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文庫本読書倶楽部
125
レッド・ライト

レッド・ライト(上)レッド・ライト(下)
125 レッド・ライト(上・下)

T・ジェファーソン・パーカー 著
講談社文庫
警察ミステリ

投稿人:コダーマン ☆☆ 05.11.22
コメント:いいよぉ!


 「ブルー・アワー」のあとの「レッド・ライト」である。
 前作「ブルー・アワー」では、人間的に素晴らしい老刑事が読者の私をいい気持ちにさせてくれた。これは彼と一緒に仕事をした向上心の強い女性刑事、マーシのシリーズ2作目。

 アメリカも実際は男社会で、その中ではまったくタフでなければ生きていけない女性刑事なのだ。「ブルー・アワー」で心に傷を負って、その傷が癒えつつあるとはいっても色々複雑な感情を抱いたまま、娼婦殺人事件の捜査に携わることになる。
 ミステリ小説を紹介するときの困難についていつも書いているが、先の老刑事とマーシの二人に、前作からこの作品の間にどういうことが起きたかは書けない。それはそれで、泣かせどころでもある。ただ、マーシには現在、にくからず思っている男がいるとだけは書いておこう。

 さて、娼婦殺人事件の捜査し始めると、自分を好きだといってくれて、プロポーズまでしてくれたその(にくからず思っている)刑事が怪しいとわかってくるのだ。証拠品、アリバイ、動機などを洗っていき何人もの容疑者の中から絞り込んでいくと、あろう事か「彼」が、もっとも怪しいことになってしまった。マーシがいち早くそのことに気づく。
 まさか、そんなことがあるはずがない、と思う。そうは思うのだが、刑事としては調べなければいけない。
 その彼の所に泊まることもある仲ので鍵は持っているから、彼がいないときに家に行って調べてみることにする。緊張感あふれる場面。すると、容疑を色濃くしていく物が次々に出てくる。
 今は、結婚するつもりはないが、嫌いではないし、自分を好きでいてくれる男を信じていたい気持が、一つ一つ出てくる証拠品によって大きく揺れる。どうしてここにこんなものが、というものが出てくる。そうして、彼の容疑が濃くなっていく。まさかと思っても、犯行現場から集めた状況証拠に合致するものが続々と出てきてしまってはどうにもできない。彼には、確固たるアリバイもないのだ。

 この、自分が今もっとも信じている男。時に泊まることもある彼の家に、犯人であると暗示する物があるということで、マーシは非常に苦しい立場になっていく。
 苦しくなるのは、彼が、マーシが自宅を調べたり、容疑者の一人としてはっきり疑い始めたことを知るからである。優秀な刑事でもあるわけだから、気づいてしまう。   
 当然、二人の間では「お前は俺を信用できないんだな」という会話になってしまう。留置所で鉄格子を挟みながらの男女の言葉のやりとり。
 二人の関係が崩れていくと同時進行で殺人事件の捜査が進んでいく。

 けっこう苦々しい終わり方を迎えるのだが、ミステリとしては上出来。ズンと来る大人のミステリだと思う。 


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