金魚と淡水魚の飼育
47話
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三匹の菌魚と拾丸の成長

↑「まだ生きてる、つうの。文句あるか!」
(06.05.11撮)


 さて、金魚でんがな。ふう。

 と、相変わらずため息から始まるような塩梅なんだが、いや、特に大事はおまへん。菌魚連中、毎週毎週ごていねいに危篤状態と繁殖行為をくり返しながら、じんわりと大きくなっては来てます。ま、毎日見ている飼い主にとっては、成長の度合いがどんなものであるかは気が付かないのだけれど、日々あれだけの量のメシを喰らって大糞を排出しているのだから、そりゃあ大きくなっていない訳がない。いつもの感じで写真を撮ろうとすると、「ああ、これでは尾の先まで画面に納まらんなあ」というふうで、ぼんやり成長しているのに気付くような次第だ。

 世間では、ゴジラ松井のアクシデントによる連続試合出場記録が途切れたの、阪神の鉄人・金本の連続フルイニング出場世界記録達成のと賑やかだが、わたしの菌魚水槽の「中3〜4日置き60リットル水換え連続記録」というのも、ずいぶん長い間途切れずに続いていることを世間やマスコミは知らない(笑)。頃合いが来ると、なんや知らん間にカラダがもう反射的に、しゅっとバケツに手が伸びるようになってしまったので、言わば髭を剃るようなもの。つまらん習性が身に付いてしまったもんだが、まあいや、知られざる世界の馬穴人なんである。「馬穴に入らずんば無事を得ず」と言うこともあるし、こりゃ仕方あるまい。

 しかしまあ、「よくもしぶとく生きているなあ」というのが正直なところで、「オヤジJR」に到ってはもはや、全身の脂気は抜け落ち、ウロコはカサカサ。目玉は真っ白。体中に粉を吹いたようになってしまった。水が悪くなると、ドターッと底砂に腹を付けてしょぼくれているが、いざ水を換えると、すぐ「メシ喰わせ!」。餌を与えると、視力もほとんどないくせに水槽中をビュンビュン泳ぎ回ったあげく、思いだしたように雌(ジャンボ)を追い始める。で、3日経つとまたドターッ。「もう、早よう死んでしまえ。その方がラクやで」と思うのだけど、実にしぶとい。成長ぶりはジャンボや段平ほどではないけれど、やはりそれでも飯を喰った分だけは大きくなってきている。ただ、あまりにもボロボロなので、写真を撮るのもちと辛いような有り様だ。



↑ジャンボ(♀)。体表面の粉を吹いたような状態は治らず。
口元にも常に傷をつくっている。(06.05.11撮)
↑オヤジJR(♂)。相変わらずボロボロの毎週危篤菌魚。
飼い主の懸命の人工透析(換水)で命を繋いでいる。(06.04.05撮)
↑段平(♂)。三匹の中では比較的元気で、
ジャンボに次ぐ30cm級(全長)に成長している。(06.01.07撮)


 この季節、夏のような暑さの日が続くと思えば、一転、長袖を一枚重ねたくなるような日が来たりして、気温が不安定になる。ウチの水槽の悪玉菌どもは、それにデリケートに反応しやがる。ずいぶん長い間なりを潜めていた水カビ菌だったが、気温がコトンと下がった日に「それっ!」とばかりに出た。高松塚やキトラ古墳を預かっているセンセ方もタイヘンだろーが、ウチだってタイヘンなんだ。しかし考えてみると、常にサーモヒーターを入れているわけだから、外気温が変化しても水温は一定のはずだ。それなのに、出る。これが実に不思議だ。何年か前、殺菌のために28℃超の高水温に設定していた時期があったが、ウチの水カビには屁の突っ張りにもならず、高水温でもあっさり発生し続けたのでもうやめた。電気代が馬鹿らしい。それで今は26℃くらいの設定にしてあるが、いったい何の菌なんだ?ホントにカビなのか?

