アウトドア焚火酒野宿
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vol.3 薪を集める

▲周辺の雑木林から枯れ枝などをカマド近くに集めてくる。まだまだ足りないぞ。
 野営地に到着し、カマドの位置を決めてひと息入れると、同行の焚火仲間たちは、黙々とおのおののやるべき「仕事」を始める。仕事とは言っても「遊び」なのだが、それを愉しむためにわざわざ山へ入っているのだから、当然といえば当然か。本業において、こうも積極的に動いているのかどうかは疑問だけれど、まあ現金なものだ。前回触れた「寝床」作りは、唯一自分のための作業と言えるが、そのほかの仕事のほとんどが、焚火を囲む人間全員のための共益作業ということになる。とはいえ、おのおのの寝場所さえ確保してしまえば、そうたくさんやることがあるわけではない。カマドを設置することと、料理をつくること、そして水と燃料を確保することなどである。

 で、今回は薪集めの話。わたしの焚火野宿では、基本的に燃料は持ち込まず、すべて現地調達である。土地鑑のあるところや、同じ場所を再度訪れる場合は、だいたい薪を確保できる見当がつくのだが、地図を頼りに新しい場所を開拓するような場合は、この調達が容易かどうかが重要なポイントになる。ひとりで山に入ったときなど、カマドと採集場所の間が遠いと、大変な時間と労力を薪集めに費やしてしまうことになる。それこそ「薪の奴隷」で、のんびりできる時間がほとんどなくなってしまうのだ。理想は、緩斜面の落葉樹の雑木林の中である。夜中、酔っ払って、用を足しに焚火を離れる時などに、帰り道にひょいと拾ってこれる所がありがたいのだが、都会の近郊ではなかなかそうは行かない。河原などで焚火野宿をする場合も、近場に緩斜面の落葉樹の雑木林があるところを選ぶ。溪筋は、両側が急に切り立っている場所がほとんどで、ここで採集するのは体力的にかなりキツイ。ましてや深夜に追加分を確保するとなると危険でもある。ラクに焚火を愉しむためには、場所の選定が重要だ。
 長袖シャツに革手袋をして、雑木林の中に踏み込んでゆく。わたしは、折畳み式のノコギリを持って入る。本当は大振りのハンティングナイフを腰に、なんていうのがカッコ良いのだけれど、不器用なわたしには上手く使いこなせないのだ。集める薪は、倒木、落ちた枝、立ち枯れの雑木で、薪に適当な長さ太さのものを拾い集める。倒木などは、ノコを使って伐り分け運び出す。当然だが、生木は伐らない。季節にもよるが、落ちている枝が少ないときや長雨の後などでは、立ち枯れている雑木を伐ることもある。地面に接している倒木や枯れ枝は水分を吸い込んでいて腐っている場合が多い。これは火付きが悪いばかりでなく、まず、虫が巣くっていて空洞になっているので、十分な火力が出ない。枯れ落ちていても枝のしなりなどで、地表から浮き上がっているものを選んで薪にする。立ち枯れの木は乾燥しているので、すこぶる重宝するのだ。

 そうして拾ったり伐ったものをカマドの近くまで曳いてくる。大きなものを一箇所に集めて、そこでナイフやノコを使って解体作業を始める。効率的な焚火をするためには、このときに手を掛けておくと都合が良いのである。まず、又の部分ができないように枝を払い、真っすぐの棒状になるように処理すること。一本の長さをだいたい同じに揃えること。わたしの場合はだいたい50cm〜60cmくらいに揃えている。枝先の部分は焚き付けや火力の微調整に重宝するので、これも同様に処理する。こうして、だいたい同じ長さで太さの違う丸棒をたくさん作る。数が揃ったら、カマドのすぐ横に燃料置き場を作る。手を伸ばせは届く場所に、適当な太さの薪を杭にして、方形が3つ横に並ぶように8本打ち込む。これを簡単な薪置き場の柵にみたてて3つのスペースを作り、そこに先程揃えた薪を3つの太さに分類して、手前に枝の太いほうが揃うように、きれいに並べて積み上げる。

 こうして薪の下拵えをしておくと、焚火料理中に微妙な火力の調整が必要な時など、迅速に対応できて都合が良いのである。必要な太さの枝が、すぐに手にでき、また薪の残量も一目でわかる。枝葉を切り落としてまっすぐな棒にしたのも、すっと抜き出して焚火に入れられるようにするためだ。それに、焚火の周囲の景観が、がぜん美しくなる。周りが整然とするので、自然のなかにいる気分が強く感じられる。また、闇夜につまずいて足元を怪我する危険も減る。ふいに雨が落ちてきたときなど、この薪置き場にちょっとシートをかけてやれば、濡れずに安心だ。
 料理が終盤にむかい、本格的に酒中心の宴になる頃合いには、大きな焚火にするのも愉しい。その時には太い丸太などを燃やすのが豪快なのだが、こういう大きな薪は、流木であったり、長い間地面に直接横たわっていたりして湿っているものが多い。湿った薪は、カマドの火口の対面に斜めに杭を2本打ち込んで背柱をつくり、そこに1本ずつもたれさせて横たえ積んでおく。料理をしている間の火力で水分が蒸発して、乾燥するばかりか、熱の反射板の役目も果たしてくれ、寒い日などは暖かくてありがたい。料理が終わり、さて燃やすかという頃には、おおむね乾燥して適当な薪になってくれている。

 こういった薪の仕込みと薪置き場作りは、その場所に二日以上滞在する場合には便利なものだが、一泊二食程度の焚火では、あまり手を掛ける甲斐がないとも言える。そういう場合は、適当に作業を省略してムダな労力にならないようにしているが、傍らに美しく整理された薪がたっぷり並んでいる風情は、焚火の雰囲気をよく演出してくれるばかりか、ゆとりや安心感も与えてくれる。何より、「今夜、これだけ燃やせるんだ!」というのが嬉しいのである。もっとも、結構な量だと思っていても、あっというまに無くなってしまうことのほうが多いのだけれど。

▲枝の太さにより分類して並べておくと、調理時の火力調節などが手早くできる。
(写真はテキトーにやっている時です)

03.10.22

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