ええ、投書屋でございやす
2002年05月22日(水)
 「サンデー毎日」に連載のコラムに一部書いたけれど、このひと月の間に三箇所、こちらの意見を投書した。今は、投書もメイルでね。
 一つは、埼玉県警。二つ目は、「あ」で始まる名前の銀行。三つ目はステーキのチェーン店。そう、相変わらず「文句言い」、小言幸兵衛をやっている。

 「あ」で始まる銀行の顛末。
 カミさんがカードを使っていて住まいの近くの支店を利用し、私は通帳と印鑑をもって会社近くの支店を利用しています。
 私には、意識的に「銀行を観察したやろう」という気持ちもあるんです。昨今、かなり柔らかくなった役所と比べると、まことにひどい対応しかできない銀行、これを観察することで、銀行の駄目さ加減と、客を馬鹿にしている態度がはっきり見えるので、こごとのネタに事欠かない。
 どうしても必要で10万円単位の金をおろしに行った。書類を書いて、印鑑を押して、出して、プラスティックの札をもらって、さぁ今日はどれぐらい待たせるかなと待った。
 銀行は、待っている人より遙かに大勢の人がカウンターの向こうで仕事をしていながら、やたらと時間がかかり、客のそうしたイライラをまったく察することのない接客態度を貫く。これが、感心するほど徹底していて、横並び。何年経っても改善されない。そして、昨今のていたらく。
 さて、15分ほどして、私が呼ばれカウンターに行くと、確認したいので住所を書いてくれというわけです。「?」と思ったが、書いて、書類を戻した。で、5分ほどすると、また呼ばれて、身分証明書を持っていないかと聞かれた。自分の金を自分が預けた銀行から引き出すのに、いちいち身分証明書を持ってでないもんでしょ? と言いましたね、私は。
 それでは、生年月日をおっしゃって下さいと来た。
 こういうところで、そういうことを平気で聞くもんですか? と逆襲しましたね。住所も、生年月日も、そうそう平気で聞くものではないし、答えるものではない。
 なぜ、そういうことを聞くのか、と聞き返すと。私がおろそうとしている金額は大金なので、本人であるか確認したいという。
 馬鹿いえ! 日常的に出し入れする額の範疇ですよ。私がその日おろそうとした金額を日常的にサイフに入れている人がごろごろいる額です。たとえ、私には大金でも、その額が銀行にとって大金で、いちいち身分を確認しなければいけないはずのない額でした。
 高額を引き出す人は身分を証明してから、ということにしました、と言う。では「高額というのはいくらで、それはいつから始まったんですか?」と聞いたら、そういうことになったんですとしか言えない。実は、私急いでいた。その金を人に渡す必要があった。
 気持ちの中では、店長を呼べ! だったのだが、まぁまぁと思っていた。
 では、ここでは金をおろしません。と言って、出てしまった。
 もちろん腹を立てていたが、私が疑われる「理由」がわからない。ある金額以上の金を引き出す場合には身分証明書が必要であると決めたのなら、そのことを通知していなければならないのに、その知らせもない。それもそうだし、平気で住所、氏名、年齢を店頭で聞くような「接客態度」が、「あ」銀行では不躾だという意識もないということに、呆れた。
 ね、投書するでしょ? もう、するもんなんですこういう場合は。
 こういうのは、腹を立てて、二度とその支店を使わないというだけではなく、理由をはっきり聞き、こっちの意見を告げておかないと気が済まないわけです。
 いつから、いくら以上の場合、身分証明書が必要か。そのことを客に通知したか、また、店頭で客の住所・生年月日を聞くことが失礼だと思わないか、というようなことを書いて送りました。、この銀行にはネット上にホームページがあるにもかかわらず、こっちからメイルを送るアドレスが見つからないので封書、文字通りの投書になった。
 約二週間後、ボソボソと話す「赤坂支店の加藤」という男性が電話してきた。ボソボソは一種芝居だと思う。すまない風情の、「芸」のうちですね。
 最近、通帳が盗難に遭う事件が多く、持ち主ではない者が来て金をおろす危険があるので、という。それならそのことを客に伝えたか? 伝えていない。いつからか? いつからとははっきり言えない。いくら以上からなのか? 決まっていない。近所の企業の人が来ても、ある額以上だと身分証明になる物の提出を求めるのか? お馴染みさんは顔を覚えているので。そんなの理由にならない。私もこの四週間に三回もいっているのに、なぜ顔を覚えない。お客さまが大勢いるので。大勢いても、覚えているから身分証明書の不要な人がいるんだろ? ええマァそうですが。
 どうも、私自身が怪しまれたとしか思えない。
 結論、埒が空かない。
 何かを改善しようとする意欲もない。窓口の行員に生年月日なんな聞くものではない、といいそうにもない。この銀行から全部の金を引き上げたいのだが、ローンの支払いもあるので、この支店だけは二度使わないと決めた。決めたら断じて使わない。

 それでも、この場合、担当の人間が名乗って、事情を説明しようとしたところが、一割ほど許せる。説明しようとした、のであって、説明したのではないですよ。自分たちの勝手な都合で、客を疑っているというだけですからね。
 こういう、怒りの感じたとき、怒ったまま怒鳴って電話すると、お客担当は「かえって冷静に」揚げ足を取ったりしてあしらうので、一日二日待ってから、自分の怒りが妥当なものであるかを考えて、文章に書いてキッチリ質問する方がいい。
 もちろん、封書には住所、氏名、こっちはどういう者であるか、責任ある人のしっかりした言葉が聞きたいという要望を書いて送ります。そうしないと、返事が来ない。
 こういう投書を、どんどん出した年があった。非常に疲れることを知った。
 一人のこごと言いが、大きな企業の客担当とやりとりするのは非常に大変。向こうは、弁が立つ、絶対に約束をしないし、言質を取られるような発言もしない。「お客さまの意見をいれてこうします」などと絶対に言わない。言葉を弄して投書した人間をあしらうのが給料になっている係りだもの。まぁ、そういうのを配置して、ただ追い返すような態度のところは、基本的にろくなもんじゃないんだけれどね。
 でも、担当の者が名前を名乗り、こっちの意図、怒りを理解し、こういう方法を考えて改善しようと思ったところだといってくるところ、そういうお客の意見があるとは全く想像もしなかったので今度会議で提出してみるというところなどもある。ああ、まだいい会社もあるんだな、と素朴に思う。担当の名前をしっかり書いて、手紙で返事をくれるところもある。こうした手紙をやりとりすることになってしまうこともある。長くは続かないが、企業の姿勢がわかって、それなりに好意を持つことになる。
 返事をくれないところ、担当が名乗らないで電話してきて「まぁ、いろんなお客さんがいますからねぇ」と開き直る「T武T上線」のような企業、先の警察のようにただ聞くだけで結局何もしないで、不祥事の山を築くところ、いろいろあります。
 雪印のように、信用を失って、消費者が店頭で商品を買わないという実力行使もあるが、銀行などのように、態度が悪いといって皆で困らせても国が助けてしまうような場合は、一人一人が「こんな風に気に入らない」と言い続けないと、直しませんよ連中は。
 正しい怒りの投書、お薦めします。老化防止に絶対役立つから。 




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