おかやどかりの飼育

33話
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夏限定仕様オカヤド舎 〜どうしてます?砂洗い。

↑なんだか風情が変わったネェ、ここん家。(05.07.02撮)


 4月の10日頃から5月の20日まで続いた長潜りは、やはり脱皮だったようだ。ほんのり薄紫に色づいて地表に姿を現わしたヤド六姐さん(女扱いつうのはどうも書きにくいなあ…)は、以来、あいかわらずの気壗な日々を過ごしている。昨年暮れに続いて春先にもという半年間に二度の脱皮など、この2、3年には無いことだったので、予定外の長潜りに、事故死の心配も少々はしたけれど、ま、杞憂であった。やれやれ。

 6月は金魚水槽や海ヤド水槽の濾過システム更新と中規模メンテを行ない、なにかとバタバタしていたのだが、実は陸ヤド舎のほうも、じんわりとリニューアル準備を進めていたのであった。とはいえ、新たな用品を購入する予算は金魚のパワーフィルターに喰われて尽きてしまったので、ヤド六用に買ってやれたのは、流木の「雲南古木」一本のみなのであった。すまぬヤド六。陸ヤド舎のデスクボーイ水槽に収めなければならないので、細長い形のものを物色して購入したのだが、幸いこれがヤド六のお気に入りの一品であった。流木に登っているときなどは、頻繁にハサミで千切って口に運んでいる。この時期は餌もたくさん食べているくせに、そのうえ良くもまあこんなに木なんぞを噛れるもんだと感心する。餌食いが悪いと心配なさっている飼い主の皆さん。案外、お宅の拒食ヤドは、深夜の流木食マニアである可能性もありますぞ。

 実は春先に友人から36cmガラス水槽を頂戴した。わが家の水槽コーナーにはもうこれを設置するスペースが無いのだけれど、メンテ時や採集時の仮設水槽用に手ごろなサイズなので、ありがたくいただいておいたのだ。さて、陸ヤド舎メンテだが、今回どうしても「やらにゃあならん」のが、サンゴ砂パウダーの洗浄である。昨年(04年)暮れに導入してみてから、はや半年経ち、その間脱皮潜りもあったのに、ピンセットでの糞取り以外な〜んも掃除をしなかったのであった。すまぬヤド六。サンゴ砂パウダーの洗浄をすると乾燥に時間を要するので、どうしてもフルメンテが必要だ。つうわけで、この36cm水槽を仮設ヤド舎に仕立て、ヤド六をこちらに数日仮住まいさせておいた。おかげで時間に追われることなくゆっくり構想を練ったのちに、ヤド舎のメンテを行なえたのである。


↑36cm仮設住宅に仮入居中のヤド六姐。(05.06.26撮)
好物のアナカリスをお食事中。

 デスクボーイ陸ヤド舎は、左側三分の一に中目サンゴ砂、あとはサンゴ砂パウダーという二色底砂だった。まず左側の中目を取りだして洗い、タッパーにストックしてあった中目と合わせて仮設ヤド舎に敷き、流木、餌入れ、水入れ等を移動。最後にヤド六を移した。今までにいろいろなサイズの砂を試してきたので、余っている砂ができてしまうのだが、貧乏性ゆえ捨てられない。種類が違うものを混ぜてしまうわけには行かないから、百均ショップで売っている「お米が2kg入るタッパー」をいくつも購入し、洗った後種類別に分けてストックしている。ま、こういうときには便利である。

 36cm水槽は、デスクボーイより高さがあり、空間が広々としているので、この仮設住まいの方が快適そうに見える。流木もガジュマル一輪挿しも、普通に「タテ置き」が可能だから、姐さんはいつも流木のテッペンまで登っていねむりをしている。しかし、仮設は仮設だ。なにせウチには常設する場所が無いのだから。まあ、ヤド六が快適ならなにより。こちらは安心してゆっくりデスクボーイの衣替えができるというわけだ。サンゴ砂パウダーを取りだし、久しぶりに水槽を丸洗いして、空のままいつもの場所に戻し、さて今回はどんなレイアウトにするかな、と考えた。

 考えながら、先に金魚と海ヤド水槽のメンテに取りかかりつつ、仮設ヤド舎のヤド六を観察していたが、どうやら姐さん、「ここみたいに流木に登れるレイアウトきぼーん」と訴えているご様子。んなこと言われたって、水槽自体の高さが17cmしかないので、脱皮に十分な量の砂を敷くとなると、どだい無理な注文なのである。しかし長年、天井の低い住まい暮らしを続けているストレスは重々承知している(わたしもそうだ)。なんとかご希望には応えてやりたいのう、と思いつつ、雲南古木だけが置かれた空のデスクボーイを眺めていてフトひらめいた。「よっしゃ!夏限定の砂無し水槽に仕立てたる」と。砂を敷かなければ、高さは確保できるのである。

