ヤドカリと磯の生き物の飼育

15話
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甘海老騒動

↑むふふ。久々のご馳走だ。ヤドの野郎どもには金輪際渡すもんかいっての。


 昨夏から永らく更新がストップしてしまったが、海水水槽はその後も特に問題なく稼働している。夏に明石から来たホンヤド三匹は一匹が姿を消したが、あとは健在である。これ、どうやらカニの野郎の仕業ではないかと思っている。海水は2、3週間に一回、コンスタントに交換しているが、あるとき突然一匹の姿がかき消えた。探索したけれど脱皮殻や遺骸は見当たらなかった。脱走した痕跡もない。疑惑の根拠はヤドカリに比べてカニの成長のほうが早く、大きさに差がついてきたからだ。不信を感じてからはカニの動きを注意深く観るように心がけているのだけれど、わたしが観ているそのときに限ってはおおむね神妙にしている。結構、とんだ一杯食わせ物なのかもしれない。

 昨春南紀白浜からやってきて、夏の塩分高濃度禍を生き延びたホンヤド一匹、そして前述のヒライソカニ一匹、ゴカイ一匹も健在である。海水魚がいなくなって久しいので、特に水質調整や凝った濾過装置を設置することはしていない。比重測定と人工海水換えだけである。エサも普段はテトラの沈下型海水魚用ミニグラニュールのみである。時々キョーリン製の「ザリガニ・ヤドカリ・カニのえさ」を与えている。照明を点灯していると、サンゴなどに茶苔が密生してくるが、ヤドカリたちはこれを摘んで口に運んでいるようなので、エサを入れ過ぎないように注意している。というわけで、海水水槽の現在の住人はヤドカリ三匹、カニ一匹、ゴカイ一匹という面子である。

 濾過装置はデスクボーイ水槽付属の水中モーターによる底面濾過のみだ。したがって底砂に汚物が堆積してくるのだが、この掃除がなかなか困難だった。以前はモーター付きの「おそうじくん」という製品で砂中の汚物を吸い上げていたのだが、海水で使用しているせいか、すぐ壊れる。この製品、スイッチ部のつくりが非常に甘い。2回買い替えたがやはりすぐ動かなくなるので、他の方法を考えることにした。オカヤドカリの欄で書いたが、デスクボーイ水槽は水面まで15cm程度しかないので、空のオカ飼育には適しているものの、水を入れた状態ではサイフォンを使った吸い上げ方式の清掃用具を使用するのに高さが足りないのだ。そこで、金魚の底砂の清掃に重宝している「プロホース(水作株式会社)」のパイプ部分を20cm程度に切断して使ってみた。最初の吸い上げにコツを要するものの、これでなんとか砂中の汚物の掃除が可能になった。

 そんな平穏な海水水槽であるが、3月3日は桃の節句である。家計も省みず何をトチ狂ったか家人が寿司ネタを買ってきたのである。トロ、甘海老、イクラ等。ま、たまにならバチも当たらんだろうと喜んで食していたのだが、ふと水槽を見るといつもは岩陰に潜んでいるカニの野郎が前面ガラスのほうに出張って来てハサミで手招きをしているではないか。ははあ、珍しく旨そうなものを喰っているヒトどもに後相伴を要求しているのだなと察したわたしは、贅沢は敵だ、などとぼやきつつも甘海老の尻尾を恵んでやることにしたのである。たまにはこういうものを与えておかないと、またヤドカリを襲われてもかなわないし。

 油が浮くので一尾のみ、まず岩の上にいたヤドカリに与えてみた。「お!」と、あわててがっつくヤドカリ。千切っては口に運び、をくり返しているうちに、甘海老の千切りクズが水槽じゅうに散乱してゆく。その香りに誘われたのか、カニの野郎がそそくさと岩の上まで上がってきたと思ったら、ハサミを振り上げてヤドを威嚇。ヤドも負けじとカニに背を向けて頑張っていたが、脅されて引っ込んだ隙にささっと強奪され岩陰に持ち込まれてしまった。可哀想なのでもう一尾をヤド用に与え、回し喰いさせたのだが、あのカニの態度はカタギじゃないね。だいたいいつも偉そうに肩をいからせて歩いているし。カツアゲはするし。岩に掛けた脚の角度も賭場の博徒っぽい。そこで命名。カニの名前は「磯蟹の忠治親分」ということにした。二足ならぬ十足のワラジ、か。

 面白いのはゴカイである。底砂の上に甘海老やシジミなどの生餌が横たわっていると、その真下の砂がモゾモゾ、っと盛り上がる。普段どこにいるのか解らないのだが、すぐ餌の下にやってくるようなのである。その素早さといったらちょっと不思議なほどだ。あのカラダでどうやって嗅ぎつけて砂中を移動してくるのだろう。しかし来るには来るものの、すぐにカニやヤドカリがハサミでぶら下げてエサを移動させてしまうので、アタマを出して食べるところはまだ観たことがない。骨折り損だね。骨はないだろうけど。



←明石の林崎松江海岸産のヤドである。昨夏のあのチビが、半年経ってずいぶん大きくなったもんだ。
←こいつも明石産。まだ小さいのでカニ親分には要注意だが、なんとか上手く立ち回っている。
←オイラはそろそろ一年になる、南紀白浜からの生き残り。ここん家にカニと一緒にやってきたんだが、きゃつめ、ずいぶん大きくなっちまいやがった。しかし、負けてねえぜ。「白浜の黒松」という名にしとく。
←甘海老は旨いな〜、はいいけど、キミちょっと千切ってはポイするもんだから、その辺を散らかしすぎ。そんなことするから、すぐにカニの「忠治親分」に気づかれてカツアゲされてしまうんだよ。
←ヤドから奪い取った甘海老をアジトに持ち帰り、しっかりハサミで確保して食する「磯蟹の忠治」親分。そろそろ脱皮せにゃならんころあいだが…
←明石産の二匹。どうやらユビナガホンヤドカリらしい。こいつは色白なので「明石のシロ」(仮称)としとこう。
←こちらは、黒っぽいので「明石のクロチビ」(仮称)と呼ぶ。

↓「クロチビ」にガンをとばす、「磯蟹の忠治」親分。
2003/03/05 (Wed)

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