平成20年12月 仲冬の句会
【冬の海】
冬の海汲みて社の縄洗ふ        天天天    仲春
冬海に矢を放ちたる神事かな      天地地人   仲春
前後して瞽女の旅行く冬の浜      天地地    音澄
冬の海モビィ・ディックが沖をゆく   天地人   喜の字
金箔の陽差しを浮かべ冬の海      天地人    芝浜
冬の海ひとりあそびの鳥がいる     天地    喜の字
島影も暮れて茜の冬の海        天人人人   風写
機関長最後の航海冬の海        天      駒吉
ホームレスぢっと見ている冬の海    天      駒吉
半島の裏に船あり冬の海        天      音澄
冬の海どこから先は春の海       天      芝浜
うねうねと骸を並べ冬の浜       天      豆蛙
独り旅骨裂く音す冬の海        地地人    華南
さみしさや立って沖見る冬の浜     地人人    逆月
冬の海豊饒隠す白き牙         地人     豆蛙
渾然と宇宙(そら)とけ込んで冬の海  地人    雨不埒
網あふれ冬の海咲く帰り船       地      風写
戦没者叩き起こすや冬の海       地      駒吉
北へ行く車窓片側冬の海        人人    喜の字
尼寺の裏に逆巻く冬の海        人      逆月

【年忘れ】
年忘れ片手挙げ師は角に消え      天天天天人  華南
忘年を詰め込んで行く終電車  天天天地地地地地人 喜の字
賑やかに終わり寂しき年忘れ      天天地    仲春
忘年会終えて遺影と向かい合い     天地     華南
凜然と忘年会の欠に丸         天地     呑暮
忘年会十の笑いに十の忍        天人     逆月
年忘れ誰もが元気空元気        天      駒吉
名幹事今年はいない忘年会       天      山女
年忘れ歳を忘れた盃の数        地地人    風写
行くまでは心弾むや忘年会       地人     音澄
忘年会新メンバーはミルク飲む     地人     松毬
職離れ電話の向こうの忘年会      地人     山女
年忘れ末席にいて満喫す        地      音澄
結局はあいつを偲ぶ年忘れ       人人    喜の字
都都逸が出てお開きの年忘れ      人      仲春
級長も只の人なり忘年会        人     雨不埒
年寄りがはげましている年忘れ     人      仲春
六十も越せばいつでも年忘       人      華南
そもあれも鍋に煮込んで忘年会     人      逆月

【塩鮭】
塩鮭や添え状なしが友の文       天天地人   呑暮
焼き直す塩鮭の身の堅さかな      天天地人   音澄
塩鮭が流し目送る御徒町        天天地人   華南
新巻を背負いし父の「君恋し」     天天     華南
粗壁に塩鮭の影ずっしりと       天地     仲春
新巻や吊るされてなお格のあり     天地     逆月
塩辛き声塩鮭を売り立てる       天人     豆蛙
塩鮭や昭和じっくり噛みしめる     天      駒吉
上野山由一の鮭の味想ふ        天      芝浜
塩鮭や蝦夷の海鳴りついてくる     地地地人  喜の字
老母から塩鮭届くワンルーム      地人     呑暮
荒巻に父の名前の黒々と        地人     華南
塩鮭の切り身の光る厨かな       地      逆月
北海の香をみなぎらせ塩の鮭      地      駒吉
塩鮭を買うホステスの土曜午後     地     喜の字
新巻が頭上に跳ねて値ぶみ声      人人     風写
景気落ちサイズダウンの新巻鮭     人      山女
塩鮭やアメヤ横町泳ぎけり       人     喜の字
会いたいと新巻の人にメールする    人      山女
採点の辛き教師を「塩鮭」と      人      仲春



平成20年11月 初冬の句会
【霰】
後れ毛にしばし留まる霰かな      天天地地   芝浜
一つずつ溶けて地に消ゆ霰かな     天地人    音澄
鉄瓶は鳴きて路地には玉霰       天地     風写
こっそりと舌出してみる初霰      天地     豆蛙
吹き抜けの底まで届く霰あり      天地     音澄
曇天の濁りを濾して霰舞う       天地     呑暮
豆腐屋のおからの湯気や霰降る     天人    喜の字
広重のをんな小奔る夕霰        天人     逆月
鹿の目を閉ざしむるかな初霰      天人     菫女
窓敲く霰の音に猫が起き        天人     酒倒
霰来て亀はすばやく石になる      天人    喜の字
荒れ寺の縁に跳ね入るあられかな    天      酒倒
あられ止むおや長靴が左右逆      天      呑暮
関越や道路鏡にあられ跳ね       天      仲春
初物の霰を盃に二つ三つ        地地人    呑暮
霰過ぎ空青色を深めたり        地地人    豆蛙
グローブのひとつ残りて霰降る     地人人    駒吉
一人寝の小窓に騒ぐ霰かな       地人人    芝浜
この道を霰過ぐるや笹の上       地      菫女
登山道広げた地図に霰ふる       地      松毬
玉あられ江戸の鯔背のやせ我慢     人      逆月
安普請あられ舞い込む峠小屋      人     雨不埒
降り出しは青山通り初霰        人     喜の字

【木の葉】
夜の底ラヂヲを消せば木の葉風     天天天地人 喜の字
侘び真似て散るにまかせる木の葉かな  天天人    音澄
朝ごとに色敷きなおす木の葉道    天地地地地地人 豆蛙
青空に眩暈覚ゆる木の葉雨       天地人    菫女
アスファルトに化石となりぬ木の葉かな 天地     松毬
慾少し抱きなおす日や木の葉散る    天人人    菫女
川音も木の葉の雨に遠ざかり      天人     逆月
住職の通る道なり掃く木の葉      天      音澄
用人の背中選んで木の葉降り      天      酒倒
木の葉舞うなにはなくてもコップ酒   天     喜の字
木の葉舞う車のあとをついてくる    天      駒吉
久々のスニーカ軽し木の葉踏む     天      駒吉
舞う木の葉追う子の影も踊りだす    地地地人   豆蛙
葬列に朱い木の葉の一つ舞う      地人    喜の字
街の灯や木の葉時雨にひとを待つ    地      逆月
街灯の温もりに添う木の葉あり     地      風写
夕まぐれ父と木の葉を焚きしこと    地      豆蛙
まあだだよ木の葉の山が手足出す    人人     呑暮
淵・石瀬泊まりて下りて木の葉川    人      風写
木の葉散る青い瞳に影差して      人      華南
木の葉焼く巫女はバイトの短大生    人      仲春
満天に花咲かすかな木の葉散り     人     雨不埒

