おかやどかりの飼育

30話
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不器用なんです ―穴掘り、水浴び、宿替わり―

↑水は苦手だが、この際ヤケクソだ。底まで潜ってみるか。(04.09.09撮)


 ヤド六が前回脱皮したのは昨年の暮れ。梅雨時に穴掘りを真剣に繰り返していたけれど、いずれも一週間以内に砂から出てきてしまった。それから今まで、ずっと地表で過ごしているので、もはや10ヶ月間は脱皮していないことになる。オカヤドカリも、オッサンになると新陳代謝がシボンでしまうのであろうか。これは同じくオッサンであるところの飼い主にとっては、ご同類が増えたようで、なんだか嬉しいのである。しかしさすがに、そろそろ「脱皮モード」に入ってきたようで、9月の中頃からのひと月は毎晩せっせと穴掘りにいそしんでいるのだが、どうにも満足な「穴」が作れないようで、最近は心なしか穴掘り作業に焦りの色も見えるように感じる。掘っても掘ってもカラダが潜って行かず、見ているとその不器用ぶりは情けないほどなのであるが、まあ飼い主も同じく不器用なので、ヤド六だけ責めてやるのは可哀相だ。
 
 そこで、ヤド六の穴掘り下手の弁明をしておいてやろう。ヤド六のオカヤド舎は、飼い主の勝手な都合で通常は湿度30〜40%程度に乾燥している。こう乾いていると砂粒同士の結合が緩くなってしまい、穴を掘って砂を脇に除けても、砂粒は穴の斜面をサラサラと戻ってきてしまい、どうにもラチが明かないのである。何度も何度もチャレンジしたあげく、ようやくなんとか潜れても、砂中に「脱皮ルーム」空間を作らねばならないので、その壁を固めようとしたときに崩れてきてしまい、元の木阿弥に帰することになってしまうのだ。意地悪く半月くらいそのままニヤニヤ見ていたが、ここはお慈悲で砂を湿らせてやることにした。

 砂を湿らせ、舎内湿度を60〜70%にしてやってから、さらに半月が経つが、まだ上手く潜れないでいる。ヤド六が不器用なのが第一の原因ではあるが、ここにも弁明の余地はある。デスクボーイ水槽の短辺は17cm。ヤド六は現在、ピンポン玉を一回り大きくしたくらいの貝殻に入居しているが、このカラダにはもはや水槽が小さすぎるのであった。というのは穴を掘り進むとスグにガラス面にブチ当たってしまうが、そうなったとき、横に進行方向を変えりゃいいのに、そのままもがいて垂直に上がるものだから、あらまた出ちゃった、となってしまうのだ。まあ馬鹿なんである。かつては水入れや流木を天井に利用したりして上手くやっていたのだが、どうもボケが来だしているようだ。

 オカヤド舎には、細かい「沖縄の砂」とやや粗目の「サンゴ砂」の二種類のスペースを設けてあるが、砂を湿らせた状態では、細かい「沖縄の砂」の方に潜ることが多い。濡れた砂粒同士の結合が強いので、満足の行く「脱皮ルーム」が作りやすいのだと思う。しかしひと月にも及ぶ脱皮期間中、細かい砂で作った空間が崩壊せず、また脱皮中の呼吸に支障のないような湿度を与え続けるには、相当の水差し作業が必要になり、水槽の底に汚水の層ができやすい。オカヤドカリは底の方まで潜って脱皮するものが多いので、小さいオカヤドカリだと脱皮中に溺死(もしくは水分過多による失敗)をしてしまう危険がかなりある。以前紹介した、郵便局ヤドの「名無しちゃん」の脱皮失敗の原因はその可能性が大だ。そこで、小さなヤドカリを飼育しておられる方々は、淡海水魚飼育の底面濾過に使用する、バイオフィルター(NISSO製)などのブロックを水槽底に敷き詰め、簀の子代わりに使うと溺死事故が減らせると思うのだがどうだろう。

↑クソー、掘っても掘っても崩れて潜れないよ〜(04.10.14撮)

 こちらとしては潜っていざ脱皮開始、となる前になるだけ砂を清潔にしておきたいわけなのだが、ヤド六がひと月も潜ったり出たりウロウロしているものだから、何度か砂の天日干しを繰り返す羽目になった。面倒なので、水槽ごとベランダに持ちだして陽にさらし、時々砂をかき混ぜるだけという、いたっていい加減なやりかたなのだが、あげく、ヤド六はその度に、バケツに移されて苦手な「行水」をさせられることとなる。一発で潜ってしまえば良いものを、テメエの不器用ゆえに、度々の行水をせねばならないのである。こちらも度重なるフェイントのおかげで、作業に大概嫌気がさしてきた。10月に入ってからは、さすがに水もチベタクなってきたので堪忍してやっているが。

