金魚と淡水魚の飼育
25話
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オトシンクルスとタイガープレコ



オトシンクルスは現在3匹いる。そのうちの2匹がいるすぐ側に弱り気味のタイガープレコがへたっている。
中央、ガラスに吸着中のオトシンは、ほぼ5cm近い大きさに成長した。左奥のオトシンは2cm強。

 ニューグリーンFを投入して海軍病院と化した雄金魚6匹の60cm水槽は、一週間経過して薬剤の緑色も薄まってきた。病状はどうかというと完治にはほど遠い状態だ。一番重傷のオヤジは、なんとか泳いではいるもののダッチロ−ル状態である。他の5匹も口先や胸びれの付け根に白いカビを付着させている。まさに傷痍軍人である。しかしさすがに傷痍軍人を街角で見かけることはなくなったなあ…余談はさておき、みんな苦しそうだ。口先に付着したカビが痒いのか痛いのか、底砂に激しく擦り付けようとするものがいる。水槽の隅に頭を突っ込んでじっとしているものもいる。水面近くのガラス面にはあいかわらずカビの滓が付着している。そういう訳で、今週も3分の2換水の後、再びニューグリーンFを投入し水温を23℃前後に設定。水カビ発生の終息を待つ。

 75cm本水槽は先週は久しぶりに産卵の無い一週間だった。金魚たちはあいかわらずサカっているのでまたいつ産卵が始まるかはわからないが、とにかく水質の極端な悪化はなかった。それで通常の3分の1の換水作業を行ったのだが、作業の途中でおや?と思ったのが、あの臆病なタイガープレコ様がおでまししているのである。前面のガラス面や隠れ場所のない水槽の底にデロンと無防備に。今までは照明を点けただけで、一目散に物陰に隠れてしまっていたのに、あわただしい水替え作業の最中にどうしたことかと思いつつも、これは撮影のチャンスとボロデジカメを取り出して写した。水草に紛れてやってきたときより体長は2cmほど大きくなって6cm前後である。まあ、元気でなにより。と思いきや、全く元気が無い。指先で突ついてみても少し位置を変える程度にしか動かない。どうやらここ2、3週の金魚の産卵による水質悪化でダメージを受けたようである。また厄介ごとがひとつ増えたようだぞ。

 困った事態だけれど、ともあれそんな理由で初めてタイガープレコを撮影できたので、今回は金魚水槽の脇役たちをテーマにする。歴代の脇役たちには現役のオトシンクルスの他に石巻貝、ヤマトヌマエビ、ヒメツメガエル、アルジイーター達がいた。しかし病気や水質変化に強い金魚たちと違って、デリケートな彼等はなかなか長生きできずに死滅してゆき、わたしの金魚飼育の経験が重なるにつれ積極的に追加されることはなくなった。脇役、なんて言っているが、主役の金魚は息子の「金魚掬い」の産物である。それに比べてこれら脇役の面々は、こけ取りや水槽の彩りなどを考慮して、「お金」を出して導入した生き物たちである。どちらかといえばこちらが主役だといってよい。目立つ金魚の赤い色より、これらの「自然」色ともいえるカラーのほうが趣きがあるし、わたしにとっても好ましいものなのである。金魚好きのかたがたには不謹慎な発言かも知れないが、金魚が全滅し、脇役達だけの水槽が実現した時こそ、わたしの理想のアクアリウムに近づくのである。これ、ひとつのジレンマです。

 なかでもわたしは、オトシンクルス・ヴェスティートゥスが好きだ。このペル−原産のナマズの一種は、単なる水槽の掃除役として扱われることがほとんどだが、観賞魚としてもこいつら非常に愛嬌があって素敵な奴らなのである。敏捷で勤勉。いかにもせっせと仕事をやってます! という感じでコケを食べている。金魚の悪童たちがちょっかいを出しても、サッと動いて仕事を続けるふてぶてしさもなかなかよろしい。また、なかなか強い体質である。わが水槽の度重なる病院化をものともせず、いつも元気である。当欄最上部の写真でガラスに貼り付いている個体などは、3.5cm程の成体でやってきたのが、兵学校のオヤジが「小赤」だったころ。それから3年たつが堂々と生きている。図鑑などによるとオトシンは全長4cmとあるが、もはや5cmに近い葦太夫に成長した。その奥にいる個体は1年半程前に1.5cmほどの幼体でやってきた。同時に産まれた金魚達がいまや10cmを超えるのにいまだ2.5cmほど。腹を空かせた金魚の口にあっというまに吸い込まれそうなものだが、直前にすばやく逃げる。そして何ごとも無かったように仕事を続ける。そのさまが実にクールなのである。それにこいつら「柄」が良い。横腹に一本通る黒い縞が粋。目玉は頭が悪そうで憎めない。ガラスに貼り付いて見える白い腹にうっすらと見える渦巻き模様。その下で堅そうで細い糞が時折並んで渦を巻く。なんとも芸人やの〜、である。あ〜、いつかオトシンが主役の水槽をやってみたいなあ。

 タイガープレコは闖入者である。しかもなかなかわたしに姿を見せてくれなかったので、あまり愛着が湧かなかった。今回、弱って出てきたというのなら、これは心配だ。はやく元気を取り戻して、今まで通り忍者のように隠遁し、時折出現しては成長をアピールしてもらいたいのだが……。


←目つきや風ぼうはコワモテだけれど、その実非常に臆病なタイガープレコ。弱ってしまったせいで、初めて撮影させてくれたのだが、今後が心配。しかし見ない間にかなりデカクなっていた。
←オトシン同様、吸盤状の口でガラスに吸い付くタイガー。体型はやはりナマズ。非常にずんぐりしている。

↓「おい、見てみ。あいつ出てきよったで」
「ほんまや、いつも隠れてるくせになあ」
「どこか具合でも、悪いんと違うか?」
「ちょっと、突ついてみたろかな」
「う〜ん。小さいけど、顔がこわいさかいなあ、やめとき」
2002/03/17 (Sun)

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