 水換え作業自体は、もう習い性化してしまったので、「面倒」という観念からは解脱して来ているのだけれど、換水前のショボクレたオヤジJRの哀れな姿を見ていると、周期的に「なんとかしてやらにゃなあ」という気持ちが大きくなり、またぞろ「なんか魚病薬でも入れてやっか」となるのだ。もうポピュラーなクスリはほとんど試して、いずれも良い結果を得られなかったにもかかわらずだ。問題の解決には「水槽まるごと全消毒」するしかないのは解っていながら、偏固にそれを拒み続け、気休め施療だけ行なって、良しとしている馬鹿なわたしなのだが、そういう奴なんだから仕方ない。

↑好物の沈下性のエサ(咲ひかり)を入れてやると、三匹で争って食べる。
段平の頭と体が歪んでいるのがよくわかる。(06.04.05撮)


 で、ある日、ガラスケースにズラリと並んだ魚病薬を前にして、ショップの兄ちゃんに訊いてみた。その会話を「意編集」して以下に。

わたし(以下→偏):「あの〜、たぶん水カビだと思うんだけど、この中でどれが効くのかな?」
アクアショップの兄ちゃん(以下→店):「サカナは何です?」
偏:「金魚。金魚すくいの。鮒尾のが三匹」
店:「今までにどれか試されましたか?」
偏:「ここにあるのは、ほとんど全部。どれも効かんかったなあ。特別高価なのは使ったことないけど」
店:「水温は?」
偏:「サーモヒータでだいたい26.5℃設定くらい」
店:「水カビならちょっと低いなあ…瀘材は何を使ってます?」
偏:「主にサブストラット・プロ」
店:「活性炭とかゼオライト入れてるとね、なんぼ投薬しても全然効きませんよ」
偏:「うん、そう思って、今はサブストとスポンジだけにしてる」
店:「サカナを薬浴用の水槽に移して試しましたか?」
偏:「それが出来ないんで困ってるんよ、あたしのカラダの事情と家庭の事情で」
店:「フィルターは何を」
偏:「外部式のテトラEX120とエーハイムエコ2233の2本。あと投げ込みのミニゴン」
店:「…水槽の大きさは」
偏:「120リットル」
店:「え?金魚だけですか」
偏:「うん、金魚すくいの、フナ尾のが三匹」
店:「まあ金魚はかなり水を汚しますけどねえ…」
偏:「30センチもあるとねえ。それも三匹やし、もう饂飩糞で」
店:「……………」

ここで、金魚水槽のこれまでのあらましをかいつまんで説明した。

店:「それ、もう薬は何入れても効きませんわ。水槽ごと機材も全部、消毒液で徹底的に洗わんとあきません」
偏:「5年くらい前に一度思いきってやったけど、半年でまた出てん。今は腰がアカンのでもうでけへん」
店:「……………」
偏:「どのクスリにしようかな〜」
店:「薬は何入れても効きませんて。無駄ですわ」
偏:「いや、でも、一時しのぎに、ということも…」
店:「無駄ですわ」
偏:「ヨウ素の殺菌もしてるんやけど…」
店:「無駄ですわ」
偏:「ほな、マラカイト液でも買っとこうかな」
店:「無駄だと思いますけどね」
偏:「このアグテン、わりと安いなあ」
店:「……………」
偏:「エーハイム・プロフェッショナルとか、でかい外部フィルターをもう一台追加するとかどう?…」
店:「お客さんとこ、その3日置きの60リットル水換えを続けるしかありませんわ。それ、金魚が死ぬまでやり続けてください」

 見放された…。でもハッキリしたええ兄ちゃんやった。



↑「おや、お前さん元気ないね?」
「ああ、まったくもってショボクレた人生だよ」(06.04.05撮)