【十一月】
櫓の軋み十一月の音になり       天天地地人  駒吉
街の色十一月が奪い去り        天天地人   音澄
故郷の十一月はあたたかい       天天地    山女
酒覚ます十一月の白い月        天天人   雨不埒
空占めて十一月の雀かな        天地     華南
立ち上がる谷川岳や十一月       天人人   喜の字
庖丁を一本だけ研ぐ十一月       天人    喜の字
ドア開いて十一月の風通る       天      松毬
湯に香る十一月の芋焼酎        天      風写
十一月流行語など振り返る       天      駒吉
「今年ももう」と言わぬ人よし十一月  天      豆蛙
雲呑を啜りにゆこう十一月       地地人    酒倒
静かなる十一月に殺意あり       地地     音澄
十一月この葉書にも長寿終ふ      地      菫女
閉店の十一月の老舗かな        地      仲春
常緑樹十一月の雨に冴ゆ        地      芝浜
父逝く朝十一月の熱気球        地      逆月
どたばたの十一月のジャパンかな    地      仲春
空占めて十一月の雀かな        地      華南
十一月旅のおはりの駅舎かな      人人     逆月
人黙る十一月の風の街         人人     音澄
十一月きのふの衣今日は脱ぐ      人人     菫女
残一枚十一月の暦剥ぐ         人      駒吉
あれよあれ十一月もあれよあれ     人     雨不埒



平成20年10月 晩秋の句会
【干し柿】
村中の軒下染めてつるし柿       天天天    酒倒
柿すだれ低き軒より佐渡島      天天地地人人 喜の字
柿を干す駅舎もありて小海線      天天    喜の字
干し柿や孤独の午後の心地よさ     天地地    菫女
柿干して出羽三山は日本晴れ      天地     仲春
干し柿にしばし染みいる夕日かな    天人     仲春
枯露柿の白粉に見ゆる日の仕業     天      風写
干し柿や色失いて甘み増す       天      芝浜
干し柿や人無き道に山遥か       天      華南
軒下に風の道あり柿を干す       地地     音澄
干し柿や風変わるまで軒の下      地人人    音澄
ひしめいて入り陽に照るや柿すだれ   地人人    芝浜
柿簾母はピースのポーズとる      地人     駒吉
ゆうぱっく河北新報吊し柿       地人     豆蛙
紙皿に干し柿残るケアホーム      地      呑暮
祖母の顔干し柿食ひて思い出す     地     ゲスト
干し柿や人無き道に山遥か       人人     華南
柿を干す指の太さや妣(はは)やさし  人     喜の字
干し柿は不機嫌そうに皆が喰い     人      音澄

【鶺鴒】
鶺鴒を脅さぬように経を読む      天天地   喜の字
存分に鶺鴒を見て石わたる       天天人人   仲春
せきれいは互い違いに屋根庇      天地人    音澄
禅寺の妙にしんとする庭たたき     天地    喜の字
多摩川の流れは緩し石たたき      天地     菫女
黄鶺鴒縫い綴じていく空と原      天地     豆蛙
お前様異見ないかと庭たたき      天人     逆月
鶺鴒も馴染みになって街の朝      天人    雨不埒
鶺鴒のやうな指先厭な男        天人     酒倒
羽衣を舞うや岩瀬の黄鶺鴒       天人     風写
ライパチのぽかは鶺鴒飛んだから    天      豆蛙
鶺鴒やここより先は川ほそる      地地地地地  仲春
鶺鴒や独りの散歩も気ぜわしく     地人     芝浜
鶺鴒や早瀬の水に溶けて飛び      地      音澄
微動だにせぬ亀の子に石叩       地人     華南
渓の石鶺鴒ダンスの石舞台       人      駒吉
國産みのタクトを振るや石叩き     人      酒倒
決闘の夜鶺鴒のあはただし       人      逆月
庭石を八艘跳びの黄鶺鴒        人      酒倒

【秋惜しむ】
スケッチに少し色入れ秋惜しむ     天天地人   音澄
秋惜しむ紙ヒコーキの二機三機     天天    喜の字
散髪のあと遠回り秋惜しむ       天天     音澄
秋惜しむ旅人ふたり無人駅       天地人人人  駒吉
寺三つぶらり歩いて秋惜しむ      天地人   喜の字
閉門のテーマパークや秋惜しむ     天地     駒吉
秋惜しむ嗚呼一年の早きこと      天      酒倒
秋惜しみ湖畔の錦踏みしこと      天      逆月
秋惜しむゆっくり歩いて帰る道     天     ゲスト
秋惜しみジャム煮る夜よ掛け時計    地地地    豆蛙
なお奥に句碑ある寺や秋惜しむ     地地人   喜の字
鴎外の薄き書を閉じ秋惜しむ      地地人    芝浜
居酒屋か蕎麦屋か迷い秋惜しむ     地人人    音澄
初孫の産着たたんで秋惜しむ      地      呑暮
やっと会えまた会いたいと秋惜しむ   人     雨不埒
秋惜しみ茜障子へ野花活け       人      風写
秋惜しみ沼辺は日向の子亀亀      人      風写
夕暮れの川面和らぐ秋惜しむ      人      菫女



