金魚と淡水魚の飼育
16話
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夏は、たいへん![金魚編]


 同好の皆様方なら、私以上にご苦労の積み重ねをくり返してこられたことと存じますが、やはり水槽趣味の夏は、「たいへん!」なのであります。もっとも、わたしは、もとよりこの世界を趣味にしてきたわけではなく、なりゆきでこうなってしまった素人ですから、無知ゆえの「たいへん」なのかもしれませんが。
 なにせ、気温とともに水温が上がります。水槽はもはやヌルメの風呂状態になってしまいます。冬でしたら安売りのヒーターでも放り込んでおけば、たやすく保温できるのですが、水槽用クーラーなどというものはブリーダーの方々ならともかく、金魚掬いの金魚には、滅相もありません。それで右往左往するわけですが…。その右往左往のおはなしを読んでやってくださいませ。

 先週は、深夜に二度も水替えをする羽目になってしまった。私は通常0時に帰宅し、風呂に入り夕飯をとって、軽く一杯たしなんで2時頃眠る、という生活なのだが、そこに2時間あまりの水替え作業が加わるとこれはコタエます。それも、大方は30℃を超える水温のせいだと思われるのですが…。今回は「金魚」のはなしから。

 「エロモナス菌」疑惑。

 本水槽(75cm)の30cm金魚「東王」は7月に入ってから病を患い続けている。他欄にも書いたけれど、こいつには随分苦労させ続けられているのだ。去年までは白カビ病のみだったのだが、今年は顔周りや鰓のつけねに赤い斑点が多数でき、鱗はところどころ剥がれて水生菌が生え、口部はボロボロ、胸びれを時折痙攣させている。水槽の底に腹をつけてじっとしていると思えば、時折狂ったように暴れる。水温が高いのもひとつの原因ではあろう。
 インターネットや本で調べてみると、どうやら「赤斑病」「松かさ病」あたりの可能性が高い。この「エロモナス菌」による細菌性感染症は非常に治癒しにくい病気であるとの記述が多い。とういわけで、「放っといたら治る」とも言っていられないようなので、まずは同居の生物たちを、もう一つの金魚水槽(60cm)、かってな通称「海軍兵学校」のほうへすべて移した。おかげで「兵学校」のほうは、金魚20匹にオトシンクルス5匹の大所帯となってしまった。それに加えて流木や水草も移したものだから、もはや「営倉」だ。水質の悪化は避けられないので、本水槽付きのフルーバル103パワーフィルターをこちらに移した。こちらの金魚は暴れ者ぞろいで、跳ね回るので、ガラス蓋をはずして水温を下げることができない。そうすればたちどころに周囲は水浸しになる。そんな劣悪な環境にもかかわらず、何故かみんなスコブル元気なのである。???。水温は32℃を下ることはないというのに。まあ、世話人にとってはありがたいことではある。
 そうして、大金魚一匹だけとなった本水槽に以前買っておいた「グリーンFゴールド」を投薬した。これは細菌性感染症に効果があるとされる、黄色の粉末である。150リットルの水をやや少なめにしておき、2包とも投入した。この手の粉末、顆粒状の薬剤は直接水槽に入れると厄介なことになる。ダマになったりしてなかなか溶解しなかったりするのだ。最初の頃はそれで結構苦労したので、今ではバケツで溶き終えてから、水槽にぶち込むことにしている。水槽の水は黄色に染まった。効果はしばらく様子をみるしかない。
 鱗の傷口に生えていた水生菌を、手でブチリと千切り、我が家秘伝の軟膏を塗り付けてみた。これが、なかなか上手く付かない。さんざん試みて、やっと患部に塗り付けたと思ったら、金魚が身体を一気にひと捻りしたら剥がれてしまった。まあ、すこしは付いているだろう。


←口の周りがボロボロなのは以前からだが、自分の子供たちにめくれた皮に食いつかれてますます酷くなっている。鰓蓋の付け根と下の方に赤い斑点が多数発生した。体全体に広がりつつある。
←ウロコの傷がめくれあがり、そこに水生菌が発生。悲惨な状態。指先でブチリと引きちぎり、人間用軟膏を擦り付けてみたが…

