金魚と淡水魚の飼育
13話
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幼魚たちのはなし

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←75cm水槽の金魚
母金とともに泳ぐパワーフィルター内で孵った
「生まれつき体の不自由」な幼魚たち。

 昨暮から、たてつづけに孵化した金魚たちはふたつの水槽で、ほぼ半数ずつ、親とともに元気に泳いでいる。

 60cmの水槽には雄の親魚2匹と、最初のほうに孵った幼魚10匹。こちらのほうの幼魚はどんどん大きく育ち、たびたび紹介した「ハンニバル」などはもはや体長が10cmに近い。
 親たちと同様すこぶる付きの暴れ者どもで、親子12匹で「ゴンズイ玉」をつくり、激しく泳ぎまわり、追い掛けあっている。
 おかげでこちらの水槽の水草は、植えるなりたちどころに毟られ引っ張られ、散乱してしまう。
 巴のかたちに2匹が互いの尾を追い合いグルグル円を描くように猛スピードで回転するものだから、敷砂も擂鉢状に穴が開いたようになって、ガラスの底が露出してしまうほどだ。
 おとなしいのは眠っているときだけ。さすがにこの時は2匹の親魚を中心に、皆同じ方向に頭を向けて、ひと塊になって動かない。
 まるで「呉に帰港中の連合艦隊」みたいだ。
 それ以外の時は、さながら「体育会ラグビ−部」の合宿状態。激しい当り合いで、それぞれの鱗はところどころ剥げ、傷だらけ。
 それだけ運動するものだから、みんな大食漢で、餌を与えてもあっという間に平らげてしまう。それだけに、色艶も良く、元気そのものである。
 だからこちらの水槽には、心配事が少なく手もかからない。ただこのまま全員、大きく成長したら一体どうすんだ?というのが心配ではあるが。

 一方、75cm水槽の方は、雌の30cm超級親魚1匹と幼魚9匹が泳いでいる。
 こちらの幼魚は、最大の物でも5cmに満たない。後期に外部パワ−フィルタ−内で孵化していたものたちだ。9匹のうち8匹は、すべて生まれつき体の機能になにかしらの障害がある。
 最大の障害魚は、生まれつき片眼が無く、鰓蓋も片側が大きく外に開き、スリット状の鰓が剥き出しになっているうえ、背骨もゆがんでいる。
 少し前までは両目とも無い個体もいたのだが、これはさすがにすぐに死んでしまった。
 この片眼の幼魚はまっすぐには泳げないのだが、他の幼魚たちに混ざって元気ではある。
 他5匹は片眼の幼魚同様、片鰓もしくは両鰓が露出しており、背骨も歪んでいる。
 そして2匹は、口の部分が小さく潰されたように変型しており、丸く大きく口を開くことができない。当然、餌を丸呑みすることはできず、底に散らばった餌の破片などを啄んで食事をしている。満足に餌を採れないので、この2匹は他に較べ体が、ふた回り以上小さい。栄養失調気味である。
 残りの1匹は、体は小さいものの完全に健常なだけでなく、非常に美しい幼魚だ。フォルムが金魚よりパラタナゴに近く、体幅も薄くスマートな個体である。目立って美しいので、この「障害者水槽」のナ−ス的役割を持たせるべく泳がせている。

 パワ−フィルタ−内で孵化したこれらの稚魚たちは数日気付かれることなく、濾剤に引っ掛かったり挟まったりしたまま暗闇の日々を過ごした。
 清掃の折に拾い上げられたとはいうものの、やはり体に何がしかの損傷があったのはやむを得ない。まあ可哀想な出自の金魚たちである。
 体長30cmを超えた雌は、御老体のせいか、常に健康状態に不安を抱えている。水カビ、大量の糞、皮膚病、外傷などだ。それでこちらの水槽は、こまめにチェックをせざるを得ない。「生まれつき体の不自由な幼魚」たちも同様なので、手の掛かる巨大な母魚のいる、広い75cm水槽で泳がせているというわけだ。
 でも、中には片鰓が不全ながら、母親の外傷である口部分の剥けた皮膚を、ちゃっかり突ついて食べることを日課にしているものもいる。母魚はいやなようで、振り払おうとしているが、なんだか「サイとサイチョウ」の共存関係を見ているようで、微笑ましく思える。

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↑生まれつき片方の目がない「メッカチ」君。目があるほうの体側の鰓蓋もめくれている、いちばん重症の個体。 ↑鰓蓋が外がわに開いてしまい、鰓がむきだし。片側だけのものと、両側ともに開いている個体がいる。6匹にこの症状が見られる。 ↑口が変形して、大きく開くことができない。ごくちいさな餌しか、食べることができないので、この症状の2匹は成長がきわめて遅い。


↓とはいえ、みんな元気です。
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2001/05/20 (Sun)

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