 ヤド六お気に入りの新購入アイテム、「雲南古木」は恐竜(雷竜系)が首をもたげたような形をしているので、夏のヤド舎はこの形状を利用した、『バス、ロフト付、フローリングならぬサンゴ砂薄縁敷きワンルーム。2階角部屋、ペット可』という仰天プランである。物件詳細は写真を参照していただくことにするが、実のところこれは、ヤド六を思いやったというより、飼い主(わたし)のメンテサボリを思いやったプランと言ったほうが正解だ。なんたって砂のメンテが楽ちん。でもって一応天井は高いし、流木にも登れるうえ、なんと風呂付きである。どーだいヤド六!

↑夏仕様のデスクボーイ陸ヤド舎全景。(05.07.02撮)
左端にロフト寝床、右端にはバスルーム、リビングは粗目サンゴ砂薄縁フローリング(潜れないヨ)。

 ヤド六は単独飼育なので、ヤド同士の干渉に気遣う必要がないのだけれど、脱皮時や全メンテ時のことを考えると、仮設ヤド舎を常備しておくのはなにかと便利である。また今回試みたロフト寝床カプセルは、広い水槽ならいくつも設置が可能だし、マメに表面を慣らしておけば、ヤドが潜り込んだ形跡が分かるので、脱皮潜りの疑いのあるカプセルを仮設ヤド舎に移動してやれば、安全に脱皮を終了できる確率が増えるのではないか。また、脱皮中のヤドにメンテスケジュールを狂わされることも避けられるというもんだ。使い方に工夫をすれば複数飼育にこそ有用かもしれない。ウチの場合はロフトカプセルの砂のまるごと交換で、メンテをズボラしようというセコイ魂胆であるが。


 仮設ヤド舎全景

←頂き物のニッソー36cm水槽。ストックしてあった中目のサンゴ砂を敷いてある。本宅のデスクボーイに比べると空間ひろびろだ。流木だってタテに置けるし。(05.06.25撮)
←底のサイズは36×22cmなので面積はデスクボーイより狭いのだが、高さが26cmあるのがよろしい。奥行きがあるので用品も余裕を持って配置できる。しかし臆病なオカヤドにとっては、開けた地面の少ない細長形水槽の方が、隠れ場所が多く落ち着いて過ごせるという利点もある。
←どうやら、「あちきは、流木に登りたくて登りたくて仕方なかったのサ」らしい。仮設ヤド舎在宅中はほとんど流木のテッペンで過ごしていた。
←食事・ドリンク時以外は、ずっとこういう感じ。この態勢のまま眼柄をハサミの間に畳み込んで眠ってしまう。臆病なのなら、こんなに目立つ場所に身を晒したままにするのは避けそうなものだが、そのあたり、何を考えているのやら良くわからない。
←ウンチ掻きだし中。ヤド六くらいのサイズのヤドカリなら、この中目サンゴ砂が一番ラクチンだ。陸ヤドにとっては細目の方が快適そうだが、中目でもさほど苦労せずに潜ることができるし、保湿力もある。なにより飼い主にとって、ピンセットによる糞取りが容易なうえ砂洗いもしやすく、扱いやすい床材と言える。

↑こちらがお風呂かい?なんだか味気ないネェ(05.07.02撮)


 夏仕様ヤド舎リフォーム施工例

←背面のパネルヒータを撤去し、0.42mm透明カラー塩ビ板(グリーン)を嵌め込む。左の寝床用ロフト容器は100mmアクリルキューブ。右のバスタブには小物用デスコケース150×100×30mmを使用。三角フラスコはガジュマル一輪挿し容器。中央は溜り水対策でバイオフィルターを簀の子に使っている。
←ロフト寝床にはサンゴ砂細目を7分ほど入れてみた。ヤド六が穴掘りをすると溢れてしまうからだ。同様の理由でパウダーは避けた。バスタブ(水飲み場兼用)は粗目サンゴ砂を敷き、水道水(コントラコロライン+アクアセイフ添加)を入れた。流木の端は水分を吸い上げるように浸けてある。あとから備長炭(足場&浄化用)も入れた。
←中央部の砂は粗目サンゴ砂を1〜2cm厚に敷いてある。ホントは中目が良いのだが、仮設ヤド舎に使用中なので粗目にした。ヤド六は粗目ほど粒が大きくなると、あんまり掘ろうとはしないので、リビングが荒らされなくて済むとのヨミだ。ま、飼い主の意地悪とも言えるが…そのうち中目に戻してやるさ。
←ガジュマルの枝、餌入れ、塩土、イカ甲、温湿度計等を入れて完成。天井は夏用のアルミパンチ板。寝床に水を注して、ヤド六を迎えた。しばらくヤド六の動きを見てから、炭で階段を作ったりしてインテリアを整えた。今後不都合なことが分かれば、その都度、改良を加えてゆくつもり。わーい砂のメンテが楽ちんだ!

