金魚と淡水魚の飼育
52話
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菌を継ぐもの
 〜拾丸のお引っ越しと清正デビュー


↑父ちゃん母ちゃんのいた広い水槽に引っ越して来たけんど、もろもろの病はぜ〜んぜん治らず。
叔父さん(オヤジJR)の癖をまんま受け継ぎ、思いっ切りガラスにぶち当たるのが日課で、鼻先はいつもこのありさま。
当家の血統遺伝子はアタシ(拾丸)がキッチリ保持しておりまする。
(07.10.05撮)


 2007年は当家金魚水槽にとって激動の年となった。まずは2月12日にオヤジJRが投薬ショック死。続いて3月19日、ジャンボが松かさ病で衰弱死。そして前年罹ったデバラ病(腎腫大症?)の腹部膨満が止まらない段平に、7月21日、無謀なオペを慣行したがやっぱりお陀仏。ここに初代ビッグ・ママ東王の息子娘たち、当家本水槽の二代目残党たちは全没という事態にいたった。本来であれば、この菌魚三兄弟の死を持って我が東王家系菌魚の血統は途絶え、空き家となった75cm本水槽は、かねてより管理人興味津々の「日本淡水魚」水槽にリニューアルされるべきところだったのだが。しかし当欄ご贔屓の皆様方にはご存知の通り、本水槽脇には旧「海軍兵学校」60cm水槽、現「西の丸御殿」(←この名称、今思いついたトコw)があり、そこには望まれずして生を受けた一粒種の馬鹿殿「拾丸(おひろい)」がカウチでメタボっているのであった。

 血は争えないとはよくぞ言ったもんで、このおひろいもまた、タチの悪い「菌魚」に育ってしまった。父親は段平、母親はジャンボと推定されるのだが、祖母東王の菌魚の血が父母の近親相姦により濃縮され、その素質がますます増幅されてきたように見える。おまけに卵の時代からずっと一匹暮らしの喰い放題わがまま放題で育って来たので、金魚世間のルールもな〜んも知らない。叔父、母と死んだところで広くなった本水槽に移し、父・段平に躾を施させようと目論んだものの、その父も力尽きてしまい機会は得られなかった。甲斐性のないわたしは、家族に腹一杯喰わせてやることが叶わないのでせめて金魚にはと、「くれ」というだけ餌を与えるのをモットーとして来た。これが健康に良いわけがない。おひろいはライバル不在のまま、餌をねだり貪り続けてむくむく急成長したが、当然排出する糞尿も相当のものになり、西の丸の水質の悪化は顕著になっていたのだった。

 この60cm水槽はメダカ水槽として再起動したものであったので、兵学校時代のフルーバル外部フィルターはとり外したままで、濾過装置は投げ込みのミニゴン2と水中ポンプによる循環式底面濾過のみの貧弱なものだ。とても20cmを超える魚体を養える環境ではなかった。本水槽の菌魚どもを治療しながら、こちらの拾丸にも投薬を続けて来たが、一旦は効果が出てもすぐに再発してしまう。おまけにコイツ、わが歴代の金魚のなかで一二を争う馬鹿である。少しでも驚くと、闇雲に泳ぎ回り、水槽ガラスに鼻先を思い切りぶつける。それも何回もだ。家の外から聞こえてくるような小さな音などにも敏感に反応して発作のように奔る。ガラスに鼻が当たる鈍いドゴン・ゴン、という音が部屋に響く。こりゃ60cmの西の丸暮らしは無理だ。残念だが日本淡水魚は諦めて、馬鹿殿を本丸にお迎えせねばなるまいのう、ということになり申した。



〜 拾丸のお引っ越し 〜
↑向かいの本水槽で、父親〈段平)がダルマのようになって泳いでいるのを
冷ややかに横目で見ている、60cm水槽のおひろいであった。
(07.07.11撮)

