金魚と淡水魚の飼育
17話
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招かれざる?客


 まだ残暑は厳しいとはいうものの、ノロマで根性無しの台風11号が通過してからは、いくぶん過ごしやすくなってきたようだ。気温の微妙な変化は、なにより洋式便器の便座で尻から感じとることができる。少しひんやりしてくるからだ。そして、水槽の水温もじりじり下がりだしてきている。夏の「たいへん」も終わりに近づいてきた。やれやれ。でも四季のある国に住まうのは愉しいことだ、と思う。

 前回水質悪化や病気のことを書いたけれど、その後も引き続き悪戦苦闘を続け、一時は週3回の水替えを敢行するにまで至ったが、かいあって、完全復調した。30cm金魚「東王」の症状はすべて治癒し、「海軍兵学校」のほうに疎開(こう書くと意味がヘンだが)していた、「生まれつき身体不自由な金魚たち」6匹とオトシンクルス2匹も本水槽に戻ってきた。加えて元気な金魚も2匹本水槽に移して、総勢11匹。「東王」も頗る元気で、ちょっかいを出すチビどもを尾鰭の一振りで追い払っている。まずはメデタシだ。やれやれ。

 水質悪化が改善できたのは、水温が28℃あたりまで下がってきたことが大きいが、ようやくパワ−フィルタ−+ミニゴン2と、新しい敷き砂にバクテリアが根づいてくれたのであろう。水槽のバランスを保つのは本当に難しい。
 子供たちが夏休みということもあり、数日家を空けなければならないことが続いた。まだ水質が安定し病気が治って間も無いので心配だったので、水草を多めに植えてから家を空けようと、ペットショップへ出向いた。相変わらず懐は淋しいので、ここは上手い買い物をしなければならない。なにせ、うちの「兵学校」(60cm水槽)の金魚ドモときたら、ポピュラーな金魚藻である「ガボンバ」などは植えて3日もすれば茎だけになるほど食べてしまう。やや堅い黒藻「アナカリス」でも一週間は持たない。流木に活着している「ミクロソリウム」まで引きちぎって、葉の芯だけにしてしまったとんでもない野郎共だ。留守中の餌代わりにするのなら安い「ガボンバ」「アナカリス」で十分だが、本水槽のほうは水質安定のために、食害なく繁茂してもらう必要がある。
 ペットショップで水草を物色しながら思案した。「ガボンバ」「アナカリス」はひと束300円。しかし、これでは進歩が無い。あっという間に喰い尽くされておしまいだ。 ふと「アヌビアス・ナナ」(1ポット750円!)のある水槽を見ると、ひとつだけとりわけ大きく育った株がある。ほかのポットの4倍くらいのカサがあるではないか!「アヌビアス・ナナ」は丈夫なうえに葉が堅くて、食害にあいにくい品種だが、高価なので今まで買おうと思ったことはなかった。が、これは…お買得カモ、とすかさず店員を呼び、「こ、れ、も750円なのか?」と念を入れたのち、その大株を購入した。

 帰宅して、病気や虫を落とすために水洗いしようとして、袋から出そうとすると、根の隙間あたりで暴れる小魚が見える。水草に隠れていたのを店員が気付かずにそのまま入れてしまったのだ。袋の中に水は無く、買い物に立ち寄ったりしたので購入後小一時間ほど経過している。慌てて水草ごと本水槽に浸けたら、いきなり飛び出して水槽奥の岩影にすばやく隠れてしまった。一瞬のことなので魚種は確認できなかったが、たぶんコリドラスの類いだろうとあたりを付けた。
 闖入者があった「アヌビアス・ナナ」をよく見てみると、なんと!確かにポットはひとつなのだが、根の間に別の株の根が挟まって、大きなひとつの株のようになっているではないか! 洗面台に水を張り、そこで株をバラしてみると、大・小・小と3つの株に分けることができた。
 思わず、ニンマリする私。
 本水槽に「アヌビアス・ナナ」を植え、兵学校には、水槽中から古い水草を掻き集めてお茶を濁そうと考えていた私には、福音であった。いままでの水草はそのままに、私は喜々として、大を本水槽に、小2株を兵学校に植えたのである。
 さて、闖入者の正体を確認しようと目を凝らしてみるのだが、濾過器と岩の隙間の奥まった部分に潜り込んでしまい出てこない。照明を消してしばらくすると、少し出てくるがシルエットしか解らない。体長は4cmほど。かなり臆病な魚のようだ。幅広で大きな背鰭のシルエットと茶色の体色から「コリドラス・アレクトゥス」かと思ったが、特長である大きなヒゲが確認できない。エサや金魚との混泳のこともあるので種類を知りたいのだが、姿を現わしてくれないのでどうしようもない。後日仕方なく、例のペットショップを恐る恐る訪れて、「アヌビアス・ナナ」の水槽で売られていた魚は何だったかを確認に出向いたのである。
 行ってみると、目当ての水槽は趣を全く変えていた。いろいろな種類の熱帯魚が仮に入れてある、という使われ方になっていた。その魚が売れきってしまったようである。しかし、私が買った時の値札の表示はそのまま残っていた。
 それは「アヌビアス・ナナ1pot ¥750」「タイガープレコ ¥1,300」の2つのみ。
 なんと闖入者は「コリドラス」ではなく「プレコ」だったのだ!
 かくして、我が家の金魚水槽に新しい仲間「タイガープレコ」が加わることとなったのである。もっとも私は招いた憶えはないのだけれど。

 しかしこの度の、300円のガボンバを買わずに750円もする「アヌビアス・ナナ」にした結果を決算すると…。
 水草750円×3+プレコ1300円=3550円!
 支払った代金が750円。 〆めて2800円の儲け!ひひひ。
 でも喜んでばかりもいられない。だって、ウチの水槽、発端は2歳だった息子が掬ってきた縁日の金魚3匹ですよ。いったいいままでにどれだけの出費を重ねてきたことやら。この2800円の儲けも、わずかな期間で、大きな利息払いに変貌するのに決まっているのだ。くわばらくわばら。 


←3株にわけた「アヌビアス・ナナ」のいちばんおおきな株。矢印のところに「タイガー・プレコ」が隠れている。右側にいるのは「オトシンクルス」。わたしのぼろデジカメは接触不良で10回に1度くらいしか写らない。そんでもってプレコは常に濾過器の裏側に隠れていてたまにしか姿を見せないので、チャンスが少なく、こんなピンボケ写真になってしまった。そのうちアップで撮れる日もくるだろう。それまで生きていられるのか?プレコ。

↓いやあ、平時に戻ってひと安心、の75cm本水槽。
2001/08/26 (Sun)

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