◯ 初冬の兼題は「酉の市」「石蕗の花」「冬の空」です。

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【酉の市】
酉の市店には勝る大熊手        天天地      菫女
酉の市大きな手締めのぞき込む     天天地      山女
酉の市手締めを遠く聞くばかり     天天       芝浜
酉の市喧騒を抜け闇に入る       天地人      音澄
一家言聞き流しつつ酉の市       天地       出船
高く持つおかめの震へ酉の市      天人人      仲春
酉の市小判が落ちてる石畳       天人       雪童

【石蕗の花】
猫くぐる塀のほころび石蕗の花     天天天地地地   出船
墓守は寂しがり屋の石蕗の花      天天人      芝浜
父眠る切り立つ岬石蕗咲いて      天人人      好喜
古屋敷庭らしきをる石蕗の花      天        山女
造船所庭広々と石蕗の花        天        仲春
品書きに色を添えるや石蕗の花     天        呑暮
名は知らじ石蕗の花くるる人      天        呑暮

【冬の空】
冬空に足を突っ込め逆上がり      天天人      好喜
革靴のリズム吸い込む冬の空      天天人      呑暮
冬空に竿を渡して喪服干す       天天       仲春
曲線に傾く電車冬の空         天地人      酒倒
低く出て低く陽の入る冬の空      天地       音澄
鉄扉手に息吹きて冬の空        天人       雪童
冬空や十字架汚す鳥の糞        天        仲春


★小間使いさんから--------------------------------------------------------

 いつもと、少しタイミングが違った出題・選句で、
 うまく詠めなかった方や、選句を忘れてしまった方がいました。

 さて、来月はもう今年最後の句会です。
 それぞれの事情で長く休んでいる方、実は
 満を持して復帰のタイミングを見ている方、また
 そろそろ俳句に戻るかという方、ぜひご参加ください。
 年の初めからなど、キレのいい時期にするとかえって
 三日坊主になります。などと、下手な誘い方、あはは。

 ではでは 風邪などお召しにならないように 小間使い


◯ 晩秋の兼題は「十月」「公孫樹散る」「新酒」です。

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【十月】
十月やうねのこすれたコーデュロイ   天天天天地    音澄
大伽藍十月の空切り取りて       天天地人    雨不埒
十月の淡き影踏む海にをり       天天地      磨角
十月の雨踊り出す池之端        天地地人人   雨不埒
十月の暮れの早きを肴にし       天地地      呑暮
十月や自転車の風首すくみ       天地人人     雪童
十月を匂いて犬は空を知り       天人人      出船
十月は黄昏の国長き影         天人       芝浜
花の種揉み蒔き散らす十月の庭     天        山女
十月の庭は名知らぬちさき花      天        菫女

【公孫樹散る】
散る公孫樹膝にあつめて足湯かな    天天天      仲春
公孫樹散る世界一周さかあがり     天天地      青羽
公孫樹散る踏みつよけつつ老夫婦    天天地      好喜
職場去る毅然たるひと公孫樹散る    天地人人     出船
それでいいそれでいいよと公孫樹散る  天地人      即馳
片想ひおほいつくして公孫樹散る    天地       芝浜
走り行く車にスタンプ公孫樹散る    天人       山女
夜通しの風に銀杏の裸体かな      天人       風写
天空に線画を描き公孫樹散る      天人      雨不埒
公孫樹散る渡り廊下の三人衆      天        磨角
澄む朝の路面も見せず散る銀杏     天        風写

【新酒】
憂き節も胃の腑に落とす新酒かな    天天地地人人  雨不埒
膝小僧くっつく席の新酒かな      天天人      磨角
表情の硬き杜氏の新酒唎く       天地地地地人人  音澄
新酒酌む猪口選びつつ夕間暮れ     天地地      好喜
清貧も壺覗きこむ新走り        天地       風写
酒林くぐりて多摩の新酒きく      天地       菫女
新酒得て早めにつかる湯舟かな     天人人      仲春
新酒酌み過ぎて無体な自己主張     天人       酒倒
杉玉を見て購いし新酒かな       天        酒倒
風土濾し新酒の風味ほのかなり     天        即馳
定番の説教かわし新酒酌む       天        好喜
新酒かな杯わたる風香る        天        山女
新酒の会一斗で居並ぶ恵比寿さん    天        雪童