平成20年9月 仲秋の句会
【稲妻・稲光】
稲妻に置物となる老いた猫      天地地    喜の字
稲妻に祭りの声のつづきをり     天地人     逆月
稲妻や父が突然消えた夜       天地人    喜の字
稲妻に瞬き孫の澄まし顔       天       風写
豪雨つき稲妻走る行者道       天       華南
少年は駆ける稲妻身を裂けと     天       呑暮
稲妻や新調のシャツ鉤裂きに     天       駒吉
CGよ嘗めんじゃねえと稲光     天       酒倒
稲妻や汽水湖を越え海にまで     天       音澄
妻の走りてしばし静かなり      天       芝浜
もう一缶ビールを出して遠稲妻    天       豆蛙
実るべき田もなき街よ稲光      地人      豆蛙
稲妻に一矢を灯台報いけり      地人      駒吉
瞼には残像ばかり稲光        地人      芝浜
稲妻に目をうばわれて定九郎     地      雨不埒
稲妻の紙垂もそよぐや実り風     地       風写
灼熱の恋読み了へていなびかり    地       逆月
稲妻や五重塔は動かざる       地      喜の字
稲妻にライダーお面で立ち向かう   人       呑暮
一瞬も幕おろさせぬ稲光       人      雨不埒
稲妻に阿修羅のまなこは動かざる   人       華南
いま落ちた落ちたと母は稲光     人       呑暮
稲妻の落ちよと思う方もあり     人       豆蛙
稲光り一閃ありて部屋昏るる     人       逆月

【とうもろこし・唐黍】
ひかりとは甘きものなり玉蜀黍     天天     豆蛙
もろこしをかじる子の歯の白さかな   天天     逆月
濡れ髪の唐黍畑夕陽さす        天地人人   豆蛙
留守番に茹でとうもろこしが置いてあり 天地     音澄
唐黍をつまらなそうに焼く夜店     天人人人   仲春
とうきびとハモニカありし少年期    天人人   喜の字
口許のモロコシ跡や夜叉となり     天      風写
とうきびやあの日還らぬ特攻機     天     喜の字
もろこしの実並びに見る嫉妬かな    天      風写
不揃いの唐黍食べる四姉妹       地地     駒吉
人間もとうもろこしも甘地くなり    地地     音澄
唐黍に入日や農婦鎌を抱き       地人     華南
見送りてもろこし畑の霞むまで     地人     風写
唐黍でリレーの練習した彼の日     地      酒倒
身を焦がすとうもろこしの色香かな   地     雨不埒
太陽が粒の数だけ玉蜀黍        地      逆月
唐黍はコーンと言うで稲荷社へ     人      酒倒
信濃より唐黍届く雨の午後       人      逆月

【秋分】
秋分や彼岸此岸も天の道       天天人     呑暮
秋分や何もせぬといふ心地よさ    天天      逆月
秋分や嫁ぎし娘と飲んでをり     天地      仲春
秋分の銀輪行や土手の道       天地      豆蛙
秋分や日溜まりに香(か)う母の背な 天       風写
秋分の一日銀河の縁あたり      天       音澄
秋分や広げたままの備忘録      地人     喜の字
陽を惜しみつつ秋分の酒を酌む    地人      芝浜
秋分の薄き暦に身も締まり      地人      風写
秋分を歩き通して戻り道       地人      音澄
秋分やケニアの友にメール打つ    地       呑暮
秋分や万年筆で三行詩        地       仲春
秋分や一族少し減りてあり      地       華南
秋分の波に薄墨まじりをり      地       仲春
赤き花並びて秋の彼岸道       人人      豆蛙
秋分の段々畑に入り日落ち      人       華南
秋分や霊園遠き三代目        人       駒吉
秋分やシニア二枚と切符買う     人      喜の字
秋分や一息ついた夜半の里      人       風写



平成20年8月 初秋の句会
【すすき】
沈む陽の火を放ちたる芒原      天天天地    豆蛙
水郷はすすきの間(あい)が舟の道  天天地人人   音澄
無雑作に苅りて飾りて芒かな     天地地地   喜の字
新しき眼鏡の軽さ糸薄        天地人     逆月
すすき越し魚釣る竿の見え隠れ    天地人     音澄
白髪の父持ち帰るススキかな     天地      駒吉
このあたり廃線ありし芒の野     天人人     駒吉
利根川のすすきの時間に立ち尽くす  天      喜の字
トレモロの洩れくる館庭すすき    天       逆月
すすき啼く川は大きく右曲がり    天       酒倒
鬼女となり薄の海を走りたし     地人人     豆蛙
古町に七不思議あり芒原       地人      仲春
すすき野はおいでおいでのSKD   地      雨不埒
薄野に声のかそけきかくれんぼ    地       華南
すすき野が波打つ先の夕日かな    地       菫女
山姥の忍び笑うや芒原        人人      華南
船頭の笠まで隠すすすきかな     人       酒倒
芒野や猫の一匹神隠し        人      喜の字

【秋の声】
残り居て秋の声聞く位牌堂      天天天     音澄
注連縄を垂らす土牢秋の声      天天      仲春
古井戸に風吹き込むや秋の声     天地      逆月
昨日と同じ枕に秋の声        天地      華南
本の上老眼鏡おく秋の声       天人      菫女
格子戸を潜り抜けゆく秋の声     天人      華南
秋の声のせ来る風に鐘一つ      天人      風写
乾きたる白き珊瑚や秋の声      天       菫女
街道の井戸ほの暗く秋の声      天       仲春
秋声や汲みかはさむと白き酒     天       逆月
細道をえらび続けて秋の声      地地地人    酒倒
友去りて秋の声あり町外れ      地地人     音澄
田の畦が瘡蓋になり秋の声      地地      酒倒
切通し小暗きあたり秋の声      地人      仲春
某日や秋の声する駅を降り      地人     喜の字
リュックの背囁き聞こゆ秋の声    地       駒吉
秋声や北の地方の子守歌       地      喜の字
静けさにささやき積る秋の声     人人     雨不埒
ゆるり入るしら湯へ渡る秋の声    人       風写
秋声や銀河鉄道予約する       人      喜の字
老眼の人に秋声よく聞こえ      人       豆蛙
タクトなき大合唱や秋の声      人      雨不埒