←水温を合わせて換水するのだが、それでも直後しばらくの間は大人しくなり、底付近に並んでじっとしている(ただし、餌が入れば別だが)。微妙な水質の変化を感じているのだろう。でもウチの場合は頻繁なので、もう慣れっこになっているけれど。
(06.01.07撮)
←換水直後の神妙さは、ありゃ何なんだ。30分も経つと、思いだしたように餌をねだり始める。「メシくれ、メシくれ、メ・シ・く・れ〜!!」
(06.01.07撮)
←なもんで、餌を入れてやり、まあ鱈腹喰ったと思い気や、今度はサカリ始める。大抵の場合、段平がスイッチを入れるようだ。アホ!
(06.04.05撮)
←結果、大量脱糞と産卵と放精で水が一気にウンと汚れ、自らの首を絞めるという、情けないローテーションが無限に続くのであった。「オイラ、もうしんどいわ(オヤジJR)」「ワシもや(飼い主)」
(06.04.05撮)

しかし、いつものことながらこうやって文中に「脱糞」と書くと、「別目的のヒト」がけっこう訪れるようなのであるが、無駄足をさせてまことに申し訳ない、というかご苦労さん。
←成長した拾丸をこちらに移して、60cm水槽を海水水槽もしくは陸ヤド舎に振り替えるか、それとも、オヤジJRと拾丸を一対一トレードし、60cm水槽をオヤジJR専用病棟とするか、現在思案中。後者の場合、「海軍兵学校附属病院」が復活することになるが…。
(06.05.11撮)

↑「このところ、ここの管理人は原稿を書くのが億劫とみえ、
無闇矢鱈と大写真を入れて、内容の貧弱さを誤魔化そうとしてる傾向があるなあ。」
「んだんだ。」(06.04.05撮)
↑ジャンボ(♀・5歳)は全長30cm超。
そろそろ母さんの「東王」と肩を並べるサイズに育ってきた。(06.01.07撮)

←ジャンボは食後、おなかがくちくなると、長時間いわゆる「鼻アゲ」をして、水面をパクパクする。これはどうやらクセのようで、苦しんでいる様子はない。これを始めてからもう3年以上経つが、食後の「習慣」になっているようだ。まあ、わたしも食後にゃ必ず新聞を読むがね。最近、ジャンボの腹部に赤くて丸い斑点が見えるようになった。
(06.04.05撮)
←ジャンボと段平に比べると、オヤジJRの成長は鈍く、もはやふた回りは小さい。目玉が曇ってしまっているので視力がほとんどなく、餌を他の二匹の三分の一程しか摂れないからだ。かといって追加を入れてやっても、食べるのはジャンボと段平ばかりだからなあ。
(06.05.11撮)
←さて、キミ達は、おひろいと親子4匹で暮らすのをお望みなのか、オヤジJRが兵学校に療養に行くほうがありがたいのか、どちらがよろしいのかな? 黙ってないで何とか言え!
(06.04.05撮)

〜四代目おひろい(拾丸)の成長〜
↑わたしの姿が見えるやいなや、水槽の角で激しく身をくねらせ、
「メシくれ踊り」をするのが日課の四代目おひろい。(06.04.05撮)

 60cm水槽(旧メダカ水槽および旧々海軍兵学校)を占領している、四代目の拾丸はもう10cmの大きさにまで成長した。その傲慢ぶりは大変なもので、同居していた長命のヤマトヌマエビ3匹のうち、おひろいに追われて水槽外に跳ね1匹が干エビに。あとの2匹も知らぬ間にいなくなってしまった。たぶんおひろいに食い殺されたのだろう。で、ヤマトヌマエビが消滅したとたんに石巻貝が繁殖しはじめた。ウチの水槽での石巻貝の繁殖は始めてのことなので、喜んだのもつかの間、生まれてきた稚貝を次々とおひろいが喰ってしまい、結局水槽に残っているのは親石巻貝だけだ。いやはや金魚というのは全くタチの悪いサカナだ。ま、人間が観賞用に改良したゆえの因果なんであろうが。

