ヤドカリと磯の生き物の飼育

25話
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水中ポンプ交換 〜バトルの季節/ホンヤドのご難〜

↑「もう!引っ張りな、ちゅうの!ワカメが喰えんではないか」(05.06.18撮)


 関西では早々に梅雨入り宣言が出されたというに、以後雨はほとんど降らずに暑い日々が続いている。こんな時期から猛暑が続くとなるとお百姓さんはたいへんだと思うが、わが海ヤドタンクもたいへんなのである。前回記事にも書いたように、ゴカイどもの悪さにより、デスクボーイ付属水中モーターのプロペラに細か目のサンゴ砂が詰り、回転が頻繁にストップしてしまうのだが、水中モーターが通電中に停まってしまうと、かなりの発熱をするので、それを水冷している(たかが10数リットルの)海水が一気に水温を上げてしまうのだ。なので二日に一度はネットに詰ったゴカイの糞とサンゴ砂を取り除く作業を続けて来たが、これ、結構面倒臭い。海ヤド水槽は二週間に一度の海水交換時にプロホースで底砂の掃除をしているものの、底面濾過用フィルター(簀の子)は長年放ったらかしのままである。これが砂中で浮き上がってしまっていて、その内側に砂粒やゴカイが侵入し、いくら掃除をしてもポンプの詰りは解消されないのであった。

 現在使用中の水中モーターは、プロペラ部の形状のせいで、侵入した砂粒が排出されることなく回転を止めてしまう。それが解消されるような製品を物色中だったのだけれど、先日、金魚用の大型パワーフィルターを衝動買いしてしまった際、逆上していたわたしは、「どうせカード決済だ」と、海ヤド用の水中ポンプも購入してしまったのだった。このところ、海ヤドタンクは脱落住人も出さずに安定しているので、今のうちに一丁と、6月18日、底面フィルターのメンテを行なった。

 バケツに海水を入れ、エアレーションをして、ヤドカリやカニなどの住人を移しておいてから取り掛かったが、ゴカイが何匹いるのかさえ解らないので、底砂を取りだして洗うことは断念し、申し訳ないと思いつつそのままで強引に作業してしまった。底面フィルターの下に砂が入らないように砂を脇に寄せようとしたら、あらあら、なんと。この水槽設置時(2000年夏)に敷いた「バイオマット」が、そのまま廃墟のように入っているのであった。もちろん、「バイオ」部分はすべて融けきってしまい、ポリ製の枠だけになってしまっているのだが、この迷路のようなシートがゴカイのねぐらになっていたのである。引き揚げてみると、中で数匹のゴカイが「とぐろ」を巻いている。最大のものは50cmに近い長さである。小さいのは爪楊枝くらいのもいる。どうしようかと少々思案したが、ここは心を鬼にして、ゴカイどもを塒から追いだしシートを破棄することにした。普通に砂の中で生き抜きなさい。


↑メンテ後の海ヤド水槽全景。(05.06.18撮)
サンゴ砂は、底面フィルターのある左側が粗目。右側には細か目を敷いてある。


 デスクボーイの左半分にバイオフィルターブロックを2枚連結し、底面に密着させて固定したが、あの爪楊枝サイズのゴカイの侵入を防ぐすべはない。「まあ、なるようになるさ」と半ば諦め気分で、購入した水中ポンプ「ニッソーSQ-10」を直結した。本来はウレタンスポンジを敷いてから砂を入れなければならないのだが、ゴカイに「わや」にされそうなので、この際は粗目のサンゴ砂を直接敷く。この「SQ-10」は、プロペラの羽根が板状に成形されているうえ、砂などが侵入しても吐出口から排出されるような構造になっているので、砂詰りにはある程度強いだろうと読んでの狼藉である。そして、水槽右半分には、塒を奪われたゴカイのために細か目のサンゴ砂をたっぷり敷いた。

 底砂と一緒に引っかき回された大ゴカイは、しばらくの間ぐったりしているかに見えたが、きゃつらの生命力は大したもんである。水槽内が落ち着くと、またわが物顔でトンネルを掘りまくり、ヤド用の餌を砂中に引っ張り込んでいる。底面フィルター下部に侵入されないように、枠との間に嵌め込んで固定していた鉛の詰め物が、早々にはじき出されてしまった。全くすごい馬鹿力である。恐れ入谷の鬼子母神。

 今回のメンテでは、水槽ごと洗うことはできなかったのだが、高さの低いデスクボーイは「塩だれ」が甚だしく、海水使用するのには適さない。水槽背面などは、すぐ塩だらけになってしまうので、背面の掃除に取りかかったが、そこで「ヤバい」状態を発見してしまった。この水槽は底面がプラ製の枠になっていて、そこに4枚のガラスが嵌め込まれ接着されているのだが、垂れた海水がその底枠とガラスの隙間に染み込み、そこで結晶しどんどん大きい塩粒に成長して、底枠とガラスの隙間をじわじわと拡げているのであった。場所によっては1mm近い隙間ができてしまっているではないか。このまま放置すると、接着剤が圧力に耐えられなくなり、ある日突然、「パコン、ドバドバ…」と目も当てられない事態に進展する怖れがある。いままで高を括っていたのだが、海水の場合は底もガラスのオールガラス水槽じゃないとマズイのはこういう理由もあったのか。しかし、金魚のパワーフィルター購入直後でもう今年の予算はない。来年春までなんとか持ってくれ!