★小間使いさんから--------------------------------------------------------

 うっかりでしょうけれど、
 「湖面に沈む」という句がありました。
 沈むなら、湖底ではないでしょうか。
 湖面であれば、浮かぶか映るか。
 詠む人も選ぶ人も、もう少し注意深く。

 それから「五七五」になっていない句が多いです。
 私のスタイルはそれだ、といわれればそれまでですが
 韻文の俳句は、まず五七五にととのえるのが基本。
 山頭火も放哉ももとは五七五の句を詠んでいます。
 推敲を重ねてなお五七五にならないのかどうか、
 ぜひ切磋琢磨を。

 台風が去り、秋が深まり。次回はもう初冬の句会です。


◯ 仲秋の兼題は「初雁」「青蜜柑」「秋の田」です。

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【初雁】
初雁の鳴きて仰いだ空の碧       天天地地地   岩牡蠣
初雁の点描失せし虚空かな       天天地      出船
初雁をいそぎ描き足す水彩画      天天人人人人人  音澄
空を切る一列ゆるり雁渡る       天天       山女
雁が音や湖面に降りて昇る月      天地人人     風写
はつかりの飛行機雲と交錯し      天地人      酒倒
初雁の夕空の元魚焼く         天地人      菫女
阿武隈の翳濃き雲に雁渡る       天地       仲春
初雁や国境の無い地球旅        天人人     雨不埒
初雁や行く先示す渡りかな       天       雨不埒
初雁や指差す吾子の三輪車       天        青羽

【青蜜柑】
青みかん世間話の手に転ぶ       天天天地地地   酒倒
青みかん揉みつ睨むや将棋盤      天天地地     青羽
青みかんマニキュアの爪香りづく    天天地人人人   山女
路線バスすれすれ通る青みかん     天天地人人    仲春
青みかん暦に赤の増える月       天天地      呑暮
見え隠れ葉裏に恥じて青みかん     天地人      風写
四度目の縁談来たり青みかん      天地人      好喜
諍いの声消え夜半の青みかん      天        出船
ジョギングに目覚めたる朝青みかん   天        出船

【秋の田】
秋の田や風の姿を写しとり       天天天地地    即馳
秋の田の西に汽水湖ひかり満つ     天天地地地    音澄
秋の田や空の境に実りあり       天天地地人    呑暮
秋の田の干す穂に隠れ子ら遊ぶ     天天      岩牡蠣
秋の田や田を継がざりし子の負い目   天地地人人人   仲春
稔田や幾千本の風の道         天地人人人    好喜
秋の田の黄金の風や笛・太鼓      天地人      風写
秋の田や幼なじみのかげぼうし     天人       青羽
秋の田や口笛吹けば風歌う       天        呑暮
秋の田や影になるまで刈ってをり    天        仲春


★小間使いさんから--------------------------------------------------------

 ナマイキですが苦言を。
 選句が少し安易な気がします。「私がいいと思ったんだから、いい」
 のですが、俳句として変な句、また、同じ着想の有名な句がすでにある句。
 想像句の「想像が」現実離れしすぎている句が選ばれています。
 選句の力をつけることが俳句上達の道と教わりましたし、多くの宗匠が
 そう言っています。はい、ナマイキな苦言でした。


◯ 初秋の兼題は「立秋」「蕎麦の花」「盆荒れ」です。

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【立秋】
青々と峰立つ筑波や今朝の秋      天天人      風写
立秋やペンキ塗り替ふ貸別荘      天天       仲春
秋立つや薄縁のくも山を斬り      天天       酒倒
立秋や蕎麦屋にふらり昼の酒      天地地人     酒倒
秋立ちぬ朝餉の前の八千歩       天地地人     好喜
諳んずるおぼろげ李白秋来る      天地人人     即馳
老い猫に秋が来たとは知らせおき    天地人      音澄
立秋や腰折り上る九段坂        天人人      呑暮
立秋の旅検札のゆくり過ぐ       天人       出船
庭に出て煙草は旨し秋立ちぬ      天        星目

【蕎麦の花】
婆さんの打てる分咲く蕎麦の花     天天天地人人   音澄
方言の横をすり抜け蕎麦の花      天天天      雪童
雲掃きて山広がるや蕎麦の花      天地地人     青羽
礼服の列に真白き蕎麦の花       天地       好喜
蕎麦の花背にほほえむや道祖神     天人       青羽
暮れ早き里曲の蕎麦の花灯り      天        磨角
風渡る会津の雲と蕎麦の花       天        好喜
里人は信心深し蕎麦の花        天        仲春
蕎麦の花野に幾万の小さき雲      天        呑暮

