おかやどかりの飼育

35話
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秋のレイアウト 〜ロフトを増床〜

↑ガジュマルが喰いたい!しかし届かない!…頭悪い。(05.09.01撮)


 さて、今回は9月前半のレポートだ。管理人の諸事情によりアップロードが遅れてしまった。もはや季節は秋たけなわとなり、そろそろヒーターが必要になってくる頃合いなのに申し訳ない。この「秋のヤド舎」に改修したのは、まだ残暑ガンガンの9月1日で、掲載写真はその当日に撮影したものだ。でもまあ、これをアップしておかないことには、次にも進めないのでここはご容赦くだされ。

 今年の夏、またもや婿取りの機を逸してしまったものの、いつも通り暢気に過ごしてきたヤド六姐さんなのであった。初めて試みてみた、脱皮床や水場のユニット化だが、暖かい時期にはどうやら大きな問題はなかったようだし、メンテナンスが容易になったことにはずいぶん助かった。ただ、ロフト寝床に使用していた10cmアクリルキューブは、短期の潜りには支障がなかったものの、ヤド六の通常一ヶ月余りに及ぶ脱皮潜りに使用するのは、保湿やスペースの面でいささか不安があった。これまで「夏ヤド舎」→「夏ヤド舎・改」とマイナーチェンジしてきたが、秋を迎え、夏ヤド舎で観察してきたことを加味した、さらなるマイナーチェンジを施してみた。てなわけで、今回は「秋ヤド舎」のご紹介。


↑飼育人の「ラクしたい」という思いが、より色濃く滲み出た秋ヤド舎。
京の町屋の「走り庭」のようなスペースを歩くヤド六。(05.09.01撮)

 「夏ヤド舎・改」では、ロフトスペースが狭かったことの他に、背の低い横長プラケに入れた保湿用の「中目」サンゴ砂に問題が生じた。目論見通り、保湿には威力を発揮してくれたのだが、1cm程度の深さの砂しかないこの場所にもかかわらず、ヤド六は、とりあえず潜れないものかと穴を掘りはじめる。これをやられると砂のほとんどは簡単にケース外に撒き散らされてしまい、折角のメンテズボラ計画が台無しにされてしまうので廃止を決定した。またバスタブ用の150×100×30mmプラケースだが、風呂嫌いのヤド六が自ら水浴することは無いのに、この大スペースは勿体ない。新たに小サイズの水場用プラケを導入し、このバスタブはダイニングに転用することにした。

 秋ヤド舎のメインロフト部には、10cmキューブの2倍の大きさの200×100×100mmアクリルキューブを新たに導入し、こんどはサンゴ砂パウダーを入れてみた。夏ヤド舎で使用した10cmキューブには沖縄の砂(サンゴ砂細目)を入れていたが、今回は中目サンゴ砂に変更して水槽右端に設置した。中目にしたのは、メンテのしやすさと保湿を考えてのことだ。したがってこちらの方には、水分をかなり含ませるようにしている。で、観察してみると、この10cmキューブ、沖縄の砂(サンゴ砂細目)を入れていたときには難なく潜れていたヤド六だが、中目に変えてからは、掘っても掘っても潜れなくなってしまった。細目やパウダーに比べて砂粒同士の結びつきが弱いので、すぐ天井が崩れてしまうのだ。もっともこれはケースに対してヤド六のサイズが大きすぎるせいで、小さなヤドカリなら中目でも十分潜れるだろう。

 旧バスタブケースには粗目のサンゴ砂を敷いて、ダイニングに変更した。餌を食い散らかされると、その破片から黴が生えたり腐ったりするので、とにかく食用のものは一カ所に集めてしまおうという魂胆だ。ここには水は注さないで、カトルボーン&塩土入れのケースとガジュマル一輪挿し用三角フラスコを埋めた。餌入れもこのスペースに置くことにしている。特にパンなどが濡れて溶け、ガラスや砂に付着すると拭いてもなかなか取れないので、乾燥した場所に置いたほうが都合が良いのだ。

 これらのユニットを一列に並べ、余ったスペースにピッタリ収まるサイズの水場用プラケを設置した。各プラケ間を移動できるように流木を配置して、秋ヤド舎の出来上がり。撮影に邪魔なので写真では外してあるが、実際は手前の路地部分にもう一本流木を寝かせて、ヤド六が移動しやすいようにしている。なにせプラケはツルツル滑りますからな。ま、落ちるところを見るのも愉しいものではありますが。



