旅の写真とスケッチ・紀行
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下北沢酒日記(page2)
―プロレス・スナック STEPPLE HOUSEの落日―


1990(平成2)年9月16日日曜日

マスターの方便だと疑いつつも、もしやM枝☆ちゃんが本当にお礼の酒を持ってくるかと思うと、ここは行かない手はない。9時にステップルハウスへ行く。ひとみさんがひとりで飲んでいた。マスターは昨晩、客が一斉に帰った後の話をした。K木が来て仕事に出ていった後、キタローの友だちのT石が女を6人も引っ張ってきたと自慢気にいう。ぬかったか、と思ったが、続きを聞いて安心した。朝になって富士そばの前でシマちゃんとストリートファイトをやらかしたらしい。退散は正解だった。しばらく飲んでいると、芸術家気取りのアホ二人組が泥酔でやってきて、くだらない芸術論をやりだした。少年も来て、志のBちゃんを待っている。アホ絵描きが絡んできて鬱陶しかったが、そのうち帰った。M枝☆ちゃんは来そうにもないので潮時とオレも店を出た。絵描きとのやり取りでムカツいたので、にしんばに寄ってシマちゃんに今朝の話を訊いた。酒を二杯飲む。小腹が空いたので帰りにドーナツを買って喰ったらいきなり気持ち悪くなった。


1990年9月29日土曜日

会社のチームの草野球の試合の後の酒が大いに盛り上がって、数人で六本木→阿佐谷→シモキタ(ステップル/マスター不在)→川合と、タクシー乗りまくりの大移動。当然、朝まで。川合にバットを忘れる。


1990年10月6日土曜日

社員旅行の香港みやげを渡しにステップルへ。シマちゃんが来たので川合へ。シマちゃんはオレの部屋に泊まった。


1990年10月17日水曜日

メガネの券をとりにステップルに寄ったが休み。メガネの券は返したらしい。(←何のことか不明)


1990年10月27日土曜日

R子ちゃんがシモキタに遊びに来たので、コパンコパンでメシ。そのうちにカラオケに行こうという話になり、スナックなかむらへ行って二人で唄いまくる。2時頃、場所も近いのでステップルに寄る。客無し。ずいぶん飲んでからなのでオレはビール1本のみ。R子ちゃんは何も飲まずに糞汚いベンチに横になっているので、そろそろにしようかと帰る。ビール1本で2400円取られた。あいかわらずの因業だぞ。ワープロで打った「プロレスものの命日」をカウンターに置いてくる。読む奴おるやろか。マスターに、M枝☆ちゃんが可愛いと口を滑らせてしまった。


1990年11月2日金曜日

ひとり、赤坂さんたで酒3杯。今日は酔いのまわりが早い。コパンコパンに来週のFMW興行のチケットを取りに寄る。9時頃のんびりとステップルに向かう。マスターとサシ。その後、大阪のT橋クンというナンパ男が来た。11時になるとマスターは渋谷へ出かけていってしまった。少年の友だちの松葉杖が来た。しばらくして少年と志のBが二人で来て、マスターがいないのを良いことにパーティラインをかけまくる。志のBと少年が眠ってしまったので、店を出た。帰りににしんばで酒を一杯飲む。そしてまた帰る。ひたすらに帰る。(←心境不明)


1990年11月5日月曜日

駒沢オリンピック公園体育館に、FMWの旗揚げ一周年記念興行「YAMATODAMASHII・FMW!」を観戦に行く。S本さんも晴れて所帯持ちとなり、マスター、黒豚とアリーナ席に。オレは一階席最前列で、割合見よかったが…。試合はというと、面白いといえばそうだが、下らないといえばそうで…どうも。しかしあの大仁田信者のファンはいったい何を考えてるんや? 理解不能。この団体、後楽園ホールあたりでもう一度観てみるか。それから評することにしよう。駒沢からトボトボ歩いて、Iちゃんのアパートの前を通りシモキタへ。途中でビールの酔いと疲れが出てクルマを拾ってしまった。アホ。牛丼屋に寄ってから帰る。むなし。


1990年11月6日火曜日

ひとりで赤坂さんたを覗くと、K橋さんがぽつんと飲んでいた。昨日の試合評でも聞こうとステップルへ。ところがこの店の客の大半は猪木信者なので、FMWのレベルに散々悪態の嵐。オレはプロレスそのものが好きなので話が全然面白くない。早々に店をでてひとりスナックなかむらへ。客の爺さんと仲良くなり一緒に軍歌を唄う。明くる日寝過ごして遅刻した。


1990年11月10日土曜日

京都時代からの友人K島氏、I西、I西の彼女のK斐さんとシモキタ酒場巡り。雷やコパンコパンなかむら→ステップル。五月雨解散後T石クンと川合。ムチャクチャになって朝。ほぼ酒乱状態の様。話をするのも面倒になる。


1990年11月16日金曜日

赤坂さんたでK橋さんと飲む。酒5杯。ステップルに寄ったら時計を取られた(←意味不明)。ひとりでスナックなかむらへ行き3杯。あまり唄わず。松屋の弁当を買って帰る。酔っぱらって味噌汁のカップをケツで弾いてぶちまける。当分飲みに行かない予感。


