おかやどかりの飼育

22話
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週刊日本の天然記念物

↑脱皮後にひさびさの日光浴。眩しい?


 前回、オカヤド舎の敷き砂を細粗二種類にしてみたことを報告したけれど、ヤド六はその後、あちらこちらをほじくり返したあげく、比較的潜りやすかった粗目のスペースに潜り込んで脱皮に突入した。前回の脱皮が正月だったので、ちょうどまる3カ月間隔である。頻繁だが、カルシウム、大丈夫かね? まあ脱皮とあれば仕方がない。その間に、根も葉も食い尽くされてしまった二代目ガジュマルのハイドロ鉢を取りだして、土の鉢に植え戻しベランダで養生させることにした。しかし、一匹のみの飼育なのにあのペースで食べられたのでは、到底ひと鉢だけでは持たない。この夏からは2,3鉢購入しておき、順次ローテーションさせて枯れてしまわないようにせねばなあ…。と言うわけで、現在ガジュマル鉢の出物待ちといったところ。

 潜ってから3週間ほど経った今月12日に、無事、のそりとお出ましになったのだが、そう言うわけでガジュマルは養生中。店頭を探したが、ガジュマル鉢はまだ見かけない。なのでオカヤド舎は殺風景のままだ。さて、出てきたことを幸い、懸案だった二色水槽のメンテと改良にとりかかった。ヤドにバケツで日光浴をしていただいている間に、深さが足りず潜りにくかった砂を増量した。まず、仕切りのパーテーションを1cm程嵩上げ。沖縄の細かな砂は、量が足りないのでスペースを小さくし、粗目の砂を篩にかけて新たに作って足した。まあ「沖縄の」ではないけれど、ここは勘弁していただこう。粗目の砂も増やし、砂の嵩は7cmくらい。このあたりがデスクボーイでは限界か。これ以上入れると空間が無くなってしまう。

 改良オカヤド舎での、ヤド六の動きを観察してみた。滞在時間でいうと、断然「細かな」砂のスペースにいることが多い。餌と水場は広い「粗目」スペースに置いているのにもかかわらず、フンは「細目」領域に固まっている。水槽全体を活発に動き、掘り返してはいるが、じっとしているときは「細目」部分にいる。どうやらウチのヤドは「細かな」砂のほうがお気に入りのようである。ただ、今のところ砂が崩れるせいで、細目の砂に完全に潜ることはできずにいるが。面白いのは、体が濡れていると砂粒が足先などに付着するが、これが気に入らないようで、日がな第4脚を使ってさかんに砂粒を落としている。鬱陶しいなら粗目のほうにいきゃあいいのに。んなわけで、砂をたっぷり湿らせないかぎり、脱皮は粗目のほうに潜ってすることになるような気配だ。

 ガジュマルが養生中なので、青物植物が無く殺風景である。ヤドも、いまいちモノ足りないご様子なので、金魚水槽のメンテの折りに剪定したガボンバを一本放りこんでやった。しかしウチのガボンバ、一週間で15cmも伸び剪定が大変なんだが、肥やし〈金魚のフン)が効き過ぎなのか? それともG馬場タイプのガボンバだったのか? それはさておき、ヤドは入れるなりそそくさと近寄り、ムシャムシャ喰いだした。まだ口にくわえているにもかかわらず、次の一片をハサミで切り取っている始末。旨いのかね? 下手をすりゃ本邦初の「水カビ病」オカヤドカリが誕生してしまうかもしれない。〈←金魚の項参照) このところ、今までにない旺盛な食欲に驚かされている。下に写真を掲載したが、写真の糞の量がなんと一日分である。ピンセットで取り除いても、次の日にはまた同量が砂上に出現するのだ。ちょっと食い過ぎなんでないの?


←煮干しを摘みながら水場に登り、改修後のオカヤド舎を見回す、の図。ガジュマルのハイドロが見当たらないが…いったいどこに、てなところか。それとも「ライオンキング」のつもりなのか?
←二種類の砂スペースを仕切る壁を、よっこらしょと乗り越えて隣へ移動する。砂は今回1〜2cm深くなった。
←毛細管現象を利用して流木にしみ込んでいる水分を吸い上げる。もちろん水場からもとるが、その場合は直接ハサミを水に浸け、何度も口に運ぶ。
←流木は塩もみしてあるので、乾燥して表面についた塩の結晶を摘んで食べる。
←自分の目の前にまとめて掻き出した一日分のウンチ。ここんとこ多いぞ。撮影しようとしたら逃げ出した。恥ずかしいのか?
←金魚水槽の余りガボンバを入れたら、ガツガツと大量に食べだした。金魚の病気が伝染らないかね? 藻の切れ端が貝殻にくっついても構わず夢中だ。