前回は段平の記事だけで目一杯になり、拾丸の分はすっ飛ばされてしまった。なので前々回「川の流れのように」の〜60cm水槽・拾丸その後〜の記事の続きからということになる。最後の報告が4月5日分だったので、ずいぶん遡ることになってしまった。タラコ唇や水生菌やら赤斑やらの波状発生に対応するため、種類を変えて薬浴を続けるも症状はいたりきたり。本水槽ともども、三日置き換水で対応してきたのだが…。
(07.05.28撮)
←段平オペ三日前の拾丸。本水槽のケアの合間を見て、こちら西の丸(60cm水槽)では底砂を何段階かに分けて取りだし廃棄処分に。いくら投薬で治癒しても三日で再発してしまうので、水槽をシンプルにして殺菌効率を少しでも良くしたいという試みだ。しかしおっさん苦労の甲斐もなく、ご本人はあいかわらずのこんな面である。タラコ唇は感染症というよりほとんど外傷だ。毎日ガラスに強烈にぶつけ続けているので、もはや酷くこそなれ治る隙てなもんがないわ。
(07.07.18撮)
←そして段平が身罷り、75cm本水槽は空家になった。三匹続けての永の看病の疲れから、おっさんはしばらくの期間、放心状態に。日淡水槽は魅力的だが、こいつを徹底的に殺菌・洗浄のうえ再始動させるのかと思うと…げっそりこん。イソジンとエルバージュを放り込んだまま、半月ほど放ったらかしの日々であった。

その間も60cm槽の一粒種、おひろいの病気は再発を繰り返しつつ、秀頼化して25cm近くに成長。暴れる。ムケムケになったタラコ唇を狭い水槽のガラスにバンバンぶつけまくって悪化させる一方なので、ここはとりあえずおひろい水槽(暫定)でいっとくか、つう気になってしまった。
(07.07.24撮)
←とはいえ、いつかはやらにゃあならん作業です。ということで怠け心に鞭打っておっさん75cm本丸の清掃・改修工事に着手。お盆期間中に砂出し・洗浄等を行ない、再セッティングした。

大汗かきかきの作業中、ふとこちら、西の丸のおひろいを見ると…「ぼけ〜。」っと。「お前なあ。でぼちんにデンボ作って、のんびりしてんのやないで!」当然ながら、人の苦労なんか知ったこっちゃないのである。「死んだ魚のような目」という譬え方があるけど、この無気力感はそれとはちょっと違うな。とぼけたやっちゃで。
(07.08.16撮)
←ジャジャーン、75cm本丸水槽再建完成!暑いのにおっさん頑張った。当家代々歴々の菌魚サマたちがお残しになっているであろう、強面で厄介な菌関係の皆様を全滅させようなどという調子の良いことは期待しておりませぬ。つうか、もうあたしにはテッテー的に無菌化する体力気力はありません。底砂と底面フィルターを完全撤去して、イソジンでざっと消毒、フキフキしただけでございますよ。(どうせ棲むのが拾丸だしね)
(07.08.23撮)
←消毒後、何度か注排水を繰り返したのち、数日の水作り期間を置いて準備完了。おひろいの一匹住まいなので、底面フィルターと底砂は省略。病身のうちは、ちょいちょい薬浴などを施すから底砂は邪魔なのだ。殺風景ではあるが、健康な金魚に戻ったら改めてまたレイアウトを考えよう。でもバクテリア育成や水草用に砂もいくらかは必要だろう。量は少ないけれど味噌保存用100均タッパーに大磯を入れた水草コーナーを設置した。さあ、あとは主さまの御成を待つばかりである。
(07.08.23撮)

↑準備が整ったところで、いよいよ西の丸から本丸御殿への御成である。
孵化以来住み慣れた60cm槽とも今日でお別れ。
(07.08.24撮)

―新居に到着―

←まだ若いとは言うもののすでに25cm超の体に成長している馬鹿殿を掬える手網はウチにはない。またこいつは闇雲に暴れるタイプだから、網での移送はやめておいた方が無難だろうと、12リットル入りバケツを直接水槽にぶちこんで、そ〜ろりと掬い、めでたく本丸にご到着。何とかハネられずにすみましたわ。
(07.08.24撮・以下同日)
←夏の引っ越しは水温合わせを気遣う必要がないので楽ちんだ。さあ、おひろい。いつまでもバケツの中でビビッてないで、早く出てこい。
←「どれどれ、じゃ、ま、出てみっか」訝しげながら、すい〜っと本丸御殿初登城を果たした拾丸君。「ど〜だい、え、広いだろう。悦べ!」と自慢げに話しかけるおっさんを上目遣いに眺めるの図。
←「父ちゃん母ちゃんが泳いでいるのをガラス越しに見ると、たいそう広そうに見えたが、いざ来てみるとそんなでもねえなあ。隣りの芝生は…なんとやらか」