【天の川】
月山は銀河を冠しそびえけり     天天天     華南
天の川やがて空身の置きどころ    天天地     風写
鉱泉の灯火落ちて天の川       天天      酒倒
酔漢がじっと見ている天の川     天地人     仲春
この坂を登れば届く天の川      天地人    喜の字
湯めぐりの下駄音高き天の川     天地人    喜の字
生き逢ひて別れゆくもの天の川    天地      菫女
銀漢や犬吠え止まぬ仮の通夜     天人      駒吉
夜回りや銀河の下をひとめぐり    天       音澄
身を沈む銀河の底の露天風呂     地人      豆蛙
鐘楼の屋根を掠める天の川      地       酒倒
ダム底に沈みし村に天の川      地       華南
仰向けに泳いでみたき天の川     地       仲春
銀漢の眠らぬ街と交信す       地       駒吉
上流へ歩いてみるか天の川      地       逆月
病院の屋上から撃つ天の川      地      喜の字
億銀河人は飛んだり跳ねたりす    地       豆蛙
天の川かき消す野暮な街灯り     人人     雨不埒
天の川浅瀬に遊ぶ童星        人人      仲春
拉致人の思い渡せや天の川      人       風写
天の川星の数ほど嘘の数       人       菫女
その下にいて探す者あり天の川    人       音澄
幽かなる音曲のあり天の川      人       逆月



平成20年7月 晩夏の句会
【黄金虫・かなぶん】
黄金虫通夜の喪服にしがみつき     天天地地地地 仲春
こがね虫つまんで投げる熱き闇     天天地    豆蛙
かなぶんの飛びかう夜や子沢山     天地地人   菫女
放りても闇はカナブン投げ返し     天地人人人  逆月
かなぶんが背後至近にいる気配     天地     酒倒
野菜籠かなぶん一匹死んだふり     天人    喜の字
民宿の夜いくたびも黄金虫       天      仲春
黄金蟲シャトルは宇宙(そら)を高く飛ぶ 天     駒吉
顳顬を掠める飛礫こがねむし      天      酒倒
四、五カ所に当たる音してこがね虫   天      音澄
高速の光の輪ごとに金亀虫       地人     華南
ぶつかれどまた突撃のかなぶん隊    地     雨不埒
かなぶんやもう一匹も死んだふり    地      仲春
かなぶんに話折られて客帰る      人人人    呑暮
告白の静寂破る野暮かなぶん      人人     逆月
くわがたに虫籠ゆずるこがね虫     人      豆蛙

【薄もの・薄衣】
ゴーギャンの前を動かぬ絽の女    天天天天天地  駒吉
薄衣たたむ夕べに軒の鈴       天地地地    風写
薄ものを着て足早の息づかひ     天地地     仲春
宵歩き風のあやつる薄ごろも     天地人人人  喜の字
薄ものの父は明治の男なり      天地      菫女
懺悔室より派手な絽のそろりと出   天人      駒吉
薄衣や忍辱波羅蜜南無三宝      天       酒倒
薄衣に光弾けて地蔵眉        天       呑暮
ふる里に帰る荷物に絽の喪服     地人     喜の字
白檀の香りを曳いて薄ごろも     地人      豆蛙
薄衣や襟元白き夕まぐれ       地       逆月
織り上げし羅に天の風通る      地       華南
薄衣の人と袖する木挽町       人人      豆蛙
薄ものの目立つ浅草和紙の店     人       仲春
品という言葉が透けるうす衣     人       音澄
オペラ座に静寂を生むうす衣     人       音澄
立ち去りし白檀の香よ薄衣      人       華南

【夕立】
読経消す白雨や一堂一山に      天天天地地地人 華南
夕立や傘さしかけて嵐山       天天人     華南
大仏を丸ごと洗う大夕立       天地地地人  喜の字
夕立を追うようにしてバスは着き   天地人     酒倒
いさかひの声も夕立流し切り     天地      逆月
夕立は片口の酒二合ほど       天人      音澄
夕立や内に湛えし海騒ぐ       天       呑暮
止まり木にまた掛けなおす夕立かな  天       仲春
夕立の空を見上げて仁王門      天       仲春
ハーレーの一団突っ込む夕立かな   地       駒吉
夕立に打ち付けられて踊り花     地      雨不埒
夕立の遠のく先から蝉しぐれ     地       風写
夕立あと微熱あるよに歩みけり    地       菫女
軒下にみな口開けて驟雨見る     人人      豆蛙
五回裏夕立に泣く草野球       人      喜の字
陽の匂い消し去り夕立遠ざかる    人      喜の字
夕立や東京タワーも洗ひたて     人       逆月
先触れの香りがすぎて驟雨かな    人       酒倒
驟雨来て池はボートの大競争     人       豆蛙



平成20年6月 仲夏の句会
【柿の花】
出入りする人も老いたり柿の花      天天天地地 音澄
寡婦の家(や)の手入れ届かぬ柿の花   天天   喜の字
この路地は行き止まりなり柿の花     天地人人  菫女
雨あがり踏めぬ絨毯柿の花        天地    酒倒
叩かれて見上げる傘に柿の花       天人人   豆蛙
鶏鳴けば牛のふた声柿の花        天     仲春
渋柿も甘柿もいまは柿の花        天     音澄
柿の花みたいな人と聞いて会う      天     呑暮
鶏小屋が車庫に変われど柿の花      地地地   音澄
子規庵は本日閉門柿の花         地人   喜の字
厚き書を静かに開く柿の花        地     逆月
三味線を提げて唐傘柿の花        地     仲春
剃りたての坊主頭に柿の花        地     華南
白布掛く学生帽や柿の花         人人人   駒吉
不満でしょ渋柿ですよ柿の花       人人   喜の字
柿の花揺らしハーレーダビッドソン    人     仲春

