ヤドカリと磯の生き物の飼育

06話
トップページ ヤドログ 金魚 オカヤドカリ 海ヤド

ホンヤドカリの脱皮と脱糞について


 前回、オカヤドカリの脱皮殻の記事を書いたのだけれど、直後にホンヤドカリも脱皮した。
 もっとも海水のほうのヤドカリは三匹いるので、ほぼ毎月のようにどれかが脱皮している。
 オカヤドカリが慎重に砂の中で脱皮をおえ、身体がしっかりするまで外に出ずに、その殻を食べて栄養を繋ぐという用意周到さなのにくらべ、この海のヤドカリは、ウチのガキどものようにポイとそのへんに脱ぎっぱなしである。お行儀の悪いこと! 脱け殻も、自分で食べるという訳でもないらしく、腹を空かせた通りすがりがテキトーに摘んでゆくという感じだ。
 この差は、やはり陸上と水中の違いなのだろうか。脱皮直後の柔肌に陸の重力がキツイのだろうか。敵に遭遇する可能性は、どちらかといえば水中の方が高そうに思われる。それでもデロンと脱ぎ捨てて、ササっとすまし顔をしているところを見ると、こちらはスピードが「吉」としているに違いない。まあ、殻に引っ込んでも襲われるような敵に遭遇すれば、脱皮中であろうと平時であろうと結局食われてしまうのだから、海のヤドカリのほうが合理的なヤツとは言える。


←脱皮後、爽快そうにあたりを眺めるホンヤドカリ、と無造作に脱ぎ捨てられた脱け殻(右)

 このホンヤドカリの排便のしかたが面白い。
 立ち止まったホンヤドカリが、何気に貝殻を後ろにずり下げる(服にたとえると後襟を持ち上げるような)ような仕草をするときがある。これを「ははあ、クソだな」と観ていると、すばやく身を収縮させて、プシュッ!と勢いよく貝殻と体の隙間からウンチを射出するのだ。
 身体を貝殻から引き出して、注射器のシリンダのように殻内部に水を吸い込み、奥の方にしでかした大小便をその水に絡ませ、体を少し引っ込めるとクソ水が飛び出る。水鉄砲のしくみと同じだ。
 犬でも猫でも、その時は何ともいえない神妙な顔をしながらイタスものだが、有事のホンヤドカリにも、わずかながら普段とは違う緊張感が見受けられて面白い。



2001/05/04 (Fri)

05話へ 07話へ

(c)Copyright "cave" All right reserved. テキスト・掲載画像の無断転載を禁じます。