←「ったく、ウチの飼い主ほどの野暮天はないョ。なんだい、この砂。これじゃ恐山の賽の河原じゃないか。歩きにくいし穴掘ろうったって掘れやしない。早いトコ、具合のイイのに換えてくんナ!」
←この流木は「当たり」だった。何が美味いのかは知らないが、ヤド六は登るたびに摘み食いしている。腹をこわすなよ。
←端が水場に浸かっているので、流木は水分を吸い上げて湿ってくる。ここから蒸発するので、舎内の湿度を保つのには都合が良さそうだ。湿った流木は、ハサミを擦りあわせて水を飲みやすいようで、この場所でよく水を吸っている。
←流木のアク抜きをテキトーにしかやっていないので、水場に浸かった部分からアクが染み出し、水を茶色に染めてしまう。なので現在は中に備長炭を転がし、アイオマックペレットを浮かせてあるが、アクの色が水の交換の目安になって、ズボラな飼育者(わたし)には好都合ともいえる。
←ドボンと行水するかと思ったが、やはりヤド六は風呂嫌いであった。脚先を浸けてはみるが、怖じ気づいてしまう。しかし脚先が底に届きさえすれば安心して入ってゆくので、あとから備長炭で足場を作ってやった。

↑サイドから見たヤド舎全景。ニンジンで食事中。(05.07.02撮)

←備長炭の階段を足場にしてロフト寝床に登るヤド六。多少すべるがなんなく乗り越える。(05.07.02撮)
←全体の床材を、居心地の悪い粗目サンゴ砂にしてあるので、のんびりしたい時は、ちゃんとロフトまで戻ってくる。意地悪成功だ。写真の位置が、ヤド六の常駐場所となった。10cmキューブでは、やや狭すぎるように思ったが、水槽を広く使いたいのでまずは小さめから実験。もうひとまわり大きな百均タッパーも用意してあるが、今のところはこのアクリルキューブで十分のようだ。
←寝床には「沖縄の砂(細目サンゴ砂)」を使用。掘っても外に溢れないようにやや少なめに入れてある。今のところ、具合も量もドンピシャだった。
「サンゴ砂パウダー」は、水槽に直接入れずに、このように入れ子にしたほうがメンテが断然ラクなのだが、パウダーの場合は、もっと大きな容器にして余裕をもたさないと、溢れる公算が大だ(後述)。
←ね、姐さん。そんなにはしゃぐと危ないでっせ!
←アクリルは滑りまっさかい、気ィつけんと……
←やっぱり落ちた。(;´Д`)
←ロフト用ハシゴ兼用の流木。こちらからも寝床に登れる。なんとか中央のスペースをやりくりして、別にもう一本、登って和める流木をレイアウトしてやりたいところだ。

←ヤド六睡眠中。こんな狭いロフトで大丈夫かいなと思ったが、首尾は上々。毎日お昼になると、ちゃんとここに潜って寝ている。(05.07.03撮)

 サンゴ砂パウダー2

 サンゴ砂パウダーの砂洗いは、いかにも厄介そうなので二の足を踏み続けてきたのだけれど、やりましたよ、洗いました。そういえば、前々回の記事「サンゴ砂パウダー」に導入時の感想は書いたけれど、その後の使用感などはまだだったので、この際、砂洗い全般のことと合わせて書いておくことにする。

 ヤド六を飼い始めてから6年経つが、その間に試してみた飼育床は、素焼きの淡水魚用床材+カメの敷砂→サンゴ砂中目→沖縄の砂(サンゴ砂細目)→サンゴ砂パウダーと、二色にはしていたものの、どんどん細いほうへと進んで来たのであった。ヤド六に訊いたわけじゃないので、こちらの勝手な観察結果だけれど、どうやら細かなほうがお好みのように見えた。砂が適度な湿りを維持していれば、粒が細いほど思いのままに掘り進むことができ、また脱皮室も上手く作れるようだ。そのうえ、砂密度が高いと保湿力と保温力があるので、まあ言うことないといえばそうなんだが、いかんせん飼育者にとっては細くなればなるほどメンテが大変になるのであった。