【盆荒れ】
盆波や沖に一吠え主待つ        天天天天     呑暮
盆時化を見下ろす女花投げる      天天天地     即馳
盆の波網繕う手節くれて        天天       山女
盆荒れの浜には寂しゴム草履      天地地      星目
盆荒れに瀬戸の小島の揺らぐかな    天地人      仲春
盆波の千々にくだけて霊おくる     天人人      芝浜
盆時化に竿はしまって缶ビール     天        星目


★小間使いさんから--------------------------------------------------------

 好喜さんのお知り合い、星目(せいもく)さんが初参加。
 初心者と言いつつ、「天」を取っている。ただならぬ俳人か?

 異常気象らしい日々が続き、そこここで被害が出ています。
 お気をつけください。
 ゲリラ雨を俳句にしようと、川の近くに行ったりしないように。

 ではでは 次回をお待ちください。


◯ 晩夏の兼題は「送り梅雨」「蟹」「メロン」です。

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【送り梅雨】
送り梅雨靴を片手に父帰る       天天地地地人   雪童
送り梅雨白身魚を薄く引く       天天人人     呑暮
紺碧の足爪晴れて送り梅雨       天天       即馳
点滴を横目に外は送り梅雨       天地人     雨不埒
天職を求めあぐねて送り梅雨      天地人      出船
その後の言葉無くして送り梅雨     天地       磨角
濁流に赤いボールや送り梅雨      天        仲春
信濃路を別れて揖保路や送り梅雨    天        風写
送り梅雨片道だけの旅支度       天        出船
送り梅雨猛けて聴こへぬ波の音     天        仲春

【蟹】
干されたる茣蓙に蟹這ふ釣の宿     天天天天天天人人 仲春
入日影白き腹見せ蟹死せり       天天地地人    出船
小走りの蟹につけたし万歩計      天天人人     好喜
沢蟹の背なや赤々透ける水       天天人      風写
一筆と友から届き蟹二杯        天       雨不埒

【メロン】
駅前の目付き鋭きメロン売り      天地地地地人   呑暮
退職を決めし夫にメロン切る      天天人      仲春
頭数八揃ひたりメロン切る       天地人人     菫女
文机や宛てる漢字のないメロン     天地人      酒倒
初物を供へてメロン農家かな      天地       仲春
父食はぬメロン団らん不在の日     天地       好喜
メロン匂ふ夜の隙間に忍びこみ     天地       磨角
熟してもウリ科の匂いメロンかな    天        音澄
五日見てずしりと掬うメロンかな    天        出船
裏門を押される嗅がれるメロンかな   天        風写
ごめんメロン匙を差し出し兄笑う    天        即馳



◯ 仲夏の兼題は「五月川」「柏餅」「桜桃忌」です。

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【五月川】
単線の音高く越ゆ五月川        天天天天地地人  磨角
山の香を里に運ぶや五月川       天天天天     青羽
五月川大阪平野を二分して       天地地     岩牡蠣

名も知らぬ花くるくると五月川     天地人人人    青羽
なけなしの雨を集めし五月川      天地       呑暮
五月川田の隅々まで水渡る       天人人      山女
五月川おっとり刀の消防団       天        音澄

【柏餅】
孫五人太郎ばかりや柏餅        天天天人     仲春
挫けし日母のまあるき柏餅       天天人      好喜
柏餅葉の香なつかし祖母の家      天地地人    岩牡蠣
玄関に伯母の残り香かしわ餅      天地地      酒倒
笑んで喰む吾子のほっぺや柏餅     天人人      青羽
年寄が並ぶ店先柏餅          天人      雨不埒
それぞれに柏餅買ひ別れけり      天        磨角
卓袱台の布巾の下の柏餅        天        芝浜
曇天も部活掛け声柏餅         天        見燗
柏餅味噌餡足らず剣呑に        天        音澄

【桜桃忌】
終活や古書も荷造り桜桃忌       天天地地地地   雪童
とつとつと降る雨太し桜桃忌      天天人人     見燗
太宰忌や文学少女枯れにけり      天地人      仲春
背広ひとり茶屋に居りたる桜桃忌    天地       見燗
降りるべき駅を過ぎをり桜桃忌     天地       磨角
死ぬことをひらりかすめる桜桃忌    天人人      青羽
棚奥へ深く沈めし桜桃忌        天人       風写
止まり木に弱虫見つけ太宰の忌     天人       好喜
月曜がのそり始まる桜桃忌       天        呑暮
駅前の書店で知るや桜桃忌       天        青羽
赤みどりソーダに沈む桜桃忌      天        芝浜


