おかやどかりの飼育

19話
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オカヤド新郵便局舎 ―濡らした流木でドライ飼育を―

↑ようやく出てきた局ヤド二匹。左が1号。右は宿替えした2号。
なんかチャーハンのなかにいるみたいだな。

 うちの宿六と郵便局ヤドを分けて二世帯住宅にしたとたんに砂に潜ってしまい、それっきり一向にでてこなかった郵便局疎開ヤドカリたちだったが、20日ほど経ってようやく一匹お出ましになった。その間、昼間はもちろん夜にも出てきた形跡が見当たらなかったので、多分三匹とも脱皮であろうと判断し、餌も取りだしてしまい、砂にも触れずにキリフキだけをしておいた。

 最初に出てきたのは、逓信2号であった。湿気でガラスが曇りよく見えなかったのだが、体色が赤みがかっていたので、てっきり、ポスト名無しちゃんだと勘違いしたのだが、その後、入れておいた宿六着古しのコシダカサザエに宿替えしたので、脱ぎ捨てられた貝を確認したところ「2」の数字が。2号はその後も、元の貝殻に戻ったり、入れてある他の貝殻を覗いてみたり熱心であるところをみると、たぶん無事脱皮を終えて今までの貝殻が窮屈になったのだろうと思う。まずはメデタシ、だ。

 2号から遅れること数日、こんどは郵政1号のお出ましだ。ほぼ1ヶ月潜ったことになる。こちらも脱皮成功のようだ。2号はかなり臆病なのだが、1号は驚いて引込んでもすぐに出てくる勝ち気な奴だ。空いた貝殻をさかんに覗き込んでいるが、2号に先を越されてしまったので小さめのものしか残っていない。ハサミだけ突っ込んでみて宿替えを諦めている様子だ。二匹とも、水分や餌を補給した後、再び潜ってしまう可能性がある。先住者の宿六などは、暖かい昼だけ砂から出てきてあたりをうろつき、冷え込む夜は砂に潜るという面倒くさい毎日を送っている。

 郵便局のヤドカリのことを当欄でレポートしたら、早速飼い主の郵便屋(HN)さんが、BBS(偏屈酒場)に書込みをしてくださった。レスをくり返すうちに、郵便屋さんの局ヤド達に対する思いの深さを感じた。こりゃひと冬預かるのは永すぎてさみしかろうし、なんだかわたしのほうが拉致しているような感じでもある。金正○まがいはよろしくない。そこで、ひと通り脱皮が完了した頃合いに、砂を入れたケースを仕立て、帰局していただくことにしたのだ。

 「ふるさと小包」の昆虫ケースでは、底面積の少なさが気にかかる。そこで、使っていない「テトラ金魚飼育セット」のケースがあったので、こちらに新居をセッティングすることにした。ま、これでも三匹の飼育には手狭なのではあるが。付属のフタは、ワンタッチフィルター部分が切り取られているので長さが足りない。そこでまたぞろセパレーターをハサミでちょきちょき切り取って接着剤で継ぎ足した。しかしこのフタ、テープか重しで固定しておかないと確実に脱走者がでるなあ。
 
 オカヤド舎局ヤド区域にあったガジュマルの挿し木をテトラケースに移し、これも余分があったサンゴ砂を洗って敷いた。郵便屋さんの書込みによると、局内にあるPC端末が常に熱を発しているらしく、その側に置けばヒーターは不要と思われたので、とりあえず砂だけだ。まあ寒ければ潜って凌いでくれるだろう。余り物ばかりで恐縮だが、流木も小さいものがあったので設置する。

 わたしの流木の使い方は、砂を湿らせずに飼育するために、流木を水や塩水に浸けてからケース内に置くことで水分を供給するという方法。砂を直接濡らせてしまうと不潔になりやすく、チャタテムシなどが湧きやすい。もちろん別に水入れの容器は設置する(この容器に流木の一部が浸かるようにしておくと、毛管現象で吸い上げて常時湿るので都合が良い)。また、水を与えるときは流木のみに十分湿るまで注すようにしている。オカヤドカリは濡れた木の肌に吸い付くようにして水分を取る。蜜に集まるカブトムシみたいで愉快なのだ。

 さて、オカヤド郵便局舎の準備は整ったが、最後の一匹、「ポスト名無しちゃん」がでてこない。今日(30日)で、ちょうど地底生活30日目である。大丈夫かなあ、名無しちゃん。うちの宿六のマドンナ、名無しちゃんの無事を祈ろう。


↑とりあえず、砂を入れた新オカヤド舎を下見していただく。
モデルルーム内覧会、といったところか。中古住宅だがね。

←約一カ月間ひっそり静まり返っていたオカヤド舎郵便局ヤド仮設スペースだが、2号と1号が無事脱皮を終えて登場。ガジュマルの挿し木は新ヤド舎へ移転させた。
左奥を「郵政1号」が歩いている。
←襾陽のなかで遊ぶ、「郵政1号」(下)と「逓信2号」(上)。
2号は空いていた貝殻(先住者・宿六の着古し)に宿替えした。
←ガジュマルの挿し木のたもとで水を飲む「1号」。
ハイドロボールも水場としての役割を果たしてくれる。
←「2号」(左)が早々と宿替えをしたので、自分の変わるべき貝殻を先に取られてしまい、途方に暮れる「1号」(右)。
残っている貝殻は、やや小さめのものと、デカすぎるものしかないのである。
←モデルルーム内覧会のようす。
最初のうちはキレイなもんだ。人間の家も同じ。住みだすとすぐにグチャグチャに。
どうですかねえ?お三方には、ちと狭いワンルームですが、我慢してね。
↑水に浸した流木を入れて完成。
温度計の吸盤はヤドに齧られて吸着不可。全部中古でどもすみません(左写真)
テトラキンギョ飼育セットのフタはフィルター部分が欠いてあるので、
セパレーターを利用して継ぎ足した(右写真)

触角をつかって眼を拭く「1号」。オカヤドカリの愛嬌ある仕草のひとつだ。↓
2002/11/30 (Sat)

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