↑底砂を引っかき回されてぐったり気味の大ゴカイだったが、
水槽が落ち着くとすぐに元気を回復し、生ワカメを狙う。(05.06.18撮)

←ニッソーの水中ポンプ「SQ-10」

夏場の水温上昇の原因となる水中タイプは避けたかったのだけれど、いかんせん引っ掛け式などを付けるスペースがない。このポンプ、流量720リットル/時の60cm水槽用なのでデスクボーイにはやや水流が強すぎる。おまけに高さの都合で底面フィルターと直結を余儀なくされているので、底面フィルター内に入ったサンゴ砂が吸い上げられ、時々「BOMB!」と気泡とともに一気に吐き出される。波の寄せる磯みたいなんで、ま、いいかと。(05.06.18撮)
←バックスクリーンも交換

水槽付属のバックスクリーンは黒だったが、ガラス面との間に付着する塩の結晶が目立って、どうも美しくない。かといって市販のものは巻いて売られているので厚みがなく、水槽背面にテープで止めなければならない。しかも60cm水槽用であり、高い!。つうわけで、0.42mm透明カラー塩ビ板(ブルー)をカットして嵌めた。コシがあるので具合がいいし、明るいので撮影時の露出もいくぶんかは助かる。オカヤド舎も同じくグリーンのものに変えた。ローターSには瀘剤のバクターセルにアイオマックペレットを混ぜてある。気休め程度ではあるが。
←ヤドカリ系全住人、一堂に会す。

前回記事から、ヤド系住人に脱落者はでていない。イソヨコバサミ3匹(左)とホンヤドカリ1匹(右)の全4匹である。しかし……

【ピンチ! ご難続きのホンヤドカリ】

←チビホンヤドがいつのまにか脱落してしまい、1匹のみになってしまっていたホンヤドカリだが、肥大する馬鹿なイソヨコバサミを尻目に、沈着冷静に日々を過ごしていたのだが…。
誰に襲われたのかはさだかでないが、5月のある日、最も重要な武器である右の大鋏を自切してしまい、以来、イボニシやカニどもの波状攻撃を受ける羽目にになってしまった。弱点を突かれるとさすがに防戦一方になる。まだ左鋏と歩脚4本は健在だったので、セッセとワカメの摂取に励み、脱皮復活を目指していたのだが…(05.05.21撮)
←あらあら、再度襲われたのか、この非常時にさらに左の大鋏と歩脚1本を失ってしまった。全く「弱り目に祟り目」とはこのことである。両方の武器を失ってしまったからには、もはや逃げ回るしかない。最初に失った右の大鋏は、順調に「再生芽」ができてきているのに。辛いのう。(05.06.10撮)
←緊急脱皮により、右の大鋏は一応再生したが…。追加自切のタイミングが悪かったですな。残念ながら左鋏と歩脚1本は間に合わず。次の再生脱皮まで、辛くて長い逃亡の日々が続くのでありました。ピンチ!(05.06.18撮)

【春から夏はバトルの季節(1)】

この時期は、冬の間にはあまり見られなかった闘いのシーンがよく展開される。繁殖期であったり、水温が上昇して生体の行動が活発になるからだとは思うが…。まずはイボニシとレイシガイから。(05.06.10撮)

←ホンヤドカリが自切した歩脚(上の項参照)の臭いを嗅ぎつけ、早速ガラス伝いに、葬儀屋アンダーテイカーがやって来た。
←しかし葬儀屋が辿り着いたときには、なんと、快速ハンニバルが先着していたのであった。睨みあう間もなく、いきなりホンヤド歩脚の争奪バトルに突入した。
←死体処理専業のアンダーテイカーは生体捕食嗜好のハンニバルからは一歩引いたスタンスだと思っていたのだが…。いやはや、なんとも積極的である。ハンニバルが食べている歩脚を強引に奪い取りにかかる。

ハ:「な、何すんねん!、ワシが喰っとるんや、この脚は」
ア:「あんさんは、生体専門でっしゃろがな! 死体はアタシの領域でおます」
ハ:「今さっき、自切したてのホヤホヤや。せやさかい生体と言えるやないけ」
ア:「そんな屁理屈が通りまっかいな。こっち、よこしなはれ!」
←アンダーテイカー強し。ハンニバルが抱え込む歩脚をぐいぐい引っ張って、自分の脚で抱え込んでゆく。ピンク色がかっているのが口なのであろうか?