1990年12月7日金曜日

K玉さんとさんたで6杯。後ステップル。前回来店時、二千円未払いの上、マスターに張り手を飛ばしたと苦情を言われた。憶え無し。ひとみさんと彼女の後輩が来ていた。あと松葉杖もいる。ひとみさんの腕にオレの時計がある。経緯不明。ひとみさんが「プロレスの命日」の感想を言う。まんざらでもなし。なかむらへ一杯だけのつもりで行く。常連の変わった夫婦(自分たちのスナックの閉店後に来ている)が奢ってくれたので支払いは千円のみ。唄も一曲のみ(村田英雄・王将)。


1990年12月10日月曜日

さんたで軽く飲んだ後、ステップルを覗くもマスター不在。店に入ったかどうかは不明。スナックなかむらで一曲(琵琶湖周航の唄)、千円のみ。企業のご隠居と思しき爺さん(運転手付きのクルマをお待たせ)が、オレの唄を聴いて話しかけてきた。日本酒の話などして一杯ご馳走になる。ただし黄桜。最近、若いころの酒に回帰したんだと、残念。明くる日寝過ごす。


1990年12月15日土曜日

夜9時半頃、ステップルに寄ってみたが閉まっていた。


1990年12月21日金曜日

朝、会社に出かけるとA井チーフがメモを渡してくれた。「のみやステップルハウスマスター昨日10:00PM 急死」。驚いてチーフに訊ねたら、電話があったという。最近、マスターの不在時によくカウンターに入っていた常連のN浜さんからだった。N浜さんはオレがFOCUSのパロディページを制作していたことを知っていたので、S潮社経由で勤め先を調べてくれたそうだ。N浜さんが店にいるかと思い電話してみるが誰も出ない。ようやく11時半頃にシマちゃんが出た。遺体は広尾病院の霊安室だという。チーフに事情を話し急いで病院へ向かう。広尾の駅でマスター愛飲の煙草「エコー」を二箱買った。霊安室に向かうと棺がエレベーターに乗るところだった。棺の端だけちらっと見て合掌した。駆けつけた常連たちで夕方店に集まることにして解散。仕事に戻る。

6時頃いったん部屋へ戻り、日本酒と寿司のパックを3つ買ってステップルハウスへ行く。常連たちがみんないた。昼間に仕事のない連中が、急造で店の奥に作った粗末な祭壇に手をあわせる。昼に買った「エコー」を供えた。遺影は紺のスーツでアントニオ猪木と握手するマスターの写真。この三つ揃いは猪木と会うから貸せと言われたオレの一張羅だ。写真のマスターが緊張しているのがらしくない。なにもできないので、明日の火葬まであまり飲まずにカウンターに立ち弔問客を接待することに決めた。

最近店が閉まり続けているのを不審に思ったK少年が、火曜日にマスターのアパートを訪ねたらしい。呼びかけてみたが返事がない。テレビが付いていたので、どこかに出かけたのかもしれないと思ったそうだ。木曜日になっても不明なので、いよいよおかしいと感じてアパートの大家にカギを借り、入ってみるとマスターが倒れていたので救急車を呼んだという。倒れた際に横腹を強く打った形跡があったというが。アパートの隣部屋のどるの人もうめき声は聞いていたらしい。食べ物を摂らずに酒だけ飲んで暮らしているとこうなる。

朝までカウンターの中に立っていた。足の裏から腐ってくるんじゃないかと思うぐらい汚い床である。まあ、らしいのではあるが。いつもの見慣れた顔が出入りしてゆく。朝6時頃いったん部屋に帰り、スーツに着替えた。例の遺影の。


1990年12月22日土曜日

ステップルハウスの前からタクシーを相乗りして、桐ケ谷斎場へ向かう。斎場には9時前に着いた。菊地選手も来ている。お別れのときに久しぶりにマスターの顔を見た。「エコー」を棺に入れた。

部屋に帰ってひと眠りし、渋谷に、会社の後輩のK輔のバンドを見に行く。シモキタに戻ってステップルへ行くと、黒豚、Y富、ひとみさんがいた。本多(店舗の大家、本多劇場オーナー)の指示で、やはり店は閉めるという。有志のなかには引き継いで営業する決意をしていた者もいたのだが…。みんなで、どるに行きマスター追悼カラオケ。マスターの十八番を交代に唄う。「わかって下さい」「帰らざる日々」「山谷ブルース」「いとしのマックス」「ダンスは上手く踊れない」などなど。のち、じじばばに集まって朝まで故人の話。けなすことの方が断然多いのは故人の所為。


1990年12月23日日曜日

夕方起きだして、K氏宅でS辻夫婦と鍋。2時頃シモキタに戻る。が、行くところが無い。とりあえず、にしんばへ。それからじじばばへ向かう。じじばばではクリスマスパーティが催されていた。オレは外様なので、店の隅の方でぼんやりしていた。

本編 了/page3(番外編)につづく
2002.09.04 rewrite
東京都世田谷区北沢1丁目(Page2)
words5 1990.Aug〜Dec

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