【夏の月】
酔うことを止めた暮らしに夏の月    天天人人   音澄
手品師の種も尽きたり夏の月      天天人    華南
廃兵の黒きまなこや夏の月       天天     逆月
月涼し彫刻の庭暮れやらず       天地地    菫女
刑務所の塀の落書き夏の月       天地地    仲春
この星は悲しすぎるぜ夏の月      天     喜の字
片言で道訊く旅路夏の月        天      菫女
窓の灯はおもひおもひや夏の月     天      菫女
大川のビニールハウス夏の月      地人     仲春
街覆う熱波をよそに夏の月       地      音澄
刺青の肌の騒ぎや夏の月        地      華南
夏の月右岸をあるく河口まで      地      酒倒
ETのあらわる気配夏満月       地      駒吉
夏の月伴侶にしたりお堀端       地     雨不埒
窓濡らす路面電車に夏の月       地      酒倒
見あげれば「墨東綺談」の夏の月    人人    喜の字
元彼女(モトカノ)の着信履歴夏の月  人人     呑暮
夏の月ボート乗り場の影ゆらら     人      豆蛙
禍々シ烏ノ爪ハ夏ノ月         人      逆月
別館は忍びの宿や夏の月        人      仲春

【初蝉】
初蝉やそろりそろりと生く決意     天天天地人人 駒吉
初蝉や初戦敗退球児去る        天天地   喜の字
初蝉の鳴くや庭師の茶の時間      天地地地   音澄
初蝉やむかし軍神生みし村       天地     仲春
初蝉や遠く電話の呼ぶ夕べ       天人人    逆月
初蝉を素直に聞けぬ温暖化       天      豆蛙
初蝉のおびえいとしき伊豆の宿     天      華南
初蝉や少年剣士は青眼に        天     喜の字
初蝉や続けてB面聴くわたし      地人人    酒倒
初蝉のいきなり鳴くや雨上がり     地人     菫女
初蝉や蔵王お釜に水七分        地      仲春
初蝉で堆肥を入れる五目畑       地     雨不埒
初蝉の知らせ駅よりメール来る     地      豆蛙
初蝉や会社勤めの終りし日       人      菫女
初蝉の遠音聞こゆる森深し       人      駒吉
初蝉や太針の注射終わりけり      人      華南
初蝉のイチ・ニイ・サン・シうん八匹  人      駒吉



平成20年5月 初夏の句会
【浅き夏・夏浅し】
水銀灯かすかに鳴りて浅き夏       天天人   豆蛙
白馬山峰の硬さや夏浅し         天天    華南
お囃子の稽古切れ切れ夏浅し       天地地   音澄
古木には古木の力夏浅し         天地人   菫女
夏浅しブルーの表紙の俳句帳       天     駒吉
目薬の軽い刺激や浅き夏         天    喜の字
雨と花との日記交互に浅き夏       天     豆蛙
浅き夏木末隠れの実のたわわ       天     菫女
浅き夏ビーチバレーの砂かぶり      天     酒倒
夏浅し夕刻のよき匂いかな        地人人   豆蛙
溶き芥子つんと利かせて夏浅し      地人   喜の字
夏浅しなんだかとってもいいかんじ    地     酒倒
ぐい飲みをバカラに替えて夏浅し     地    喜の字
夏浅しローカル線の汽笛澄む       地     駒吉
風騒ぐ水の香りや浅き夏         地    雨不埒
潮風を半袖に受け夏浅し         地     華南
夏浅しくしゃみで起きる昼寝かな     地     華南
夏浅し微かに陽染む白き肌        人人    呑暮
売らぬ顔して道具屋の夏浅し       人     逆月
ぬか漬けの味まろみつつ夏浅し      人     菫女
ハンサムな力士の笑顔夏浅し       人     酒倒
半袖の腕初々し浅き夏          人     音澄

【五月雨】
一山をかき消し迫るさつき雨       天天天天  音澄
五月雨や弥勒の眠り浅からず       天天    華南
フィルム診る医師は無言の五月雨     天地人  喜の字
五月雨を両手に受けて天使像       天地人   仲春
少年の十五のやまひ五月雨        天地人   逆月
五月雨を切裂いて行くアスリート     天地    酒倒
五月雨の岸に冷えてるイージス艦     天     仲春
五月雨や入る客なき露天風呂       地人人   音澄
五月雨や詩人はそこで嘘をつき      地人    逆月
五月雨に点前をさらう老宗匠       地人    音澄
五月雨の向こうの山の香嗅ぎにけり    地     駒吉
五月雨や退院するともしないとも     地    喜の字
五月雨や藁をしとねにキスだけで     地     呑暮
五月雨を抜けてかすかにコルネット    地     駒吉
暫くは頭痛薬かな五月雨         人    喜の字
五月雨や竹林の闇まさりけり       人     華南
五月雨や野球中止の知らせ来る      人     駒吉
五月雨や竹林ひとつ大きゅうす      人     菫女

【キャベツ】
赤ん坊を渡しキャベツを受け取れり    天天地   仲春
捻られて軋む青春キャベツ哉       天地地   酒倒
バリバリとキャベツを噛むや青春記    天地    音澄
甘藍や芯に闇ありひとりの夜       天人人   逆月
丘一面キャベツキャベツの三浦かな    天人    仲春
キャベツひとつ手変え品変え和洋中    天人    豆蛙
陽の滴高原キャベツ朝の露        天     駒吉
半切りのキャベツも肩に重くなり     天     音澄
長雨や見捨てられたるキャベツ畑     天     菫女
左右の手重きを測りキャベツ選る     天     菫女
一列ずつ首刎ねられてキャベツ畑     地地地   豆蛙
甘藍は青き兵士を養えり         地人    華南
水弾きキャベツ俎板の上におり      地人    酒倒
頑固なる独居老人キャベツ切る      地    喜の字
キャベツ混ぜ男誇らにもんじゃ焼く    地     菫女
太陽を吸って笑いしキャベツかな     人     華南
別れあり半玉キャベツを選ぶ人      人     呑暮
キャベツ畑小柄な爺の鎌捌き       人     駒吉
朝漁を終えた太腕キャベツ摘む      人     仲春
恋しさやキャベツ切り割るいま正午    人     逆月