 ヤドロクが脱皮を終えて姿を現す2日前の4月10日に、小学館から順次発売されているグラフ雑誌シリーズ「週刊日本の天然記念物 動物編・第42号/オカヤドカリ」が発売されたので、早速購入した。このシリーズ、毎号付録に海洋堂製の立体動物模型が付いているので発売を愉しみにしていたのだ。私、こんなコーナーを作っていながら、あまり文献による勉強をしていない。ま、不精なのと本を買う金が無いからなのだけれど、この際は付録に釣られて買ってしまったので、読んでみて気づいたことをいくつか書いてみようと思う。

 まずは「天然記念物」の指定と捕獲販売についてだが、本件は当欄でいままでに何度かぼやいてきたので、今回は略させていただく。グラフ写真を見ると、さすがに南の現場生態写真は美しいし野趣に富んでいる。愉しませていただいたが、ヤドの写真をマクロで撮るのはなかなか難しいので、刺激にもなった。水槽内の少ない光量ではなかなか絞り込めず、ピンを深くしたうえで、さかんに動く触角を静止させるのは至難の業なのである。これからは意識して撮影することにしよう。

 写真とキャプションを見て思ったことのひとつに、種の特定がある。ウチのヤド六は、たぶん「ムラサキオカヤドカリ」なのであろうと思っているが、実際のところ正しくは良く解らない。色白だし。また掲載写真に、私の種選定の知識と合致しない種名のキャプション表記も見受けられた。ここは折角の特集なのだから、6種の特徴について図や図鑑的写真などを使って具体的に説明してほしかったなあ。不謹慎にヤシガニ料理のレシピなんかやってるページ数があるならね。

 フンに関するコラムがあり、そこに「どのようにして貝殻の外にフンを出しているのかは、まだはっきりとわかっていない」とあるが、ウチのやつは第4、5脚で、毎日せっせと掻き出していますがね…けっこう情けない姿勢で。また「貝殻の中に水を溜め込んでおき、湿らせた腹部の皮膚から酸素を取り入れる」とある。これは知らなかった。頻繁に宿替えするときなどに長い時間をかけて見ていたことがあるが、そういう行為には気づかなかった。これは今後、注意して観察してみよう。

 オカヤドカリは適当な貝殻がない場合などは人工物にも入るようなので、ここはひとつ、内部構造まで正確に再現した巻貝をアクリルなどの透明樹脂で作って宿替えさせれば、腹肢の使い方や中の水の状態、またフンの処理方法など一目で観察・確認できると思うのだが、いままで学者のかたがたはそういう実験をしていないのだろうか? わたしが器用なら、やってみたいところではあるが。


↑う〜ん、この眼柄と触角をリアルに自作するのはかなり難しいな。

 最後に、付録の「フィギュア」について。「チョコエッグ」などで話題になり、大儲け中のKAIYODOの原型なので嬉しい。それにオカヤドだと、ニホンカモシカのようにミニチュアではなく、ほぼ「原寸大模型」になる。ウチのヤドロクは一匹のみの単独飼育のうえ、先日、最愛の「ポストちゃん」を亡くして気落ち中の身だ。大きさも同等なので、これ、ダッチ・オカヤドに最適と期待していたのである。模型を組み上げてみると、第二触角が略されているので、いまいち気分がでない。また型抜きの制約だろうが、オカヤドの愛嬌のポイントである逆四角錐の眼柄が再現できておらず、クモみたいな顔になってしまっている。ここは、もう1パーツ奮発して欲しかった。貝殻もコシダカサザエあたりだと感じ良かったのだが…。う〜ん「生物模型」というよりはやはり「オマケ」レベルである。仕方ないか。不器用なりに自作改造も考えていたが、元の精度がちょっと中途半端ですなあ。

 ヤドロクが盛んにうろついている頃合いに、「フィギュア」を水槽内に置いてみたけれど、完全に無視であった。ただの障害物として乗り越えていってしまうのみ。ま、当然か。「ポストちゃん」のときは貝殻だけでも、サササッと近寄り反応したのだけれど。ニオイでも付けてやればまた違うのかなあ。しかしこの「フィギュア」、よく見てみるとどうやら雄仕様のようである。そのせいなのか?


←KAIYODOヤドとご対面。なのだが、あれあれ完全無視である。踏んづけてさっさと通過してしまった。
←「宿六」と「付録フィギュア」は、ほぼ同じ大きさである。さて出来栄えはいかがであろうか。比較撮影用にとアフリカマイマイの貝殻を入れてみたのだが、気に入らないようで宿替えしなかった。
←かまってやらなくて悪いが、あばよ。俺はあっちにいくぜ。

↓「沖縄の砂」スペースで、隣の水槽を泳ぐ金魚を鑑賞中のヤド六。右はダッチ・ヤド。
2003/04/20 (Sun)

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