 敷き砂(素焼きの多孔質のもの)は片側に寄せて積み、底面フィルターは外した。さて、当の金魚、みかけは満身創痍というものの、食欲は旺盛で鯉の餌を山ほど喰らっている。
 3日ほどたつと、鱗の傷はきれいに治癒した。赤斑のほうは治らない。ところが水質の悪化が著しい。食べ残しの餌や糞に水生菌が生えまくり、直径2〜3cmの綿玉のようになっている。それが無数にある。2台あったパワーフィルターを1台にしたのが原因なのか?薬剤で濾過バクテリアが死滅したせいか?ともかく水替え、である。朝方まで大汗をかきながら「黄色い」水をバケツで運ぶ。150リットルの水槽の水を半分替えるとして、75リットルでしょ?これはバケツ8杯分くらいですから、捨てるのと足すので16回バケツリレーせねばなりません。夜中の2時にね。これ、たいへん、です。
 それから2日もすると、またもや一面水生菌だらけである。水替えで薬剤の黄色もかなり薄くなってきているが、水質はかなり悪そうだ。今度はパワーフィルターのほうを掃除して、吸い込み能力を高めることでお茶を濁した。なぜなら、ホンヤドカリの海水水槽のほうに異変が起き、死ぬものが相次ぎ、そちらのほうの水替えに時間を割かねばならなくなったからだ。夜中の3時に人工海水を作るのも、やっぱりタイヘン。どちらにしても、週末には根本的にメンテをせねばならないことは覚悟した。

 さてその週末がやってきた。どうしようか?と、作戦をたてる。「エロモナス菌」のほうの特効薬とされる黄色の「グリーンFゴールド」はもう手持ちが無い。この薬、買えば1000円はする。しかし、また水生菌がはびこり、水替えしたのでは投薬の効果が無くなってしまう。これではムダだ。
 なんでもこの「エロモナス菌」、女性の「膣炎」の原因もこれなのだそうで、そのクスリを使っても効く、とある。むろん、こちらのほうが高く、なにより買いづらいではないか。しかし、そうだとすると水槽に手を突っ込んでごそごそやっているこちらも、局部が痒くなったからといって、その手てボリボリ掻いたりしたら危険かもしれない。注意することにしよう。ただ「エロモナス菌」自体は自然環境の中にふつうに存在しているもののようだが。
 話がそれたが、とにかく水生菌が生えたのでは高価なクスリも勿体無いことになるので、まずは水槽の水を一新することに決めた。
 飼育水を4分の3交換し、敷き砂を全部撤去した。パワーフィルターも完全に洗い、とにかく病気の金魚以外の菌やバクテリアをおおかた撤去してしまう作戦だ。ただのガラス水槽のみの状態にして、新しい水を満たし、そこに投薬する。病身の「東王」にはすこしキツイかもしれないが、やってみた。
 投薬する「グリーンFゴールド」はもう無いので、「ニューグリーンF」にした。白カビ病のときに使った残りだ。これにも一応「細菌性感染症」への効能が記されている。今度は金魚以外なにもない水槽がブルーに染まった。
 あんのじょう「東王」は、身体にこたえているらしく、食欲がピタリと無くなり底の方でじっとしている。水生菌の発生が無ければ、徐々に普通の環境に戻してやろうと思っているが、これでなんとか「赤斑病」のほうも完治してくれれば良いのだが…。
 薬浴中の金魚は様子を見ることにして、治療終了後のために、あたらしい敷き砂を購入してきて洗った。「南国砂」10kgと「大磯砂」5kgの中目を混ぜて使う。「南国砂」は、洗うのがなんてラクなんだろう!おまけに安いし! 洗いやすい=表面積少ない=バクテリア育たず、なのだが、バイオプレートとフィルターでそれを補う。ウチのような問題を抱えた金魚には、高価で高機能な砂などは不要なことが、経験してよく分かった。なにより、洗いやすいことが、一番「吉」なのだ。
 「エ−ハイム・エコ2233」一台では、濾過処理しきれないことがはっきりしたので、サブフィルターとして水中用の「ミニゴン2」も買ってきた。砂と合わせて4千円の出費だ。これは「宝くじ」の購入を見合わせて捻出した予算である。
 んだもんで、たのむから、はやく完治していただきたいのであります。



↓この横腹のキズは投薬により現在なんとか完治したようだが…
2001/08/05 (Sun)

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