ヤドカリと磯の生き物の飼育

18話
トップページ ヤドログ 金魚 オカヤドカリ 海ヤド

活アサリ攻略法

↑我輩は一年前からココに住んでいる「クロチビ」である。
名前のあるのは我輩だけである。(8.31撮)


 8月4日に明石の林崎松江海岸からやって来た、39匹のユビナガホンヤドカリと4匹のイシダタミガイ、それに先住のユビナガ「クロチビ」とゴカイの全45生体だが…5週間が過ぎた現在、まだ全数元気で健在なんである。なにせ数が多いので、いちいち数えることができず、死んだのちに食べられてしまったものがいるのかもしれないが、いまだ死骸を確認したことがない。脱皮は一定の時期に集中して行われるようで、その期間は毎日5つほどの脱皮殻を取り除かなくてはならない。おまけに小さなヤドカリは、一日何回もコロコロと貝殻を換えまくるので、どれがどれだかは全然解らないが、まあその賑やかなこと陽気なこと。

 暇なので、自棄気味に水槽の前に椅子を持ちだして、じ〜っと長時間眺めていると、飽きない飽きない。次々と面白いドラマが展開されているのであった。ヤドカリたちの喧嘩に注目して見ていると、特に餌が投入された直後なんてのは、あちらこちらで小競り合いが起こる。これ、大きい個体ばかりが強いともいえないのが面白いところで、小さいものでも「気迫」が上まったほうが、勝負を制するようだ。まあ最終的には、大きいのが貝殻をハサミで押さえつけたり、蹴飛ばして岩から落としてしまったりと、パワーにものを言わせて餌をせしめるのだが、案外気迫に押されて諦めることも多い。

 鼻〈触角)も結構効くようで、浮上性の餌が入り水面を漂うやいなや、一斉に岩の上に馳せ参じてくる。そうして岩の上で両ハサミを振り回して、水面漂うエサをつかみ取ろうとする。数が多いので、岩上で「集団阿波踊り」をしているように見えてしまうのだ。これは笑える。そうかと思えば、すでに岩の上にいたにもかかわらず、すわ!と飛び降りて砂地を走り回る輩も多くて、まあ、おのおのに作戦があるのだろうが、面白いもんだ。

↑しめしめご開帳だ!それ喰えやれ喰え。

 前回、写真で紹介した、白ブチ、灰色、青色の3個の味噌汁用活アサリのその後であるが、灰色のと青色の2個は、そそくさと砂地の中に全身を潜らせてしまって姿が見えないままである。先日、少し砂を掘ってみたら、ちゃんと生息しているようであったが、現在は生死の確認ができていない。さて、もうひとつの白ブチアサリだが、前回写真で紹介したように、こいつだけは砂上に半身をさらしたまま、堂々ヤドカリたちと渡り合っていた。普段も貝殻は完全に閉じずに、ヤドカリが触れたときのみ面倒臭そうに閉じる、というスタンスであったのだが、その驕りが災いした場面を目撃してしまったのである。

 水槽内では大型のヤドカリたちが、時々、思いだしたように白ブチに攻撃をかましていたのだが、いかんせん正面攻撃の力攻めなので、貝を閉じられればジ・エンドで、すごすご退散することの繰り返しであった。ところがある日、1cmくらいの貝殻を背負ったチビヤドが、まんまと攻略をしてのけたのである。その方法とは……砂から3分の2ほどタテに体を飛び出させていた白ブチの背後に取り付き、いわゆる蝶番部分の上下の隙間にハサミを突っ込んで、さかんにその部分の身を食べ始めたのだ。白ブチは出入水管を盛んに動かしてジタバタしていたのだが、10分ほど継続されると、たまらず閉じていた貝殻を開きだした。なおも蝶番部分を攻め、食べ続けるチビ。とうとう白ブチ、接続部の筋肉が維持できないようになったのか、パッカンと貝殻フルオープンにしてしまった。それに気づいた多数のヤドどもが、ソーレイ!と大挙代わる代わるに押し寄せて、あわれ白ブチ一巻の終わり。数時間後には洗ったようにきれいな貝殻が残されるのみとなってしまった。驕れるものは久しからず、である。

←前回紹介した、ブチ模様の厚顔アサリ。小さなユビナガホンヤドカリなど、怖るるに足らず、と身を晒したまま堂々と暮らしていたのだが…。その驕りがアダに。
←チビのヤドカリの奇策により、ついに降参。たまらず貝殻を開いてしまった。するとあれよあれよと言う間に、アサリはヤドカリたちのバイキングテーブルと化した。
←俺様が「白ブチアサリ」の首を捕った殊勲者である。大きい連中は、蝶番の隙間にハサミが入らないだろ。ずっとなんとかして喰ってやろうと思ってたんだよアイツ、生意気だったしな。

攻略の一部始終を観察していたのだが、あまりに面白いのでカメラを持ちだすのも忘れてじっと見とれてしまった。撮りゃよかったなあ、残念。
←お!、ついに開いたか! なら俺も俺もと、どんどんヤドカリたちが集まってきた。後に残ったのは、ツルツルに掃除された2枚の貝殻のみ。

↓「ま、これからも、いろんなことが起こるだろうと思うぜ」
2003/09/12 (Fri)

17話へ 19話へ

(c)Copyright "cave" All right reserved. テキスト・掲載画像の無断転載を禁じます。