平成20年4月 晩春の句会
【海胆】
雲丹を食(た)ぶ風の津軽の旅終える   天天   喜の字
海胆を割る海女の猥談あっけらかん    天地地地人 仲春
引き潮においてきぼりの岩の海胆     天地人  喜の字
海胆喰えば口いっぱいの日本海      天地   雨不埒
雲丹に雲丹声高らかに頼む客       天人    駒吉
黒髪を振り解く女海胆の棘        天人    呑暮
北の海歴史の棘は雲丹の島        天     豆蛙
その棘に強き過去あり海胆を割る     天     逆月
軍艦に乗ってロシアの雲丹出でぬ     地人人   豆蛙
水槽に海胆を養い喰いもせず       地人    酒倒
毒ありて海胆はユーモア保ちけり     地     逆月
聞かぬ子に天罰くだる海胆の棘      地     音澄
不味いのかと思うほど居る磯の海胆    人     酒倒
三日目の心づくしや仇の海胆       人    雨不埒

【藤】
藤棚や大柄の僧休みおり         天天天地人 駒吉
藤下がる襲名披露の芝居町        天天人人  酒倒
父逝きて降り立つ駅は藤の宴       天地人   呑暮
ただひとつ覚えている祖父藤の下     天人    豆蛙
山藤を右に左に路線バス         天     駒吉
藤棚のうす暗がりに乳母車        天
藤花は山の笑窪や汽車の旅        地人人   豆蛙
風のなか寄せては返す藤の花       地     仲春
雨の日の記憶ばかりや藤の花       地     音澄
藤房がバスの窓摺る南都かな       地     酒倒
陽を除けて顔に当たるや藤の棚      地    雨不埒
取り壊す故郷の家の藤の花        地    喜の字
白藤や古刹あまねく照らしをり      地
山盛り色巧む藤ぼんやりと        人    雨不埒
藤の花訳ある女(ひと)の佇まい     人    喜の字

【行く春】
円窓の向こうに春の行方かな(明月院にて)天天天   逆月
行く春や麻酔ゆっくり醒めてゆく     天地地地 喜の字
釣らぬ気で岸辺に座り春送る       天地人人  音澄
行く春や調子の狂うオルゴール      天地人   仲春
行く春や誰か残って呉れまいか      天人    酒倒
行く春や昭和おわりて20年       天     駒吉
春の果てピンクの絵の具捨ててあり    天    喜の字
行く春や別れを惜しむエアポート     地人    駒吉
行く春や筆勢うすき腰越状        地     仲春
行く春に目奪われて一人墓地       地    雨不埒
惜春を布団のなかでやり過ごす      地     酒倒
行く春や物干し竿は満艦飾        人     呑暮
行く春や「田舎暮らし」の雑誌読む    人     駒吉
行く春や野菜かき揚げ二人分       人     音澄
見晴らしの峠にありて春送る       人    喜の字



平成20年3月 仲春の句会
【春雨】
灯点せば音なき音や春の雨        天天天人人 菫女
春の雨出発ロビーの大硝子        天地人  喜の字
薄色の傘を選んで春の雨         天地人   豆蛙
六つの鐘春霖透し響き来る        天人    駒吉
春雨の朝新聞のやわらかき        天     音澄
店の名は女の名前春の雨         天     菫女
春雨や構はず続く応援歌         天     仲春
春の雨過ごして木立光濃く        地地   雨不埒
病人は生返事ばかり春の雨        地人   喜の字
春雨や構はず続く応援歌         地     仲春
春雨や馬の背中の湯気真白        地     駒吉
バイエルのつかえて流れて春の雨     地     豆蛙
春雨を浴びて野天にちょと長湯      地     仲春
少年の繃帯白き春の雨          人人    逆月
春雨や黄色新らし合羽行く        人     菫女

【鳥の巣】
巣箱掛け人の一家も根をおろす      天地地人  豆蛙
塗り替えて燕の巣跡消えにけり      天地    音澄
見上ぐれば去年の鴉の巣に鴉       天地    駒吉
味噌蔵に鳥の巣残し廃業す        天人    音澄
廃業の小児科医院に燕の巣        天    喜の字
お隣の入居気になる巣箱掛け       天     豆蛙
喧噪の中や喧噪燕の巣          天    雨不埒
鶯の巣ありや歌のたどたどし       天     菫女
熱き夜を明かし学び舎古巣とす      天     逆月
色あせた回覧板や燕の巣         地人人   呑暮
出棺の軒に巣籠る雀二羽         地人    駒吉
高鳴きて威嚇の飛翔烏の巣        地     菫女
燕の巣視し日妊娠告げらるる       地     駒吉
立ちてより古巣にあるはただ虚空     地     逆月
鳥の来ぬ巣箱傾いで三年目        人人    音澄
燕の巣保存決まりし武家屋敷       人    喜の字

【野遊び】
小さな指に小さな草よ青き踏む      天天    豆蛙
車椅子坐りしままに青き踏む       天地地   菫女
団子には足らぬ摘み草瓶に活く      天地人   菫女
妖怪も子らには出でて野の遊び      天人    逆月
野遊びに憩ふアル中更正会        天     仲春
ロボットとなりたる足で青き踏む     天    喜の字
遠き声近き草音青き踏む         天     逆月
ふるさとの道から径へ青き踏む      地地    駒吉
野遊びに草の名知らぬ我を知り      地人    音澄
野遊びやズックが片足旅立てり      地人    呑暮
よく笑う女を連れてピクニック      地    喜の字
その先はさだめの迷路青き踏む      地     逆月
野遊びやこざかしいこと捨てっちまえ   人人   喜の字
野遊びにビーチボーイズ連れてゆく    人人    酒倒
摘み草や名の知らぬ子の二人いて     人     駒吉



平成20年2月 初春の句会
【春の雪】
新しき絵馬に名残の牡丹雪        天天地人人 豆蛙
春の雪海峡の先にヴェール掛く      天天    駒吉
牡丹雪路面電車ののろきこと       天地    駒吉
鳥の声つと消えてより春の雪       天人人   菫女
春の雪そろそろ始まる歯痛かな      天人   喜の字
起きぬけの眉間に眩し春の雪       天人    逆月
春の雪ステンドグラス染めにけり     天     仲春
とぼとぼと税務署詣春の雪        天     酒倒
窯出しの皿に溶けゆく春の雪       地地地   仲春
春雪や絶筆の載る同人誌         地人    音澄
春の雪帽子かぶろかやめようか      地     仲春
歌舞伎座は「娘道成寺」や春の雪     地    喜の字
ヴィオロンの悲鳴の朝や春の雪      地     逆月
息吸ふて昏き故郷へ春の雪        地     逆月
六地蔵伏し目がちする春の雪       人    喜の字
土にやや留まりて溶く春の雪       人     駒吉
鳥去りし水面を静め春の雪        人     豆蛙