◯ つぶやき再録 ◯

★音澄さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

「五月川」は、五月雨が毎日降り続くと、川は濁り水の量を増し、岸の葦叢を浸し流さんばかりの光景になる。(角川俳句大歳時記)
ということで出題してのですが、なじみがなかったか、少々受け取り方に違いがあって、五月の穏やかな川面を詠んだ句もありました。

【五月川】
・単線の音高く越ゆ五月川
・五月川大阪平野を二分して
・五月川田の隅々まで水渡る

【柏餅】
・孫五人太郎ばかりや柏餅
・柏餅そっと食みたりピアスの子
・かしわもち戦時は餡も餅もなく

【桜桃忌】
・太宰忌や文学少女枯れにけり
・終活や古書も荷造り桜桃忌
・止まり木に弱虫見つけ太宰の忌

柏餅の「孫五人」がみんな太郎という句は、なんでもない句に思いましたが、五人の孫が元気にワーワーいっている風景を描くことができて、山盛りの柏餅なんかが卓上にあるんだろうなぁ、と思うとじわじわいい句になっていきました。
ピアスと柏餅、意表をつかれました。
「桜桃忌」は、太宰という作家の人物像が行き渡り、固定していることがわかりました。固定されてしまった太宰像からポンと飛び出した句がなかった。
 桜桃忌の句に「種植えり」という下五がありました。種は蒔くものではありませんか。やや違和感ありでした。植えるのは苗木、苗でしょう。

 大雨の被害はなかったでしょうか。


◯ 初夏の兼題は「新緑」「水母」「焼酎」です。

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【新緑】
新緑に瀬戸の島々肥えてをり      天天天地地地   仲春
新緑の影立ち尽くし樹木葬       天天地      出船
新緑や梯子でのぼる秘密基地      天地地人人    仲春
新緑を軽きペダルで追い越せり     天地人人人    出船
新緑やスパンコールの風に揺る     天地人      酒倒
新緑の香り塗りこむ写生会       天地       青羽
新緑や樹々のみどりの陣地取り     天人人      好喜
新緑や酒断てぬ友永眠す        天        音澄
新緑を集めて落とす華厳瀧       天        風写
新緑に昭和歌謡が口をつき       天        音澄

【水母】
高架下貴様と歯茎で噛む水母      天天地人     酒倒
透けながら見えぬ命の水母かな     天地地地地人人  音澄
美ら海の水母の群れに迷い込む     天地人      山女
ケセラセラ波に凭れて寝る水母     天地人      仲春
満ち潮の濁りに見えてみな水母     天地       音澄
漂ふて流るるこの身や水海月      天地       風写
子ら連れて水母気にした日々遠し    天人       酒倒
海中に雨や降るるか水母傘       天人       風写
舞ふ水母欲が無いから透き通り     天        仲春
夢もなくさめもやらない水母かな    天        凛語
大海月ふわりと平和牽引し       天        好喜
くらげ伸びくらげ縮みて館暗し     天        菫女

【焼酎】
焼酎に付き合ふてみる紅一点       天天天地人   菫女
焼酎や米麦芋と南下旅          天天      音澄
焼酎や玄界灘に舟ひとつ         天天      酒倒
焼酎とともに流るる心隈         天地地     即馳
夜更けて焼酎瓶の仁王立ち        天地      出船
バス旅行水筒ふたつ湯と焼酎       天地      仲春
焼酎や寿司屋の湯呑みと父の指      天人      青羽
しょちゅうまか下戸のせごどんてげぐらし 天人     岩牡蠣
焼酎をぐずぐず飲んでちょっと美人    天       仲春



◯ 晩春の兼題は「春暑し」「桜草」「みどりの日」です。

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【春暑し】
黒スーツ女子大生の春暑し       天天地人     菫女
春暑し納屋の片づけ秋に延べ      天天       酒倒
捨て犬に懐かれてゐて春暑し      天地地人人    仲春
告白の言葉は乾き春暑し        天地地      即馳
春暑し少し濃くしてジンライム     天地人人     音澄
春暑しTシャツの腕白いまま      天地人      山女
浅煎りの珈琲豆や春暑し        天地       音澄
春暑しサンダル履きの教頭さん     天人人      芝浜
春暑し気息わき出す土の下       天人       菫女
春暑し腕立て伏せに軋む息       天        出船

