金魚と淡水魚の飼育
54話
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仲が良いのか悪いのか
〜発情?それとも縄張り争い?〜


↑おひろいと清正。二匹の関係を毎日観ているが、畜生の気持ちなんざ金輪際わかりやしない。
追われて激突を繰り返す拾丸が哀れに見えるときもあれば、こうやって仲良く並んでいるときもあるし。
(08.04.16撮)


 生き物の飼育を長く続けていると、過去に得た経験が蓄積されてきて、病気や事故などの時にすばやく的確な対応ができるようになると思われがちだが、あたしの場合にはあまり当てはまらない。なぜなら、間に時間が置かれたり対象となる個体が変わってしまったりすると、前の教訓をすっかり忘れてしまうからだ。今回、清正を迎え入れた一件もしかりである。「拾丸一匹だけで淋しくなった水槽に彩りを」「拾丸の残した餌の処理業務を幼魚に」「あわよくば東王の遺伝子の継承者を」なんて何気に都合の良いことばかり考えて導入したのだが、混泳させてみて次々に現出してくる問題を目の当たりにしてから、ようやく前にも同様の難儀な目にあったことを思い出すのである。そんでもって、「ああ!しもた、前の○○のときもそうやったのに!」つうことになる。残念でした、もはや後の祭り。さあ観念して二匹ともちゃんと育てろよ、だ。

 では今回の事例を反省しておく。まずは「金魚がみんな死んじゃって、残った一匹だけじゃ淋しい」という一件。これは観賞魚を飼育しているのだから、見るほうの立場から言えばまあ正論なのであるが、飼育者の立場からすれば大きな覚悟を要することであったのだ。二匹が三匹になるその違いは「ついでに」てなところで済むものでもあるが、一匹と二匹では、その手間や生じてくる問題などを鑑みるに「大いなる違い」が生じる。そりゃあ一匹だけの方が極端に世話がお気楽なのは間違いない。ここは深い考察を要するべきであったものを…。そして「あわよくば東王の遺伝子の継承者を」にいたっては、なんたる勘違いか。われながら、「あんたまたあの苦労を一から繰り返すつもりでっか?」と問えば、すかさずぶるぶるぶると首を横に振ることになるのであります。(「またあの苦労」の詳細については当欄過去の記事をご参照ください)

 予期できない誤算もあった。連れ帰った「清正」が想定外の急成長を遂げたことである。そういう一個体の素質まで見抜くのはさすがに難しい。また先住の「拾丸」が生まれながらの一人っ子で、全く金魚世間の仕来たりに疎く、共同生活に慣れていなかったこともある。結果、どうなっているか。清正はどんどん大きくなって拾丸を追い始めた。体格差があるんだから堂々と放っておきゃいいのに拾丸も慌てて逃げては、鼻先をガラスにしたたかぶつけて、失神直前にまでグロッギーになってしまう。餌の問題も誤算だらけだった。当初の目論みは拾丸の食べ残しを清正に始末させることにあったが、いざ蓋を開けてみると、どんくさい拾丸より先に、清正がささっと餌を平らげてしまうから、拾丸は餌にありつけない。仕方なく多めに追加するので餌の総量が過分になってしまい。清正がますます急成長するという悪循環にいたったのであった。(この「追い行為」が、発情によるものなのか、単なる縄張り争いなのか、についての結論は次回以降、先に送らせていただきます)

 ま、長いこと金魚を飼っているくせに、すぐ前例を忘れてしまうあたしが悪いんだ。すまないけれどなんとか折り合いを付けて仲良くやってもらえんだろかね。つうわけで今回は二匹のバトル写真ばかり。その上5月中はデジカメが修理ドック入りで撮影できずに終わってしまい、いささか古い写真の掲載になってしまっている。6月中旬の現在、清正は全長17cm超に育ち、もはや拾丸にせまる体格になってしまっているのだが、そのあたりのようすは次回の更新までお待ちくだされ。



〜 拾丸と清正、同居五ヶ月 〜
↑3月末のご両人。清正はちっとは色気づいて来たのか、
無関心を装った表情のまま、そ〜っとおひろいに近づいてゆく。
助平の行動つうのは人間も一緒ですなあ。
(08.03.22撮)

―同居5ヶ月経過―

←知らんぷりを装いながら、おひろいの「あそこ」付近を目指してそ〜っと近づく清正。拾丸の方も、気づいていないふりを装いながら「そろそろ来やがるな、あの馬鹿…」と逃げる心つもりで身構えているのだ。金魚の顔つうのは表情の変化に乏しいが、それだけに普段と違うちょっとした緊張感が水槽に漂うから、見ているこちらも、「ほう、それでどうする?ご両人」という感じになって、みんなが少しずつ緊張しているのだ。おもろい。
(08.03.22・以下同日撮影)
←清正は拾丸の腹部にじゅうぶんに接近すると、タイミングを見計らって「あそこ」を突っつこうと若干泳ぐスピードを上げる。と、その動きにシンクロするように拾丸も同様にスピードを上げて逃げ始める。二匹が一連の流れとなった非常にスムーズな同期加速だ。君らVVVFインバータ制御か(笑←注:電車のたとえ)。
←そして両者は一定の間隔をキープしながらどんどんスピードアップして水槽中をグルグル回ることになる。そうなると世間知らずのうえ、視力も低下している拾丸に勝ち目はない。敏捷で的確にターンして局所をピンポイント攻撃する清正に追われるがまま、無闇に速度を上げて水槽ガラスに思いっきり激突!当家の居間に鈍い打撲音がこだまする。
←一回戦が終了すると、インターバルに入る。運動のあとなんで二匹とも結構「ハアハア」言いながらクールダウン。
←局部をつつかれるのを嫌ったおひろいは、できるだけ腹部を隠せるスペースに身を置くようにして予防しているのだが、そんなセコい工夫など清正はものともせず、鼻歌まじりで顔を突っ込んで行くのだった。
←でもって二回戦終了。しかしですね、このバトル、いちおうサカってはいるもののまったく繁殖行為には至っていないのでありまして…つうか、清正は図体ばかり大きくなってはいるけれどまだ満一歳にもみたないガキだから、まだ未成熟なのでありますよ。菌魚のおひろいにとっては病体なのに激しい運動を強要されて、非常に迷惑なご様子です。ハイ。