↑秋仕様のデスクボーイ陸ヤド舎全景。(05.09.01撮)
左端にパウダーロフト寝床、右端には中目サンゴ砂ロフト、中央左はダイニング、右の水場は規模縮小。

↑上から眺めるとこんな感じ。「超収納法」的、強引なツメツメレイアウトだが、
一応納まるところがまだ良い。私の狭い家もこういう風に片付かないものかなあ。

 さて、そのヤド六、9月29日に秋ヤド舎の「パウダーロフト」に潜り込んでしまって以来、出てこない。この原稿を書いている時点ですでに二週間が経過したので、これはたぶん脱皮潜りであろう。昨年、一昨年は一年に一度、年の暮れだけにしか脱皮しなかったのに、昨11月に続いて、今年は4月そして今回9月と、約4か月周期の脱皮だ。この急激な脱皮頻度アップ、何か特別に栄養の付くものでも喰ったのだろうか。いや、与えた覚えは無いがなあ。

 9月29日といえば、贔屓の阪神タイガースがセ・リーグ優勝を決めた日である。しかしヤド六は、喜ぶ飼育者と一緒に岡田監督の胴上げ中継を観ることもなく、午前中にそそくさと潜ってしまいましたとさ。


 秋のヤド舎にて

←改修前にパチリ。夏ヤド舎の10cmキューブには細目サンゴ砂を入れていたので、容易に潜ることができた。散々ほじくり返したあと、好物のガボンバを食べる。
(05.09.01撮)
←ダブルサイズの新寝床にはサンゴ砂パウダーを入れた。100均タッパーのほうが、強度や柔軟性に優れているので良いとは思ったが、あえて華奢で高価なアクリルボックスを張り込んだ。その理由は、透明度が高いので、側面をみれば砂の湿り具合が一目瞭然なこと、また観察がしやすいこと。正確な直方体なのでデッドスペースが無くなること。そして、一応人様に見てもらうわけだから、見栄えも必要かと…辛い出費ではあったが。写真は、まだ水を注していない状態である。
(05.09.01撮)
←こちらは10cmキューブ。今回は中目サンゴ砂を入れて十分に湿らせてある。しかし中目では天井が崩れて上手く穴が作れず、ヤド六は潜ることができなくなってしまった。細目に戻せばこちらにも潜れるので、脱皮床の選択肢が増える。二本目の流木を手前の「走り庭」の上に寝かせて、スペースをムダにしないようにしてみた。
(05.09.10撮)
←各プラケユニット間は、架け渡した流木を伝って移動できる。水槽内の湿度を高めるため、流木の一部が水場に浸かるように配置した。

温・湿度計はヤド六も確認しやすいように配置。←意味なし。
「ン〜、室温30℃。湿度55%か、ちょっと喉が渇くなあ…」なんて思うわけがない。実はヤド六、天井に登ろうとして、良くこれに取り付くのだが、クルクル回しているうちに大概滑って落ちるのだ。で、下には水場。まあ、わたしのちょっとした意地悪なのであった。
(05.09.01撮)
←ヤド六は自ら水場にカラダを浸してしまうことはしない。水分を補給するときは、流木が吸い上げた水を吸い取るか、水場の縁まで降りて鋏で掬い取り、貝殻の中に貯め込んでいる。この水場には脱塩素した真水(水道水)を入れてある。ヤド六舎では海水の水場は設けておらず、塩水浴は銭湯に通ってもらうことになっている(笑)。
(05.09.01撮)
←陸ヤドカリを飼っていて堪らないのが、この多彩な表情だ。これは弱っているのでもなんでもなく、ただ、ダラケているだけなのである! この脱力感満タンの行儀の悪い脚はなんだ! たらふく喰ったあげく、餌場を脇息にして和み、日曜日のパパの風情を醸し出す、陸ヤドカリとは一体何者なんだ!
(05.09.10撮)

↑通りすがりに立ち止まり、水場に脚を浸けてみる。(05.09.01撮)