【桜草】
野を染めて富士浮かせたり桜草     天天天地人    風写
文庫本ひらけばいつかの桜草      天天人      芝浜
青空を気球が行くよ桜草        天天       酒倒
新婚の窓に刺繍とさくら草       天地地地人人   仲春
煙草屋の店番いづこ桜草        天地地      酒倒
退院の荷物のひとつ桜草        天地人人人    仲春
返信を少し焦らして桜草        天人       磨角
独居老愛づるチワワと桜草       天人       菫女

【みどりの日】
単線の稀な賑はひみどりの日      天天天天人    菫女
風焦がすソーラーパネルみどりの日   天天人人     好喜
三代の号を跨ぐやみどりの日      天        酒倒
土の香や子等にも嗅かす緑の日     天        風写
知らぬ間に添い寝の猫とみどりの日   天        出船
みどりの日みどりに濡れる赤子かな   天        芝浜
縁側にぽつんと帽子みどりの日     天        好喜
みどりの日ゆるりゆるりの時と酒    天        出船


◯ つぶやき再録 ◯

★呑暮さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【春暑し】
天 春暑し腕立て伏せに軋む息
地 春暑しTシャツの腕白いまま
人 春暑し少し濃くしてジンライム

「人」のジンライムは何を濃くしたんでしょうね。ライム? なわけないですよね。いや、この前、「緑茶ハイの緑茶多め」と頼んでいた人を見たものですから。

【桜草】
天 野を染めて富士浮かせたり桜草
地 煙草屋の店番いづこ桜草
人 文庫本ひらけばいつかの桜草

「地」の「いづこ」は時でしょうか、場所でしょうか。私は前者とみました。たばこ屋の店番歴50年、可愛らしかったあの子が今や見る影もなし。残念。

【みどりの日】
天 風焦がすソーラーパネルみどりの日
地 みどりの日穴から食べるドーナッツ
人 公園の満車の合図みどりの日

「地」のドーナツの穴は、ないことによって存在するという、有名な哲学的思考ですね。5月4日が祝日じゃない頃は3日と5日でドーナツだったんだけど、穴が埋まって3連休になって、各祝日の意味が分からなくなったわけです。


★小間使いさんから--------------------------------------------------

ということで、菫女さんの二冠でありました!!

次回は、もう初夏です。
このところの気候の変化の激しさに
体調を崩さないようにお気をつけください。

ではでは 小間使い


◯ 仲春の兼題は「名残雪」「干鰈」「入学試験(入試)」です。

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【名残雪】
窓越しに交わす目礼なごり雪      天天天地地    磨角
校庭の名残り雪踏む門出かな      天天地人     風写
なごり雪汽車を電車と云ふ輩      天天       酒倒
惜別の今朝北窓の名残り雪       天地地地人    風写
荒行僧うなじに溶ける名残り雪     天地地人     好喜
露天湯に思はぬ馳走名残り雪      天地       仲春
引越しを終えて夜空の名残り雪     天地       雪童
名残り雪ふいの終わりをほのめかす   天人人      出船
陽射しある上野を出でて名残り雪    天人       菫女
人波に消ゆる背中や名残り雪      天人       磨角
青春の光と影に名残り雪        天        音澄
名残り雪明けを知らせるカラスかな   天        見燗

【干鰈】
吉日や骨離れ良し干鰈         天天天地人人   見燗
時止まる置き竿の浜干鰈        天天地人人    呑暮
西風に波静まりて干カレイ       天天       好喜
干鰈島の宝が風に揺れ         天地地人人   愚多楽
鰈干す浜の女の頬被り         天地地      菫女
干鰈売る婆さんの手の乾き       天地人人     音澄
干鰈しゃぶって育つ若狭の子      天地人      仲春
過去捨つる修行の果てか干鰈      天人人      出船
おつまみの駄菓子に探す干し鰈     天        風写
磯の香や浜辺で炙る干し鰈       天        雪童
小包のお国言葉と干鰈         天        小波
灯る窓夜を締め出し干鰈        天        即馳