【菜飯】
別れぎわ近江の人と菜飯喰う    天天地地地地人 喜の字
新しき庖丁試す菜飯かな         天天   喜の字
青丹よし奈良の都に菜飯かな       天天    仲春
ふと気付き菜飯のおにぎり持たせけり   天地    駒吉
まだ会はぬひとの行列菜飯炊く      天人    逆月
しんしんと山河は青く菜飯かな      天     仲春
宿酔にひと塩足りぬ菜飯かな       天     酒倒
母黙り四等分せし菜飯かな        地人    呑暮
菜飯して脳にビタミン満ちにけり     地     駒吉
菜飯なんぞで釣れそな男と評定す     地     豆蛙
雑穀の確かな硬さ菜飯食む        地     菫女
青菜飯愛でつる嫁の幼顔         地     菫女
さみどりの菜飯今宵の白磁碗       地     菫女
川までの散歩に菜飯をむすびにし     人人人   音澄
菜飯あり置いてけぼりを満喫す      人人人   音澄
大叔母の手紙にでてくる菜飯かな     人    喜の字

【種芋】
種芋や連綿と語る開拓史         天天地  喜の字
種芋や納屋をつらぬく太き梁       天天人   仲春
種薯やころがってゐる生もあり      天天人   逆月
種芋や選らるるときは種として      天天    菫女
種芋を土に託してまた一歩        天人    音澄
種芋に詰まる農夫の夢未来        天     酒倒
ネコ車派手に種芋ぶち撒けり       地地地人人 酒倒
種芋に横綱の名を貰いけり        地地人人 喜の字
種芋のどこに命の宿るやら        地人    音澄
種芋のひときわ頑固な面構え       地     駒吉
種芋に大収穫を信じけり         地    喜の字
種芋の不細工なれどたのもしく      地     仲春
種芋や仮眠のあとの黒湿土        人人    菫女



平成20年1月 晩冬の句会
【寒昴】
愛犬を土に戻して寒昴          天天天地地 駒吉
田の神に詣でて見上ぐ寒昴        天天人  喜の字
寒昴日本がいちばん冷えた夜       天地地  喜の字
長編を閉ぢれば窓に寒昴         天人人   仲春
旅立ちや熱きおもひの寒昴        天人    逆月
寒昴闇に子猫の眼が六つ         天     豆蛙
寒すばる天文台を覗き見ん        天     音澄
恐竜の絶滅を見し寒昂          地人    音澄
寒昴灯の煌々と一軒家          地人    駒吉
寒昴見上げつ来たり通夜の客       地人    駒吉
凍星は天のかけたる首飾り        地     仲春
牛飼いの吐きし痰かな寒昴        地     酒倒
恬淡と生きるもありて寒昴        地     菫女
自転車の群れは塾へと寒昴        人人    豆蛙
きょう釧路あすは四谷の寒昴       人    喜の字

【探梅】
探梅の径は線路と離れゆき        天天地地人 酒倒
探梅や樹間に光る相模湾         天天地   仲春
寺町や手を合わせては梅探り       天天    音澄
探梅や花はぬかるむ先にあり       天地    酒倒
探梅や地図に書き足す線一本       天人人人 雨不埒
梅探るらしき人のみ無人駅        天人    豆蛙
色気なき探梅行や武家屋敷        天     音澄
探梅や坂ある町の一の宮         地人人  喜の字
見上げつつ風に気配の梅探す       地人   喜の字
梅の香を探しむかしの通学路       地     豆蛙
江ノ電の探梅約し別れけり        地     菫女
はつかなる紅さす人や探梅行       地     菫女
探梅で記憶をたどる築地塀        人    雨不埒
探梅に妻の手荒れの愛おしき       人     音澄
探梅行踏まれ木の葉の小声かな      人     逆月

【橇】
雪の田を大曲りして馬橇往く       天天人   音澄
そりさ引けお父けっぱれ強く疾く     天天    呑暮
股の中子どもはさまれ橇滑る       天天    菫女
国境を橇で越えたる恋在りし       天地地地  仲春
その道は橇で届ける郵便夫        天地人   仲春
ひとり乗せひとり引く橇ながき道     天地人  喜の字
逞しき臀息づいて橇進む         天     酒倒
三味線を小脇にかかへ橇のひと      地地    逆月
雪解けて捨て置かれたる赤い橇      地人    音澄
低気圧居座る空へ橇ジャンプ       地人    駒吉
橇を曳く犬やブルーの眼の澄んで     地     駒吉
目覚めえぬマンモス運ぶ馬橇かな     人人   喜の字
冒険者視線は遠く犬橇を駆る       人     逆月
幼子のおでこ光りて橇の朝        人     菫女
案外にストレス溜まる橇遊び       人     酒倒



平成19年12月 仲冬の句会
【浮寝鳥】
約束は守れよおれは浮寝鳥        天地人   逆月
釣り禁止立て札に添う浮寝鳥       天地人   音澄
浮寝鳥身じろぎ水面光り立つ       天地人   豆蛙
シベリアの夢遙かなり浮寝鳥       天地    音澄
浮寝鳥狙う老爺の二眼レフ        天人    酒倒
刻知るやいっせいに発つ浮寝鳥      天人    菫女
街明かり映す鏡や浮寝鳥         天    雨不埒
吾が閨は己が胸なり浮寝鳥        天     逆月
サイレンの音満つ街に浮寝鳥       天     菫女
浮寝鳥水の呼吸に身をゆだね       天    喜の字
原潜に一歩も退かず浮寝鳥        地地地  喜の字
水鳥の忙し脚見ゆ水族館         地     仲春
存外に寝坊なものよ浮寝鳥        地     豆蛙
古里の雲は濁るや浮寝鳥         地人    呑暮
浮寝鳥憂さは夜川に流しけり       人人    逆月
船頭も出稼ぎにゆき浮寝鳥        人     酒倒
オスとメス少し離れて浮寝鳥       人     駒吉