 サンゴ砂パウダーは、細目サンゴ砂が「粒」であるのに対し、まさに「粉」に近い。湿りを帯びない状態では、白く美しくて水槽が綺麗に見えるのであるが、ひとたびヤドに適当な湿度を保とうとすると、泥化する。泥といっても、シャキシャキなのであってドロドロではない。例えて言えば、工事現場で土建屋の兄ちゃんが生コンに砂を入れてスコップで混ぜているときのような塩梅というか、アイスクリーム屋でかなり低温に保たれたアイスをコーンに掬い取る時のような感じというか。ともかく、ヤドにとっては掘削しやすいことはこの上ないのであるが、濡れたパウダー粒はガラス面に飛散して付着し見苦しく、また乾いた粒は刷毛で掃除すると跳ねてそこらじゅうに飛び散るので大変である。ピンセットでウンチのみを摘むのはウンチに粒が絡まってこれがまた難儀で、長くやっていると指が攣りそうになるぞ。

 砂の密度が高いので、ヤドが穴を掘った分の残土は、砂同士の隙間に吸収されずに、まんま横にこんもりと積み上げられてしまう。しかし保湿力は抜群だ。洗った後、容器を揺すってみると、表面にとめどなく水が湧き出てきて、地震の時の「地盤液状化現象」を理解するのに、こんなに適当な実験材はないんじゃないか、と思ったほどである。米とぎ方式(後述)で洗うと、いくら慎重を心掛けても、かなりの量が排水溝に去ってゆく。庭のホースで、というような裕福なご家庭はともかく、集合住宅の風呂や洗面台で、となると早晩管理会社からクレームが来るということになりかねない。また、水洗いのバケツのなかでパウダーとヤド糞を分別し、糞だけ流すのにはかなりのコツを要する。「掟破りの逆篩」の手を使えば上手く行くかもしれないが。

 というように、「ヤドお気に入り&見栄え綺麗」のパウダーは、飼育者にとっては結構難儀な床材なのであった。メンテのことを考えると、水槽に直接敷いてしまうのは厄介だ。なので、別容器でパウダー砂場を作り、水槽に入れ子にするのが無難だが、前に書いた通り、穴掘り後の残土が嵩張るので、少なめに入れないと容器から溢れ出してしまうので注意されたし。

↑パウダーを体に付けたまま動き回られると、掃除が大変である。(05.06.10撮)

 どうしてますか?砂洗い

 「金魚」のほうでは書いたかもしれないが、Kin-Yado guestbookに質問もあったことだし、この際わたしの「砂洗い」のやり方を纏めておくと……。陸ヤド用の砂洗いは、淡水魚や海水魚用の底砂のように水中に投入するわけではなく、そう慎重に洗う必要がないのでまあ気楽である。これは流木のアク抜きも同じだが、要は清潔を保てば良いのであるから、一度に徹底して綺麗にやろうとするよりは、テキトーに、でもって洗う回数を増やすほうが理にかなっている。

 使う道具は、水槽用のジャリスコップ(水切り穴付き)と大小2つのバケツだ。バケツは底のフラットなものが砂を残らず取りだしやすくて吉。まず小さいバケツ(ケロリン洗面器くらいのサイズで高さがあるもの)にスコップで「三合くらい」の量の砂をとり、水を入れつつ「米とぎ」の要領でぐるぐる掻き混ぜながら洗う。ヤド糞や残餌などが浮いてくるので、バケツを傾けて流しだす。これを繰り返し、水が澄んできたところで、スコップで水切りをしながら一旦大きいバケツに移す。一度に大量の砂を洗おうとすると重くて大変なうえに、細かなゴミなどを洗いきるのが困難なので、少量ずつ分けたほうが上手く行く。全部洗い終えたら、大きいバケツの上部から砂を取ってゆきヤド舎に移す。下部に残った濡れている砂はすぐ入れずにそのまま乾かしておく。これで砂を洗いながらも2度の水切りをすることになるので、多少は乾燥の時間を稼げる。と、大体こんなもんですか。普通でしたな。


←半年に二度も脱皮したのは、近年にはないことだった。50日間潜ったのち、復活直後のヤド六。(05.05.20撮)
←ヤド舎のニューアイテム、雲南古木を味見。美味いのならまた買ってやるよ。(05.06.10撮)

↓今回も画像が重たくなっちゃって、「どーもすみません」
2005/07/05 (Tue)

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