまう。そこでせっせと海水を造って足していたのだが、これが大チョンボ。真水を足さなきゃいかんかったのだ。
 「やどかり研究所」のyamさんのご指摘で、ようやく気づいた始末。あわてて比重計で水槽内の水を測ってみたところ、なんと針を振りきるほどの高濃度! 煮詰ってしまっている。これじゃ「死海」以上の酷い環境である。海水を半分以上捨てて真水を足して、ようやく適正比重になるほどだった。バカなことをしてしまったなあ。前回の記事「ヤドカニ合戦」に登場したヤドカリたちは残念ながら死んでしまった。残ったのは「瞬間脱皮」の1匹のみだ。

 水槽内の比重を直接測らなかったのは、デスクボーイ水槽の水面高が10cmに満たなくて、わたしの使っているコーラライフ社の比重計(高さ約20cm)では測りにくかったからなのだ。それで人工海水をバケツで作るときにのみ測り、そのまま水槽に加えていた。残った塩分濃度の高い飼育水に海水がプラスされ、この繰り返しでどんどん高濃度になってしまった次第。そう言えば、ヤドカリって高水温には強いはず。だいたいが夏の潮だまりのお風呂みたいな温度のところにいたりするんだから。

 最初に春採集してきた白浜産の残党3匹のうち2匹が逝き、1年生きた明石産の「チビ」も最後まで頑張っていたが、12日に事切れた。yamさんのご指摘を受けたのが12日。チビには可哀相なことをしてしまった。なにせ13日にはチビの採集地に海水浴に行くことになっていたのだから。チビの亡骸は翌日産まれ故郷の浜に返してやりました。

 生き残った白浜産のホンヤドカリ1匹とヒライソガニもかなり弱っていたが、比重が適正に戻ると、活発さを取り戻した。ゴカイも無事なようすで、砂にトンネル跡を残している。アホな飼い主が苦しい思いをさせてしまったが、今後は気をつけます。許せ。こりゃ昨夏の大量死も同じ原因だったかもしれないなあ。いや〜チョンボでした。理科の勉強やり直し。である。

 んなことがあって、ホンヤド水槽のヤドカリが1匹のみになってしまった翌日、子供たちをつれて、チビの故郷、明石の林崎松江海岸へ行った。昨夏、チビを採集したときは大潮で、引き潮の潮だまりにはハチ公前交差点のようにチビヤドが溢れかえっていたのだけれど、今回は潮位差が少ない日だったので、干潮時でもさほど海面が下がらず、ヤドカリの姿は全然見えない。動いているのはフナムシばっかり。

 仕方なくチビの亡骸を浜に埋めて、手ぶらで帰ろうと思ったのだけれど、全くガキの目というのはどういう構造をしているのかわからんが、微少な幼生ヤドカリを5匹も捕まえてきた。どこに居たん?それ。うち微少中の微少であった1匹を海に返し、4匹を持ち帰ることにした。わたしもチョンボ死させてしまった責任を感じて、ヤドカリを探したのだけれど、わたしの目には全く見えないので諦めた。何やらのんびり泳いでいたフグの子供(?)みたいな小さな魚を掬ったのだけれど、これは帰路弱って死んでしまった(居酒屋なんぞに寄っているのがいけない)。もっとも、わたしに掬われるくらいだから、最初からかなり弱っていたのだと思う。

 果たして、電車の旅を乗り越えて水槽まで生き着いたチビヤドは3匹。適正比重に再調整された水槽内を活発に歩き回っている。そういえば、死んだチビも、やってきたときはこのくらいの微少ヤドカリだった。しかし今回は春から2度の脱皮を終えて1.5倍くらいに成長したヒライソガニがいる。食われないように頑張ってもらいたいものだ。



←明石の林崎松江海岸から8月13日にやってきた、チビヤドたち。微少貝の貝殻はたくさんストックがあるので、入れてやるとさっそく宿替えしている。奥の個体は右の大ばさみが取れてしまっているが、脱皮をして成長すれば再生するだろう。口に加えている赤いものは、顆粒状の海水魚のエサである。
←先住者がほとんど死んでしまったうえ、比重も適正化されたので、わが物顔で歩き回っている。
←チビ同士は出会うと挨拶するように、とりあえずケンカしている。
チビホンヤド3匹の来訪で、水槽の住人はホンヤド4、ヒライソガニ1、ゴカイ1、巻貝1となった。
←海から帰ってしばらくの間は、一緒に採ってきた海藻が新鮮なので、それをつまんで食べている。
←心配なのは脱皮のときに、デカクて凶暴になっているヒライソガニに襲われないかだ。現在は高濃度海水のダメージで、砂に潜っておとなしくしているのだが…。

↓住人の入れ替えもあったけれど、なんとか落ち着きを取り戻した海水水槽。
2002/08/14 (Wed)

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