【入学試験(入試)】
初旅の試練もくぐる入試かな      天天天地     呑暮
受験生一直線なり朝の道        天天地地人人   山女
空を見よ入試とスマホ投げ捨てて    天天人      出船
入試明け今朝から空は我のもの     天地地地人人   風写
教師より老けた顔して入試受く     天地人      仲春
鉛筆の声に聞き入り入試終え      天人人      即馳
おほかたは無言で歩き入試の子     天人       磨角
入試前塾の輪に咲くエイエイオー    天        好喜
入試終え幼き昨日かすむ街       天        出船
鉛筆はすべて新調入試かな       天        小波
わが辞書の入試の項は死語となり    天       岩牡蠣
青春の残滓入試の悪夢かな       天        芝浜


◯ つぶやき再録 ◯

★愚多楽さんの選句とつぶやき----------------------------------------

【入学試験】
天 初旅の試練もくぐる入試かな
地 家中が入学試験で肩が凝り
人 験担ぎする子しない子入試かな

同窓会で中学校の受験番号をまだ覚えている人がいます。
そう言う私も、合格発表で715という番号を見つけた時の喜びを忘れられません。
難しい大学に入っていたら、中学の受験番号なんて忘れて、大学の受験番号を
覚えているんでしょうけど。私の人生、中学合格がゴールだったはずがないと思うと、
まだまだ何かいいことが待っているのではないかと楽しみです。


★音澄さんの選句とつぶやき-------------------------------------------

【名残雪】
・引越しを終えて夜空の名残り雪  天
・いろいろと明日にしよう名残り雪 地
・名残り雪うれしさもある別れの日 人

【干し鰈】
・吉日や骨離れ良し干鰈      天
・江ノ島やこよひあなたを干鰈   地
・干鰈しゃぶって育つ若狭の子   人

【入学試験】
・初旅の試練もくぐる入試かな   天
・教師より老けた顔して入試受く  地
・浪人に包囲されたる受験席    人

「名残り雪」の句は、私個人としては三句とも天でした。まぁ、横並びはしない選句なので、「地と人」の俳人には、ごめんなさい。名残り雪なんて、もう時節は春になっているんだから、フワッと降って、短い感慨を残して消えてしまうのでさらりと詠む句が似合っていると思いました。
干し鰈の「江ノ島」は、三分の一ぐらいは川柳が入っていますが、おかしくていい、と思って選びました。亡くなった逆月さんがよく、皆さん真面目な句ばかりではなくもう少し緩んでもいいと思う、というようなことを言っていましたが、そう思います。
若狭の子が干鰈をしゃぶって育つというのは、まったく意表を突かれました。そういえば若狭鰈の地だものなぁと納得してしまったのですが、ホントウかいな? というところが俳諧の「諧」のあたりでしょう。笑って選びましたね、この二句は。
浪人経験者として現役を囲んだかなぁ、私。実際の現場では、現役の連中が「頭よさそう」に見えるんですけれどね。

イルカの歌のせいでしょうね、名残り雪と別れ(しかも駅頭で)の風景をひとつのものと見た句が多くて、はぁこうなるかと思いました。冬の名残りの雪、あるいはこの雪が最後の雪で春になるなぁ、なのであって、別れにつき物の雪というわけではない。そうそう都合よく駅での別れに雪が降るわけがない、ということで、軽くていい気分の句を私は選びました。
「名残り」という言葉に力がある。だから、似た着想の句が山をなしてしまった。

芭蕉がいる頃はまだ「俳句」とはいいませんでしたが、「この風景って俳句になるなぁ」と思う風景は、これまで誰も見たことのない風景なんかではなく、芭蕉からこっち何万人もの人が見て、何万句もの句に詠まれた風景です。この21世紀の今、自分の着想が非常に個性的で、これまでのどの句とも似ていないから「いいぞ」と思うのは、ほぼ間違いでしょう。逆に、この風景を見てこんな句を詠んだ人が何千人もいるに違いない、とすると「ワタシが独特の句を詠むには」どれだけ工夫し、考えなければいけないか、と考える必要がある。それが俳句の面白いところ、私はそう思います。不易で流行、と芭蕉がウンウン考えたのはそこではないですか。
毎月の句を見て、「あ、同じ着想だ」という経験はあるはずで、そのことを心してそこから一歩出ないことにはイッパシの俳人にはなれない、と思ってください。

干し鰈の句に、くっつきすぎの句がけっこうありましたね。俳句では鰈という「海のモノ」が出てきたらそこに「繰り返し海を思わせるような言葉は出さない」という、ぼんやりした約束があります。「厳禁」ではありませんが、たった十七文字で詠む俳句の中に同じ情景を引き出す「鍵になる言葉」を繰り返すのは、しない方がいい、いや、やらないもんだ、とされています。