〜 同居後、ほぼ半年が経過 〜

←清正が来宅したのが2007年10月20日。その時の大きさから生まれたのを初夏あたりと推測したから、4月半ばのこの時点でおおむね生後10ヶ月というところか。しかるにもう15cmはかる〜く越えてますヨん。オソロシ。
(08.04.16撮)
←生い立ちがあまりにも違いすぎる二匹。当家後とリの拾丸は、菌魚の血族ながら、卵以来の一人暮らしなので、世間のしきたりや恐ろしさを何も学ばず、喰いたいだけ喰って育って来た、ぼんぼん(今や姫さまの可能性が大だが)である。喰いたいだけ喰ったもんでカラダの成長は早かったが、気弱で臆病者なのが特長である。対して清正は、餌金の生簀で、無数の同類たちと十把一絡に生存を争うように育てられ、たぶん餌もロクに口にしたこともないまま当家へ拾われて来たに違いない。飢餓地獄が飽食の毎日にイッキに転換したわけだから、そりゃリバウンドが大きくなろう。物怖じしないふてぶてしい性根が身に付いているわけだ。体色もおひろいの赤に対し清正はオレンジだ。こいつらこれから仲良くやっていけるのか?
(08.04.16撮)
←清正に追われても、先達らしくアタマをつかって上手くかわせばよいものを、まったくお馬鹿な拾丸は、まるで生前の「オヤジJR」叔父を真似るように猪突猛進。そこらじゅうを擦りまくって皮膚や鱗をはがし、あげくのはてガラスに正面衝突を繰り返す。もう傷だらけのボロボロ状態。最近(6月)は下あごも皮が剥けて白く変形してしまった。大工三代使い古した木槌みたいである。いっそセパレータで二匹を分けようかと何回か思ったけれど、もう少し様子を見てから、と実行せず。いまだ同居とバトルは続いている。
(08.04.22撮)


― ある日のバトルをルポルタージュ ―

↑「清正、お前さんホンマに繁殖の仕方をわかって追ってる?」
毎日派手にチェイスはやらかしてくれているが、追星は出んし放精も産卵も一向にナシ。遊んでるだけかい!
(08.04.25撮)


←清正は興奮し、一丁前にカラダを擦り寄せて一生懸命アピールしているようだが、拾丸は一向に反応する気配なし。「まだ子供やしなあ、コイツ」てなところか。しかし体はワイルド・ペガサス(故クリス・ベノワ)。
(08.04.25・以下同日撮影)
←「エサ金生簀の厳しい渡世、だてに揉まれて来たわけやあらへんで!」とばかり、アタックをかける清正。おひろいは「いったい何どす?」てな。しかしコイツら本当に♂と♀かなあ。単に遊んでるだけか、清正が縄張り争いをけしかけているだけのような気も。飼い主イマイチ確証もてず。
←しかし清正が、いちおう拾丸の「あそこ」に注目して攻撃しているところを見ると、やはり清正♂、拾丸♀なのだろうか。
←追われると逃げるのが成り行きなんでそれは仕方がないにしても、お馬鹿拾丸の闇雲な突進による全身スレ傷の悪化が心配だ。水槽の中にある用品の角などが、できる限り体に触れにくくなるように配置を変えた。ヒーターとエアストーンは水槽隅に縦に設置(写真奥)。ローターSは水面近くに棚を作って設置。二匹が猛烈にぐるぐると泳ぎ回る水槽底の障害物をなくしてある。
←巴戦。ぐるぐるぐるぐる〜、あー目が回るよ〜!!!
←パイルドライバー。脳天杭打ち、ゴチ〜ン!!!
←フェイスバスター。顔面砕き、グシャっ!!!
←ああ!とうとうコーナーに捕まってしまいました!おひろい、弱っつ!
←これは自爆。勢い余って顔面からゴーン!!!
←もうふらふらっす。疲れたのか無抵抗になるおひろい。しかしこんだけ激しく動き回っても、どちらも一向に「何もでまへん」。やっぱり清正はまだウブじゃわい。ほんでもって拾丸ってやっぱりオスとちゃうん?


↑おい、おっさん。あの図々しい新入り、なんとかしてもらえんもんかねえ?
せっかく一人で平和に暮らしてたのに、このところ毎日追いかけられて、もうヘトヘトのボロボロですわい。
(08.04.22撮)

↓とはいえ、仲良さげに並んでまったりしてるときもあるんだもんね〜。キミタチって。
(08.04.16撮)
2008/06/17 (Tue)

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