おひろい、広いところは初めてなので、緊張してかカタまってしまって動かない。しかしこうして入れて比べてみるとやっぱりジャンボや段平はデカかったなあ。

↑全メンテ後の水作り期間は数日だけなので、
当然まだ苔類も出ずに底もピッカピカのツルツルである。
しかあし。まあ金魚の普通の行為なんだけど、
味噌タッパに顔を突っ込んで大磯をつつくもんで、底のガラスに
大磯粒が散乱して見苦しいばかりか、大糞吸取り用にパッカリ開けたままの
外部フィルターのストレーナー部に砂粒が吸引されてしまってヤバい。
(07.08.24撮)

―治らぬ病気―

←本水槽一匹暮らしの拾丸。水質良好というのに、60cm水槽のころから引摺っている病気が一向に治らん。剥け剥けタラコ唇はしゃあないとしても、鱗の真ん中あたりに小さな穴があいて、そこから白い綿のようなもの(多分菌なんだろうけど)が伸びてくる。取れたと思ったらまた別の場所にできる、の繰り返し。おめめもずっと綿かぶり気味だし。クスリは一時的には効くのだが3日でアジャパー、やっぱり「菌魚」のDNAは強烈やなあ。さすがジャンボの子いや東王の孫というべきか。
(07.08.27撮・以下同日)
←広くて濾過設備が整っている環境に来たんだから、さっさと病気を治して元気になってもらわにゃ困る。ということでローターSの新品を張り込んでやった。瀘剤にはバクターセルとアイオマックペレット。おひろいはこの簡易濾過器を見るのは初めてなので、なんだか興味津々のよう。鼻を近づけてずっと見ていた。
←ぶち撒けられた大磯が次々とストレーナーに吸い込まれていくのを苛立ちつつ眺めていた飼い主はあれこれ散乱防止策を考えていた。よく旅館なんかに置いてあるデカイ陶製の蓋付き灰皿なんかのほうが重いし、タバコを置く部分がヒサシになって砂がこぼれにくいかも…などと考えていたが、アホです。100均タッパの蓋中央にヒサシになるように丸い穴をあけて、嵌めりゃええんや!で、やってみた。
「あ〜あ、とうとう突つけないようにしやがった。しかし安物つうのは、やっぱり風情がねえなあ」「放っとけ!」


↑テトラEX120とエーハイムエコ2233のパワーフィルター2発体勢+殺菌用ローターSは前水槽と同じだが、
今回は底面濾過はハズして大磯砂もヤメ。ガラス底モロ出し。申し訳程度に味噌保存用100均タッパーで水草スペースを作成。
一匹だけなので投込式のミニゴン2もお役御免に。がらんとして殺風景ではあるが、薬浴やメンテナンスのフリー度は向上した。
(07.08.27撮)

←折角、広くて濾過装置の整った水槽に引っ越したというに、菌魚の遺伝子は全く堪えていないようで、あいかわらずカラダの方々に吹き出物がランダムに出現し水生菌が付く。目玉も常に綿を被ったようになっていて、そのせいか、拾丸は餌への反応も鈍い(というか食べ方が下手)。

最近、ショップで魚病薬のディスカウントがされなくなってしまった(お上のお達しか?)。今まで半額くらいで入手できた観パラD(旧パラザンD)が、定価の100ml六千円超である。もう金輪際買えん。貧乏な当水槽では、やむなく今後、治療は塩とココアとイソジンと温度調整と換水のみで対応、市販のクスリは購入しないことに決めたのに。しかし先が思いやられるなあ。
(07.09.04撮)
←おひろいは、臆病なのか視力が悪いのか、まあ両方なんだと思うけれど、少しでも驚くと、急に闇雲に暴れ泳いでそこら中に思いきりカラダをぶつけてしまう。広い本水槽にくれば多少はマシになるかと期待していたが、全然。前と同じだ。なので鼻先の潰れが全然治らないばかりか、水槽を覗くとウロコがはらりと落ちていることが多い。底砂を無くしてしまったので、かえってよく目立ってしまう。そんなに尖った形状の用品は入れていないのだが…
(07.09.27撮)

↑病気は治らぬが、もうクスリは高くて買えぬし。
何とか安上がりな改善策はないものか、というわけで…。
(07.09.27撮)