 その水浴び、水道水+コントラコロライン+アクアセイフの淡水か、人工海水かの、どちらかをそのときの都合で行なっているが、最近は幾分水を嫌わなくなったようなので、以前のような「腰湯」ではなく、たっぷりの水量にしている。まあ、このあたりは、金魚と海ヤドを飼っているゆえに用具が揃っているので容易に行なえるのだが、水嫌いのヤド六にとってはアタマの痛いところだ。この時、ついでに宿替え用の貝殻もきれいに洗ってやることにしている。

 行水を終えて水槽に戻ったヤド六は、いつも活発に動き回る。そして一時間以内に、必ず貝殻を変わってみる習性があるのが面白い。常に水槽内にころがしてある貝殻で、普段は見向きもしないくせに、水浴直後のみは熱心に検分して何度も替わる。まあ今のところ結局は元の貝殻に戻ってしまうのだが。最初は、貝殻が清潔になるのでそうするのかと考えていたが、何度も観察してみて、どうやら自分の体が充分に濡れることが、宿替えのキッカケになるのではないかと思うようになった。オカヤドカリは貝殻の中に、常に水を貯えているようで、ヤド六も時折水場のフチに陣取って鋏でセッセと懐に運んでいるが、このことを考えると、柔らかな腹部の乾燥が健康上の大敵なのだろう。行水により、体(特に腹部)が充分湿った状態だと宿替え後の危険が減少し、積極的に行動できるのではないだろうか。ヤド六のみでの観察なので、他の個体も同様かどうかは怪しいが、なかなか貝殻を替わらないのに気を揉んでいる飼い主の方は、一度「タップリ行水」を試してみてはいかが? タップリ具合や水浴時間の加減はおのおの実験・考察されたし。



←オカヤド舎まるごと砂の天日干しを行なっている間、ヤド六は嫌いな行水をさせられる羽目になる。初代金魚用水槽が今回の行水の盥だ。(04.09.09撮)
←流木があるので、カラダを水に触れずにはいられるのだが、なんとなく水が気になる。
「今回はやけに水量が多いの〜」
←「ちょっくら、ハサミでも浸けてみっか。お、今日はアクアセイフ入りの水道水やな、海水ないんか!(ヤド六)」
「こんなに沢山の人工海水を、お前さんの行水だけに使ったんじゃ、塩代がかさんでタマらんわい(飼い主)」
←「ん〜、天気も良いことだし、ちょっと浸かってみるか」と、水中へとじわじわ進んでゆくヤド六。お前さん、水は苦手だったんじゃないんかい。いったいどういう風の吹き回しか?
←完全に水中に没しながら、ガサゴソと水底を歩くヤド六。ゆっくり2周ほど回ってから流木に上がってきた。
←カラダ全体がしっとりと水分を含んだところで、気持ち良さ気に日光浴。しかし上から見ると、面白い「目」の付き方である。

↑天日干しと行水を終えて、ヤド舎に戻った。行水直後は格別活発に動く。

←水浴後、体が湿っている間は、さかんに貝殻を替わろうとする。いつもは知らん顔している貝殻なのに、熱心に検分する。この貝殻など、以前何回も試したあげく、元に戻っているのである。いい加減憶えとけよな。
←「ヨイトセ〜」と替わる。ヤド舎内には敵などいないのに、かなり慎重で、一瞬のシャッターチャンスだ。ふだん見えない腹部はちょっと驚くほど大きい。ところでこの写真を見ると、結構立派な「腹肢」が見えるのだが、ヤド六、お前さんオカマだったのか? 
←貝殻を替わった後は、しきりにゴソゴソと収まり具合を修正する。大きく身を乗り出したり、勢い良く引っ込んでみたりして住み心地を確認。
←大きさはちょうどいいんだが、どうも違和感があるようで、不満げ。
「あんたたちだって、パンツの中味を調整するだろうっての!(男に限るが)」
←やっぱ、元の貝殻に戻るベ。(04.10.01撮)

↓「不器用で、えらい悪かったな!」ゴソゴソ。
2004/10/15 (Fri)

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