ハ:「そんなムキにならんでも、ええやないか。しかしお前弱そうに見えて、えらい力しとるなあ」
ア:「ウチの葬儀屋のノレンに賭けて、これだけは渡すわけにはいきまへんよって」
ハ:「お前なあ、あんまり調子に乗ってたら、ワシがお前を喰ってしもうてもええんやでエ」
ア:「脅してもあきまへんで。誰が何と言おうと、この脚はウチの商い品ですよってにな」

←とうとう葬儀屋は歩脚を奪い取り、自分の脚の中に包み込んで隠してしまった。

ハ:「あ、引っ張りな、ちゅうてんのに。あーあ、とうとう取られてしもうたわい」
ア:「こうやって、な、懐に包み込んでしもたら、もう大丈夫やろ。」
ハ:「どこに隠しやがったんや、あれへんがな、脚」
ア:「このオッサンが、どっか行きよってから、ゆっくり食べるとしまひょかいな」

←勝負あり。歩脚争奪戦は、アンダーテイカーに軍配。

ハ:「ほんまに、動かんようになったエサには、ごっつい意地張るやっちゃな。ま、ええか」
ア:「あんさんは、この脚の持ち主を探して食べに行くのが仕事でっしゃろ。多分弱ってまっせ。」
ハ:「しようがないのう…そういうことにするか。」
ア:「まいどおおきに。さっさと、いになはれ!」
←自分の脚の争奪戦を岩間から横目で見ていたホンヤドカリだが、その後、新たな災難が発生した。6月27日、左側に残っていた1本の歩脚まで自切してしまったのである。しかして現在は体の右側だけにしか脚がない。左側は完全無足になってしまった。さあ次の脱皮再生まで、彼は無事生き残ることができるのか?(この写真は05.06.18撮)


【春から夏はバトルの季節(2)】

←陽気のせいかケブカガニのチューバッカが、時たま岩穴から外出し、辺りを徘徊するようになった。となると、二代目忠治と路上で鉢合わせする機会が増える。たまたまわたしが見ていた折に、イキナリ二匹が取っ組み合いのケンカに及んだ。互いがハサミを取りあった、いわゆる「手四つ」の態勢のまま膠着状態に入ってしまったので、行事(わたし)は水入りを告げ、ピンセットで両者を分けてやりましたとさ。デジカメを持ちだすスキもなく、撮影はできなかったのだが…。まったく手のかかるやつらだ。(05.06.18撮)
←生国はライブロックの二代目忠治である。ケブカガニより一回り体が小さいが、なあにあちらは「着膨れ」しているだけだと、まったく臆さない。ハサミの刃渡りサイズは、どっこいどっこいなのである。しかしこの写真をみると、イソガニ(イワガニ科)というよりはオウギガニ科のカニのような気もするが…。ご存知の方はご教示ください。
←「いやさ、水温が上ってきたもんでさ、暑いんだよオイラ。なんせ着込んでいるもんでね。たまには、このブクブクのところで涼みたいのさ。なのに、忠治の野郎がガン付けしてくるんだよな。生意気に」

【春から夏はバトルの季節(3)】

←ヤドカリ連といえば、まあ年中じゃれあっているのだが、この日もイソヨコバサミ同士がかるーいスパーリングを行なっていた。(05.06.18撮)
「ガードポジションからマウントを取るのは、こうやるんだぜ」って、おまえはノゲイラか。

↑「イソヨコバサミの貝殻選びは節操がない」と以前書いたが、
このイソヨコバサミ(個体)は節操がない」と訂正すべきかもしれない。

どうやら無節操なのはこいつだけのようなのである。(05.06.18撮)
←頂いた仕出し弁当に入っていたバイ貝を、水槽に放り込んでみたら、あんのじょう早速入った無節操イソヨコバサミ。重いので、歩くのもヨタヨタなのだが、全くメゲることなく煮干しに噛り付いている。(05.05.17撮)
←バカの後ろ姿。

「あいつのせいで、イソヨコバサミが無節操だと誤解されるのは、えらい迷惑だな。オレなんかは、ちゃんと自分に合った大きさの貝を選んでいるのによ」
←ヤド六(陸ヤド)用の貝殻セットに入っていた貝のうち、ヤド六のお気に召さないのを入れてみたら、やはり早速入った無節操イソヨコ。前進するのもたいへんだ。しかし、大きい貝を好むだけあって、この個体は抜きんでて成長速度がはやい。(05.06.18撮)
←「岩登りがこんなにたいへんとは思わんかったなー」
←「オカヤドカリは宿選びにうるさいそうだが、ワシは何にでも入るぞ! 余った貝殻はどんどん持ってこい、つうの」

↓今回はオイラのウインクでお別れっす。(05.06.18撮)
2005/06/28 (Tue)

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