金魚と淡水魚の飼育
02話
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金魚ふたたび 〜5年目25cm金魚の死〜


 いつぞやかも書いたが月曜日はブルーだ。だが今日はちょっと違う。グレーだ。ナンデか? 先週「金魚」について書いたのだが、その矢先にやってしまった、「殺生」を。五年間、毎週せっせと水替えや世話を欠かさずやって来たのに、この土曜日ついに一匹死なせてしまった。
 死因は、はっきりしている。二日酔いだ。といっても金魚にアルコールを飲ませたわけじゃない。飲んだのはオレだ。そのへんのノラ猫や、山で野宿していたら寄ってきたタヌキには飲ませたことはあるが、金魚にはない。だって極薄の水割りじゃ飲んだって旨くないと思うから……冗談はさておき、本当の死因は水カビ病による窒息死だ。先週早々からまた少しずつ水カビの発生が確認されていたので毎日帰宅後(24時をまわってしまうのだが)カビを網で掬ったり、餌の量を減らしたりのチェックはしていた。が、週末の夜、魔が差した。なんのことはない、朝まで飲んでしまったのだ〜! その間に水カビが急激に大発生した。

 朝、帰宅すると子供たちが騒いでいる。
 「お父さん、金魚が死にそうだ」
 「なんだナンだ、おれはアタマがガンガンするんだ。これからバファリン飲んで眠るんだ」
 たぶん水槽を見てはいたんだと思うが酔っぱらっていてよく覚えていない。水カビは最近頻繁に発生しだしていたので、外部フィルターも加えいままでより濾過能力は向上している。それに五年目の金魚は体力も相当強くいままでも同様のことがあったがいずれも生き延びてきていた。で、どうやら、とにかく一眠りして頭痛が治まってから対応しても手遅れにはならない、と判断したよう(覚えていない)だ。
 数時間のあいだずっと耳元で子供の訴える声が聞こえていたようだが、何とか正気にもどって水槽をのぞき込んだときには一匹はすでに事切れていた。それも元気な個体のほうだった。
 「やってしまった!」と思ったがすでに手遅れ。水カビが鰓に取りついて窒息したのだ。人間でも腹痛とかなら、少しは我慢できると思うが、息を止められては御陀仏するしかない。
 あわてて、家人が鰓に水を通したりして、ま、人工呼吸マッサージのようなことをやったのだが無駄だった。しかし、病気がちだったもう一匹の方はなんとか一命をとりとめた。
 家族でのののしり合いの結果、子供たちが騒いでいただけで実際になんら手を加えなかった、という事実は少年法にも乗っ取って無罪。オレの「二日酔い」に「業務上過失致死」の有罪判決が下った。

 その日は残った一匹の生命維持と健康回復に努め、記録するための魚拓の作り方は知らないので、死んだ金魚に定規を並べて写真撮影し、翌日、刑事罰として自宅前の公園で薮蚊に刺されながら墓堀をした。
 金魚といっても25cm級なので墓穴を掘るのも結構骨が折れたが、それよりも五年間、毎週欠かさず世話をして、ここまで大きく育ててきた金魚を「二日酔い」であっけなく死なせてしまったという情けなさが、オレらしいといえばオレらしいのだが、この月曜日を「限りなくグレー」なものにしているのである。

 合掌。



2000/07/10 (Mon)

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