 さあ、このおひろいを菌魚本水槽に同居させるタイミングをいつにするかだ。そしてその後の60cm水槽をどうするか。メダカ水槽化以来、非常に安定した水質状態を保っており、水草牧場としても機能していて、アッサリ廃止するにはしのびない。元々は日淡をやってみたかったのだけど、おひろいがいなくなれば可能だ。でもこの水質を諦めてしまい、オヤジJRの専用病室にする手もあるし。金魚は4匹とも本水槽に纏めて、60cm水槽は海水水槽やオカヤド舎に転用する手もある。さてさて、現在思案中。いずれにせよ、次回の更新ネタは、おひろいの大部屋入りということになりそうだ。



←2005年10月7日のジャンボの産卵の落とし子とおぼしき、四代目拾丸。招かれざる一粒種(一粒種と言うのはおかしいか)だが、メダカ水槽を占領してすくすくと成長。これは生後二か月くらい。
(05.12.16撮)
←おひろい幼少のみぎりには、オデコの真ン中に黒い斑点があり、目玉の回りにも黒い隈があったので、やんちゃな顔で可愛げがなかった。まあ、今でも可愛げはないが。
(05.12.16撮)
←60cm水槽に一匹だけなので、メシ食い放題。我儘やり放題。怖いものも知らないまま、どんどん成長。その成長速度はトメ子のときよりもさらに速い。
(06.01.07撮)
←生後三か月で4cmほどに。老ヤマトヌマエビ三匹と石巻貝との同居だが、しかし金魚って性格悪いね。ヤマトヌマ用の餌まで全部喰ってしまうばかりか、ヤマトヌマや石巻貝まで突ついて食べようとする。金魚のエサと「ヤドカリ・ザリガニ・カニのエサ」で育っている、ヘンな奴。日がな一日60cm水槽の端から端まで全力で泳いではターンを繰り返している。落ち着きないことこのうえない。
(06.01.13撮)

↑生後半年。体色もずいぶん赤みが強くなった。
(06.04.05撮)

←半年経って、8cm程に。撮影前日、三匹いたヤマトヌマエビのうち一匹が、水槽外で干し海老状態で発見された。お前、追い回して跳ね出させたな。残り二匹は迷惑そうにしつつも健在だったが…。
(06.04.05撮)
←拾丸よ。わたしは、ショップでエサ金(小赤)として売られている、お前さんの同類をよく見ているのだけれど、古代魚の水槽に入れられ、必死で逃げ回っているさまを思うに、キミはなんとノンキで贅沢な日々を送っていることよ。しかしショップの小赤って、どうしてあんなに真っ赤っ赤なんだろうね?
(06.04.05撮)
←こちらが最近の様子。もはや10cmに近い。二匹残っていた老ヤマトヌマエビの姿は、4月の中旬にフト見えなくなった。おひろい、オマエとうとう喰ったな。
(06.05.11撮)
←トメ子の場合はもっと小さいときから、本水槽で親どもに揉まれながら一緒に暮らしたわけだが、おひろいはずっと一匹育ち。そろそろ菌魚水槽に放り込んで、世間とはこういうキビシイものだ!という教育を施したほうが良いのかもしれない。しかし、おひろいの無垢なカラダが、あの強烈なバイ菌に堪えられるかどうかがちょっと心配である。
(06.05.11撮)


 最後に、くどいようだがお断りを入れておこう。当欄、開始時からのなりゆきで、総タイトルが『金魚と淡水魚の飼育』となっているが、この「飼育」とは『正しい飼い方』という意味ではないので、その点、誤解されませんよーに。最近は、検索エンジンから文中に飛んで来て、状況が良くわからないまま「飼育の参考」にしてしまう人が増えたようだ。ノンフィクションではあるけれど、ここは、偏屈飼育者の『菌魚太平記』ですよ〜。真面目に参考にすると、不幸になりますよ〜。


↓「今回はこれで終わりだよ〜バイバイ!(段平)」(06.05.11撮)
2006/05/21 (Sun)

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