おかやどかりの飼育

23話
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盆栽ヤドカリ

↑おお、ガジュマルだ!ひさしぶりだなあ。


 暖かくなって、陽射しも強くなってくると、オカヤド舎をベランダに出して砂を天日にさらす。流木や餌入れ、水入れを取り出し、器を洗い、宿替え用の貝殻も洗う。流木は日光浴の間、塩水に浸けておく。そうしておいてある程度の時間表面の砂に日光を当てると、今度は掻き回して、陽の当たっていない砂を表面にさらす。まあ、のんびりしたものだが、その作業に邪魔なものがひとつある。ヤドカリ本体である。こいつを蓋をとった水槽に入れたままで作業を続けるには、脱走防止のために、ずっとその場で監視していなければならない。んなわけで、その間、ヤドカリには、小さなバケツに少し海水(ホンヤドカリ水槽から拝借してくる)を入れ、そちらで日光浴と海水浴をしていてもらうことにしている。

 夏場のオカヤドカリほど、気を使わないイキモノはないなあ、と思う。ときには元気がなくなったり、長い間じっと動かなくなることはあるが、たいていは、腹が減れば餌場にきて何か喰っているし、喉が渇けば水場で水を掬っている。暑けりゃ流木に登っているし、脱皮なら砂に潜ってしまう。元気なときはそこらじゅうを登ったりうろついたりして、勝手にモゾモゾとやっておるわけですな。こちらが注意すべきは、水分が渇ききってしまわないようにすることと、脱走くらいか。食べ物も、残飯でも野菜のはしくれでも入れておけば何でも食べるし、腐るのが心配なら、ハムスターの固形の餌やドッグフードを食べさせておけばよい。ガジュマルなどの植物をケース内に置いておけば、それを食べているから、長期の外出の時も餌の心配がいらない。

 ウチのヤド用ガジュマル(ニ代目)は、冬の間に丸坊主に食べられてしまい、枯れる寸前だったので、購入時の盆栽仕様の鉢に植え戻して養生中である。ようやく、新芽や葉が伸びだしてきたところだ。したがってヤド舎にはここしばらくガジュマルを入れていなかった。久しぶりだろうからと思い、砂の作業をする手を止めて、塩水浴中のヤドロクを摘みあげ、養生中の盆栽に乗せてみた。ヤド六は、「おお、懐かしやガジュマル」と盆栽の上をゾロゾロ探索し、敷いてあるミズゴケの味見をしたり、ガジュマルに登って新芽を摘み食いしたりしている。その光景を見ていて、ふと思った。夏場なら、盆栽でオカヤドカリを飼えるではないかと!

 やれ、水槽の、水入れの、餌の、蓋のと、生き物の飼育といえば、固定したイメージのケースが思い浮かび、それに捕らわれてしまうきらいがあるのだけれど、ガジュマルの盆栽で遊ぶヤド六を観るに、夏場の、この盆栽には彼を飼育する環境がすべて揃っているのであった。盆栽なので土がある。潜る必要のあるときは、潜れる。植木なので土壌の水分は十分だ。ミズゴケで表面を覆ってあるので、乾燥にも強い。ヤド六はこのコケも食べている。植わっているのがヤドカリの食草ならば、餌にもなり登ることもできる。喰いきれないほど大きなガジュマルでもOKである。要は脱走対策だけやってやれば、盆栽で夏のオカヤドカリは飼えるのだ。

 たとえば、透明塩ビのシートで円筒を作り、盆栽の鉢にピタリとあわせてはめて立てれば、盆栽型オカヤド舎の完成である。これ、虫カゴケースなんかより数段美しいし、インテリア性も出る。植木自体の付加価値も付くのでセット価格の単価をそこそこ上げられる。またペット売り場でも見栄えがするではないか。「かわいい〜!ほしい〜!」とヒット商品誕生の匂いが…実際ケッコウ売れるのではないかと思うのだけれど。「おんなのコに大人気!BON-YADO!」「夏の風物詩をご家庭に…『盆栽ヤドカリ』は偏屈の洞窟の意匠登録済みです」「只今ビジネス特許申請中」「(c)偏屈の洞窟」「盆栽ヤドカリTM」なんつって、独占し、商売にならんだろうか。儲けることはできんだろうか。あかんだろうか。あきませんか?ダメ?…

←『盆栽ヤドカリ』構想図。ウチのガジュマルは小さいうえに養生中なので貧相だが、もっとでかい盆栽で作れば見栄えも良い。夏場ならこれで十分飼える。写真のヤド六は敷きつめてあるミズゴケを食べているところ。

↓このアイデア、いかがなものか?
2003/05/27 (Tue)

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