←秋ヤド舎リフォーム作業の間は、銭湯(海ヤド水槽)で時間潰しをしていただくことに。ドボンと放り込むのではなく、ひとまずは岩の上に置いてやる。海水に入ってゆくのか、陸地にとどまるのかはヤド六の気分に任せるのだが、大抵は底まで潜ってゆく。
(05.09.01撮)
←ガジュマルは、鉢植えもハイドロも卒業し、もっぱら「一輪挿し」方式で与えている。写真くらいの量だと一週間もかからずに食べ尽くされてしまう。
(05.09.01撮)
←新ロフトに使用のサンゴ砂パウダーは、少々湿らせてやれば、非常に穴を掘りやすい床となる。ヤド六のサイズにこの砂の量では、やや少なすぎるのだけれど、ちゃんと脱皮潜りをしてしまった。今のところ特に問題は起きていない。
(05.09.01撮)


 ヤド六が「メス」だと確認できてからこっち、ここでの愛称にも「姐さん」なんてのを付けて書いているのだが、どうもいまいちしっくり来ていない。オカヤドカリの動きを観察するにつけ、まだ幼体で小さいのや、体色がピンクがかっている個体ならともかく、その表情や仕草、またちょいちょいやらかすオマヌケな失態などに出くわすと、とても女性的には思えないし、まさにダメ男のイメージがピッタリ嵌まっているからだ。オドオドとした眼。いらちっぽい触覚の動かし方などは、オッサンの貧乏揺すりに近い。体をよく見れば、剛毛の毛脛持ちである。自分の意志で木の上に登っているにもかかわらず、驚いて脚を引っ込めてしまい、そのまま転落する、なんつうのはもはやコントであって、女性に重ねるにも「山田花子」あたりがせいぜいであろう。辰巳芸者の小粋な「姐さん」なんて、とても無理なんである。

 今夏、朝のテレビワイドショーで、オカヤドカリが紹介されたが、そのコーナータイトルには「若い女性に人気」とあった。まあ企画がそうだったのだから当然かもしれないが、登場した飼育者も女性ばかりであった。ネットを見回してみても、女性の飼育者の方が目立つように思える。実際の飼育者の男女割合は解らないけれど、その「女性に人気」というあたり、オカヤドカリが醸し出す、このいかにも「情けない男」的風情が、大きな理由となっているのではないか。生き物の飼育経験豊富な女性なら、そんなムードに惑わされることなく、正しく十脚目異尾類の生物として接するのだろうが、ペイント貝殻を着せ替えさせたい衝動に駆られる「若い女性」の飼育者たちは、古くはキャンディーズの「年下の男の子」の歌詞のように、ダメぼんのイメージに母性本能を擽られて、非常に厄介で難しい「生物飼育」の世界に、向かぬ足を引き入れられてしまったのではないだろうか。

 一見、愛嬌のあるオカヤドカリとはいえ、ひとたび裏に返せばその姿はエイリアンの趣であるし、腹部を出して見ればナメクジやナマコ。犬猫ハムよりは、随分クモやムカデに近いのである。とても「若い女性に人気」にはなりえないはずなのに…。あげく、手に乗せて可愛がってやろうとして、脅えたヤドの強烈な鋏脚で皮膚を切り取られ、痛がって放り投げたところが、ヤドは鋏脚を自切。「どーしていいのかわかんな〜い」なんて光景が、日本のあちこちのワンルームマンションで繰り返されているような気がしてならない。「じゃあアンタはどうなのよ!」と言われれば、あたしもしかりだ。ただ、あたしの場合は「年下の男の子」ではなくて、例えて言うに、阪神タイガースのアニキ金本が、モンキー藤本敦士を『可愛がって』いる、というのに近いかな。まあ似たようなもんですが。え〜とオカヤドカリというのは、「オス」の雰囲気をより強く持った生き物ではないか?というお話でした。



↑流木だって喰うぞ、バリバリ。(05.09.01撮)

←流木を伝って水場へと降りてきたヤド六。触覚で水を触ったのち、バックで戻ってしまうこととなる。
(05.09.01撮)
←カメラを構えるわたしと目が合って、一瞬「固まる」の図。複眼ではいったいどう見えていることやら。
(05.09.01撮)
←サンゴ砂パウダーでロフト化する際に、最も気を使うことが湿り具合の維持だ。潜っている位置に水を注してしまうと脱皮ルームが崩れる危険があるし、乾燥しすぎても危ない。カンに頼ってアバウトに注水するしかないというリスクはある。
(05.09.01撮)
←姐さん、秋ヤド舎の住み心地は、どうだい?(05.09.01撮)

↓陸海デスクボーイ二階建てヤド舎。
階下は海ヤド水槽(ヤド六の銭湯)。イソヨコバサミがこちらを向いている。
2005/10/13 (Thu)

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