干し鰈となれば、まぁ酒を飲む景色に干し鰈を肴として置く句があるんだろうなぁ、という思惑が当たりました。
兼題に食べ物が出ると、たいてい「酒を飲む風景に、その食べ物を肴にしてはめ込む句がある」のです。こういう句で「お!」と思う句はあまりありません。これも先の話と同じで、季節の食べ物を酒の肴にして詠む句は、ほとんどの人が考えるでしょう。そして、月並み句になりやすい。もし、酒を飲む句を詠むならその風景か、心情をよほど「創造的な」ものにして詠まないといけない気がします。
よく、通夜の酒が出てきますが、その句を詠んだ人にとって故人は「多くの思いをもたらす人」であっても、その句に接した読む側にはその人に対しての思い出がないのが普通です。
いや、酒を飲む場面の句は詠まないものです、というのではないですよ。

面白かったのが入学試験の句。句の中には入社試験もありましたが、日本人はよほど試験に悩まされて大きくなるのだとつくづく感じました。それと、入試が終わった後の解放感・開放感がよほど大きいのでしょうね。青年に呼びかけている句もありました。これは、この時期に何度か詠んでみると面白い兼題だと思いました。
もう半世紀前になってしまう団塊の世代の受験から、心情的にあまり変わりがないので、そのことに驚きました。ああ、だめだったなぁと実感しながら、「当時はまだ10時間以上かかった故郷まで」眠れない一人旅。挫折を運ぶ旅の始まりでしたね。うぬぬ。

上の文章の俳句についてのもっともらしい話は、講談社学術文庫・阿部筲人著『俳句』からの受け売りが多く入っております。はい。


◯ 初春の兼題は「薄氷」「伊予柑」「春嵐」です。

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【薄氷】
幼子の一歩に失せり薄氷        天天地地     菫女
うすごおりモノクロームの万華鏡    天天地地     好喜
水鳥の砕氷船行く薄氷         天天       雪童
黒天の星座を映し薄氷         天地地      酒倒
薄氷やしゃがみて映す顔ふたつ     天地地      仲春
薄氷を割いて水打つ老舗前       天地人人人    風写
薄氷を踏んで向かうや試験場      天地人      呑暮
薄氷や風の姿を彫り上げる       天人人      即馳
めだか飼う火鉢に今朝は薄氷      天人       音澄
うすらひや水のややこのおぶらあと   天        酒倒
薄氷聖堂にいま止む祈り        天        出船
人消ゆる光残して薄氷         天        出船

【伊予柑】
いい陽より伊予柑むいて猫になる    天天天天人   愚多楽
伊予柑を置いてうたた寝祖母の午後   天天地地人人   好喜
伊予蜜柑むき置きて去る母の家     天天地人     菫女
伊予柑を剥く嫁の手をながめおり    天地人      呑暮
病室の空気押しのけ伊予柑香      天地人      好喜
伊予柑やおんな二人のバスの旅     天地       磨角
手土産の伊予柑提げて路地の月     天地       出船
伊予柑やきまって一つはスッカスカ   天        音澄
棟上げや飛びゆく伊予柑甘さ増す    天        即馳
伊予柑を剥く親指に憂いなし      天        出船

【春嵐】
春嵐ブランコ揺らし遊び去る      天天天      即馳
顔を打つネクタイ跳ねて春嵐      天天地人人    雪童
交差点たてよこななめ春嵐       天地地      音澄
春嵐子どもの声を舞い上げし      天地地人人    小波
組み直す午後の段取り春嵐       天地人人     仲春
春嵐裾から袖に抜けにけり       天地人人     酒倒
止まないで学ラン借りた春嵐      天地      岩牡蠣
春嵐変えうるものを変える意志     天人人      出船
春嵐去った朝なお砲火の日       天        好喜
昇る陽が戸惑い踊る春嵐        天        好喜
春北風に舞い強いられてレジ袋     天        芝浜
春嵐泣きっ面に雨連れて来て      天        雪童



◯ 晩冬の兼題は「春いまだ」「凍港」「こたつ猫」です。

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【春いまだ/春遠し】
目覚めても無明の窓辺春いまだ     天天地地地地人  音澄
耳朶でとらえし夜風春遠し       天天地人人    小波
春いまだ漱石の鬱子規の念       天天       出船
春遠し前髪ぱつんと切りました     天天       小波
春遠し切ない話夜中に来        天地       仲春
傍らに気配なき夜春遠し        天人       見燗
すきとほる水沁み入るや春遠し     天        凛語
春いまだ女の話に尾鰭あり       天        菫女
春遠し杖の老婆は鞠のよう       天        酒倒