―100均タッパー水草ポッド改造工作―

←本水槽を再構築するに当たって、底面フィルターを廃止したかわりに、味噌用タッパーで水草ポッドを作ったけれど、円筒形なので水槽内での納まりが良くない。また水槽に砂粒が飛散しないようにフタを付けたので、底砂内の水が動かず、バクテリアの働きもあまり期待できない。あいかわらずの金欠だけど、なんとかならんもんかと考えていた、100円ショップで「スノコ付きタッパー」を発見。こいつを改造してミニ底面濾過付き新水草ポッドを工作してみたのでご紹介。
(07.10.05撮・以下同日)
←100円タッパーをよく洗って、工作開始。しかしこういう樹脂製品の最初のヌメリって相当のものだが、いったい何が付いているのだろうね?生体に良いとは思えないので良く落としとくに越したことはなかろう。工作に使う道具はカッターナイフのみ。曲線を切りたいのでデザインカッターもあると便利だ。

60cm水槽のとき底面濾過に使っていた、パイプと水中ポンプ(GEX/MICRO-150)を流用する。まずタッパーの蓋にパイプ口径の穴を開けてプスリと通す。
←次に慎重に位置合わせをしながら中スノコの底にも丸穴を開けて、パイプを通す。このスノコ付き100円タッパー、スノコ部に脚が付いているところがミソなんである。この脚部分の空間を底面濾過に利用するのだ。開ける二つの穴の大きさをピッチリしないとパイプが安定しないので注意。このスノコの目は大磯砂にはちょうど良い大きさだ。砂を洗うついでにスノコに大磯を入れて篩にかけ、あらかじめ細かい粒は除いておく。
←スノコ部分にお古の大磯を入れる(後日、少々張り込んで麦飯石の砕石を混ぜた)。タッパー蓋部分に窓を切って、水草を植えるスペースを作る。これは砂粒を外に散乱させないためのヒサシだが、この蓋でパイプも固定しているので、パイプを支える強度を損なわないような位置と大きさにすることが必要。
←蓋をして「底面フィルター付き100均タッパー水草ポッド」の本体が完成。お古の水中ポンプ、GEXのMICRO-150を一回り口径の大きなパイプに差し込んで繋ぐ。これでメンテ楽ちん。また上下左右にスライドさせて水流方向の微調整も可能。
←最後に水草を植えて、水槽に設置。プラストンによるエアリフト式にしても良かったのだけれど、水中ポンプ仕様にしたのは、底面ガラスに落ちた糞や残餌を右端奥のストレーナーに運ぶように調整可能な副水流を作るためだ。吐水の角度と高さを上手く調節すると、ゴミが気持ち良く吸い込み口方向に転がって行くようになった。

↑おひろい、出来栄えはどーだい!
総工費100円ポッキリ!の底面フィルターである。
(07.10.05撮)


↑「貧乏人がイキゴンで作ったのは分かるけんど、やっぱ安もんは何をしてもそれなりの風情でんな・・・」
…つ、つめたい反応。
(07.10.14撮)


 75cm水槽の「日本淡水魚水槽化」は断念したけれど、余裕のある環境に棲むことで、おひろいの病が完治したあかつきには、ギンブナでも混泳させてやろうと密かに目論んでいたのだが、いかんせん病気は全然治らない。こりゃもう当家菌魚DNAに完敗。今の治療用の高水温を下げられないんじゃ日淡はムリです。しかし本水槽にいつまでも拾丸一匹のみというのは淋しいし、こいつは餌取りが不器用で、無駄餌が残り水を汚すことになるので、何か掃除屋生体でも入れようかなと思っていた。

 そんなこともあって10月20日、ショップに水草を買いに行った時、元気に泳ぐエサ金(子赤)の群れが目に付き、あまり深く考えずに一匹だけ連れ帰ってきてしまった。一匹だけくれと言ったら20円と割高だったが、ま、袋やら酸素やらでコストを喰うから仕方ないか。体長はおよそ4cm弱。ウチでの孵化経験から推測すると、初夏に孵化した4か月くらいの個体か。オスメスはまだわからないが、名前は一応「清正」ということにした。これで当家の金魚に、久々に東王母系以外の血が流入した。さて、ニューフェイス「清正」とバカ殿「拾丸」同居のエピソードは次回よりスタート。



↓本水槽に馬鹿金「拾丸」一匹だけというのはいかにも淋しい。
ある日ショップで見たエサ金を一匹だけ連れ帰ってきてしまった。
「清正」のデビューである。
(07.10.20撮)
2008/03/13 (Thu)

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