金魚と淡水魚の飼育
23話
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父さん金魚、突然の下半身マヒ



神妙に病気療養中


 3月の声を聞き、いよいよ春めいてきたのだけれど、水槽はなかなかのんびりとはさせてくれない。先週、雄金魚ばかり6匹が住まう60cm水槽「海軍兵学校」に突然異変が起こった。この水槽の親玉、通称「オヤジ」が衰弱して泳げなくなってしまったのだ。この出来事は早速「ぼやコラ」(2月28日:下半身(?)不随)に書いた(今後も緊急の事件が発生した場合は「ぼやコラ」に発表してゆきますので、そちらのほうも覗いてみてください)が、平日は仕事があり処置を施す時間がとれないので、エアレーションを強めにし、水温を1℃高めに設定するのみで週末までの存命を祈った。

 この雄金魚、我が家の金魚たちの中の初代の雄で99年5月15日にやってきた。20cm以上に育ってしまった2匹の雌がいるので、これ以上はダメだと言っているにもかかわらず、息子が縁日で掬ってきてしまった2匹の雄金魚である。当初はあまりにも体格が違うので、60cm水槽を導入して余ってしまったニッソールームメイト901Nを再び設置して、ヤマトヌマエビ、ヒメツメガエルなどと共に大きな雌金魚と別けて飼育していた。が、いろいろすったもんだ(当金魚コラムの前のほう参照)のあげく、75cm水槽の導入時に30cmに育った「東王」と混泳させたとたんに「ちいさな父親」になってしまったヤローである。目次ページ上部の「金魚」の画像はその頃の水槽の様子である。この2匹のうち産卵後に精子の放出が確認できた個体が、今回病気の「オヤジ」であり、ただサカッていただけの情けない雄を「おじさん」と呼んでいる。現在は少し「おじさん」のほうが大きいが、どちらの雄も3年で17cm程に成長した。「オヤジ」は15匹の2代目たちにとっては絶倫なパパであり(孫も1匹いるけれど)かつ兵学校の教官でもある元気者なのだ。

 さて、その暴れ者の「オヤジ」が突然水槽の底に着底したまま動かなくなってしまった。なにしろ「海軍兵学校」のことである。他の5匹は今日も今日とて激しい追いかけあいを行う。普段率先して、というよりキックオフをかけているのが「オヤジ」だから、弱っていてもどんどんタックルが来る。弱ったとみるや、いつもの仕返しとばかりに、さらに激しい攻撃を受ける羽目となった。
 さすがに心配になり注意深く観察をしてみると、動きに力はないものの口、鰓、胸びれは正常なようだ。腹から後ろ尾びれにかけてが、どうやらマヒしているようでうまく動かせない。浮上性の餌を投入すると、水面のほうへ上がろうともがくのだが、下半身に力が入らず途中で沈んでしまう。数回チャレンジしていたが疲れたのかそのうちに諦めて再び着底してしまった。水質・水温もとくに問題はないようで他の金魚たちはいたって元気。本格的なメンテナンスの時間がとれないので、とりあえずパワーフィルター内部のみ清掃・点検して週末の訪れを待つことにした。
 しかし金魚に「下半身不髄」なんてあるのだろうか? 飼育法の本を見ても、メジャ−金魚サイトにあたってみても、そんな病気や治療法の記述はない。激しく追いかけあうはずみに、頭がストレーナーの角にでも激突して脳障害? まさかねえ。
 やはり昨年11月、2匹の病死魚をだした「水カビ病、海軍兵学校を急襲!」の折の後遺症が出てきたと判断した方が正しそうだ。当の「オヤジ」も重傷で右眼のレンズが白く濁ってしまっていた。それが尾を引き、なんらかの理由が重なって体力が減退し機能障害が現れたのかもしれない。

 さあ週末がきた。オヤジは相変わらずの着底動かずのままだが、幸い死ぬことはなかった。しかし衰弱は一段とひどくなっている。どう対処しようか悩んだが、前に書いた「水カビ後遺症」の線で行くしか手がない。
 水槽内のサブフィルター「ワイズPF320」の濾材を洗い、水を半量交換した。外部パワーフィルターに、台所にあった「備長炭」を少量失敬して適当な大きさに割り「バクターセル」とともに入れてみた。水交換の際底砂をかき混ぜないように注意した。最後に麦飯石溶液を投入。水質が安定するまでしばらく待ってから様子を見ることにして、その間75cm水槽をメンテする。

 2時間ほど後、覗いてみると、なんとオヤジはやや元気さを取り戻してきたではないか。フラフラではあるが底から離れ、やや浮き上がったところに停止している。餌を入れてみると自力で水面まで上昇しパクリと食った。そうしてまた底の方に落ち着いて咀嚼している。水替えで回復したのだとするとやはり見た目にはわからないが「水カビ」が繁殖しつつあったのだろうか。
 とにかくひと安心である。が、今度は兵学校の日課の「教練」が始まった。他の5匹がもの凄い速さでグルグル回遊をやりだした。底からやや浮き上がったオヤジは、鼻先で押しまくられなされるがまま。ときおり泳いで底部に逃げるのだがすぐに捕らえられ、突き押しまくられている。せっかく回復に向かいつつあるというのにこの状態が続くと元の木阿弥だ。病中の教練は非常にまずい。大きく体力を消耗してしまう。
 そこで仕舞ってあった「セパレーター」を取り出してきて、水槽内を2つに分けることにした。75cm水槽用の残りを60cm水槽の高さに合わせカットして4分の1のスペースを区切り、「オヤジ」のみをそこに入れた。これでオヤジは、他の猛者連中の攻撃を受けることなく病気療養に専念できるようになったわけだ。まだまだ本調子にはほど遠い体調で予断は許せない。とりあえず現在は、狭いそのスペースで神妙にしている。こちらは容態の観察を怠らず、今後も水質を細かくチェックすることにしよう。

 たまたまあって重宝した、このセパレーターだが、もともとこれは「東王」に対する「オヤジ」の悪行が眼に余るので、たまらず導入した一品なのである。その後水槽を分けたので不要になっていたのだが、今度は自分の療養のために再び世話になろうとは、オヤジ本人もさぞかしバツの悪い思いを感じていることだろう。
 ま、自業自得だな。


←セパレータで4分の1のスペースに隔離された「オヤジ」(右)。ラグビー教練に巻き込まれぬための処置である。このオヤジとおじさんの兄弟分の特長は尾びれが特別に長いことだ。形は普通だから、幼少時から2匹でずっと続けてきた「教練」の賜物かも知れない。
←海軍兵学校の日課、激しい教練で5匹が「モ−ル」状態。それを尻目にして、衰弱しているオヤジは呆然と漂っているのみ。
「いつもならオレ様が主役なのに…」
←兄弟分の「おじさん」がセパレーター越しにお見舞い。
しかし、オヤジの背びれは元気なし。

「どないだ、具合は?」
「あかん、しんどい」
「早よ、治しや」
「ああ、ぼちぼちな」
「治ったらまたバトルロイヤルやろうや」
「……。」
「わしらの水槽にも女、欲しいなあ」
「……。」

↓75cm水槽の悪循環。トホホ。
掃除・水替え→水質変化→刺激→発情→産卵→死卵の腐敗→水質悪化→掃除・水替え。
2002/03/03 (Sun)

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