【凍港】
凍港にデイサービスのバス巡る     天天天地地人   出船
凍港や旅立つ勇気風に散る       天天人      好喜
凍港や燈台ひとり睥睨す        天地地      雪童
凍港や船のロープの硬きこと      天地人      音澄
凍港を奮い立たすや大漁旗       天地       好喜
凍港や訛ほどよき標準語        天地       青羽
そっと目尻なぞる男や凍港       天        磨角
凍港や魚は焼けて船は出ず       天        小波
凍港の先に浦塩カムチャッカ      天        酒倒
凍港の廃船半ば傾きて         天        芝浜

【こたつ猫】
こたつ猫蹴飛ばし詫びる独り酒     天天天人人    雪童
繰り言の聞き手を降りるこたつ猫    天天地地人    凛語
そんなこたくだらぬことよこたつ猫   天天地地     磨角
迫り来る足に怯えずこたつ猫      天天       出船
おめかしをじっと見てゐるこたつ猫   天地地人人人   小波
今朝もまたあくがるるかなこたつ猫   天人      岩牡蠣
炬燵猫となる夢をみる炬燵かな     天        芝浜
往来もこたつも知らぬCAFEの猫    天        酒倒


★小間使いさんから--------------------------------------------------------

 兼題を出す者として、「想像句」ではどういう世界を
 思い浮かべるのかと、気になったり、
 実体験で詠むとどう詠むのかと、気になり
 楽しみでもありますが、
 今回の「こたつ猫」などは、世界が狭いので
 風景が似るのはしょうがないでしょうが、
  「ハッとする」句は難しかったようですね。

 ではでは 次回はもう春、初春の句会です。

 お楽しみに。


◯ 仲冬の兼題は「底冷え」「くしゃみ」「葛湯」です。

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【底冷え】
底冷えや男を布団に招き入れ      天天地      磨角
底冷えや胴打ち一閃白袴        天天地      即馳
底冷えの土俵に滾る鬼の息       天天人      出船
底冷えをてけてけてけと明けの犬    天天       出船
底冷えや豆蒸す湯気の白の濃さ     天地地      音澄
底冷えや土蔵の錠前堅くなり      天地人人人    雪童
底冷えに汲む井戸水のやわらかく    天地人      音澄
底冷えやあわれメールの誤字脱字    天人       呑暮
支那そばを待つ底冷えの舗道かな    天人       芝浜

【くしゃみ】
帰り道くしゃみ一つに過去放つ     天天地人     出船
くしゃみしてハナも屁も出る老いきたる 天天地      音澄
くしゃみしてピカソの顔になりにけり  天天       仲春
納戸から小さきくしゃみかくれんぼ   天地地地地人   磨角
大くさめ気配のありて一二秒      天地人      菫女
筋肉美見せて銭湯大くしゃみ      天地       雪童
くしゃみして不運吐き出す阿吽前    天人       風写
バスの列響くくしゃみにお人柄     天人       出船
やすやすとくしゃみをしたり快癒かな  天        見燗
大小のくしゃみ白波散骨す       天        即馳

【葛湯】
匙持つ手無骨な父が葛湯練る      天天地人     雪童
葛湯飲み投網のほつれ縫い合わす    天天地人     即馳
拗ねるのと同じくちびる葛湯吹く    天地地地     磨角
薄命の友を葛湯に透かし見し      天地       風写
今朝ほどは両手に包む葛湯椀      天地       風写
舞台閉ねストリッパーの飲む葛湯    天人人      仲春
頬紅き子らの葛湯や洞の中       天        酒倒
ずる休み午前十時に吹く葛湯      天        出船
夏の日を根に蓄えて葛湯かな      天        出船
夜更かして期限切れたる葛湯吹く    天        酒倒
葛湯飲みもう一年と共白髪       天        即馳


★小間使いさんから-------------------------------------------

 新しい年も、変わらず淡々と続けます。
 本当の宗匠である仲春さんが、皆さん腕を挙げてきたなぁ、
 と申しております。

 ・磨角さん参加の俳句展は、こういう風景
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 ではでは 小間使い



コダーマンの雑貨屋・頑固堂

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