【息白し】
声明の響く御堂に息白し         天天地人  酒倒
鹿を撃つ男の気迫や息白し        天天   喜の字
新しき筆の尖りや息白し         天地人   逆月
列をなし白き息来る小学校        天地    音澄
息白く山靴鳴れり朝の町         天地    逆月
白い息そろって流れ拳の舞        天人    豆蛙
名画座の椅子の固さや息白し       天     逆月
白き息大玉小玉校門へ          天     豆蛙
マッコリに耽る屋台や息白し       地地人   仲春
息白しもったいないほど息白し      地地    駒吉
西に落つ三日月道の息白し        地人    音澄
白息が尖る駅伝中継所          地     呑暮
息白し最後の星の消えにけり       人人人   菫女
息白し老犬嫌がる散歩かな        人     駒吉
朝の日や地の面のはく息白し       人     菫女

【虎落笛】
憎み合ふ墓もあるらむ虎落笛       天天人   仲春
虎落笛老人山から下りて来ず       天地人人  駒吉
三丁目の裸電球虎落笛          天地    逆月
来客の背を越え聞こゆ虎落笛       天人人   音澄
ひと部屋に家族集めるもがり笛      天人    豆蛙
虎落笛重き布団は旅の宿         天     呑暮
虎落笛熱めの風呂にゆっくりと      天    喜の字
虎落笛小林旭いま何処          天     酒倒
洋館にメトロノームと虎落笛       天     酒倒
けんかの子ねむりにつけり虎落笛     地地人   仲春
遠き夜のピアノも消えて虎落笛      地地    逆月
帰京する子送る角やもがり笛       地人    駒吉
この一年誤算だらけや虎落笛       地    喜の字
浜先の番屋を襲う虎落笛         地     音澄
高層に白月かかる虎落笛         地     逆月
運休の待合室に虎落笛          人     酒倒
星流れ又三郎の虎落笛          人     豆蛙



平成19年11月 初冬の句会
【鋤焼】
鋤焼の隣と分くる古屏風         天天天地  仲春
すき焼きや出戻り娘が仕切だす      天地   喜の字
すき焼きに寮の沸き立つ夜きたる     天地    音澄
同棲もすき焼きすれば所帯めき      天人    音澄
スキ焼きにひとつ話は父の癖       天     豆蛙
すき焼きや母の取る肉孫ねだる      天     駒吉
鋤焼やさて白滝の役どころ        天     逆月
すき焼きや休戦の意と了解す       地地地   菫女
鋤焼きやあの鐘の音は浅草寺       地人人  喜の字
鋤焼きや一泊二日に主人なし       地    雨不埒
鋤焼や戦ひを経し父のゐて        地     菫女
すき焼きに祖父母もありし昭和の世    人人    音澄
スキヤキは二日目がいいという男     人     豆蛙
すき焼きの香り残るや小料理店      人     駒吉
鋤焼のやや濃き味の母の味        人     仲春
鋤焼の味の染みたるうどん佳し      人     仲春

【日向ぼこ】
海を見る妻を見ている日向ぼこ      天天地  喜の字
日向ぼこ五臓六腑に陽の滴        天天    駒吉
目を閉じて朱の海に入る日向ぼこ     天地人   豆蛙
日向ぼこ別の行き方あったはず      天地   喜の字
ガラス越し日向ぼこありビルの午後    天人    音澄
刈り終へし畑一面日向ぼこ        天人    菫女
昂りをどこぞに置きて日向ぼこ      天     菫女
日向ぼこ隣のベンチおむつ替ふ      地地    仲春
気がつけば一枚羽織る日向ぼこ      地人   雨不埒
戦士らのわずかな休息日向ぼこ      地人    駒吉
「二列目の人生」を読む日向ぼこ     地     逆月
倒産の社長とふたり日向ぼこ       地     酒倒
頬杖の漱石先生日向ぼこ         人人人  喜の字
枕木で囲った花壇日向ぼこ        人     酒倒

【冬薔薇】
衿正すレーニン廟や冬の薔薇      天天天人人 喜の字
冬薔薇が揺れて遊覧船休み       天地     仲春
冬薔薇に命をつなぐ小蜂かな      天地     豆蛙
冬薔薇祈り深める大聖堂        天人人    駒吉
聖堂の冷たきノブや冬薔薇       天人     菫女
冬薔薇を嗅ぎつつシャドーボクシング  天人     仲春
カルメンの破局に向かう冬の薔薇    天     喜の字
冬薔薇回転木馬空のまま        地地人    豆蛙
冬薔薇薄日の庭にふるふると      地地     音澄
紅の文字鏡に残し冬薔薇        地      逆月
身を捨つるほどの大義や冬薔薇     地      逆月
冬薔薇便り絶えにし人のこと      地      菫女
在りし日のシャンソン喫茶や冬の薔薇  人     喜の字
咲ききらぬままに縮れて冬薔薇     人      豆蛙



平成19年10月 晩秋の句会
【銀杏】
ぎんなんを拾う昨日も会った人     天天地地地人 仲春
裏庭に銀杏落つ音地酒酌む       天地     駒吉
東大の銀杏踏むひと拾うひと      天地    喜の字
逢ふ瀬には要らぬぎんなん拾いかな   天人人    逆月
玄関に銀杏拾いのズック靴       天人     酒倒
銀杏を避けて小走る御堂筋       天      酒倒
銀杏の飛び石伝う墓参り        天     雨不埒
地に落ちてよりの明るき銀杏の実    天      仲春
銀杏や屈む農夫の手の厚さ       天      逆月
銀杏や北大東大御堂筋         地地人   喜の字
銀杏やわが身見て居り茶碗蒸し     地      駒吉
にぎわいもところどころに銀杏の実   地     雨不埒
待つうちに苦味つのるや焼き銀杏    地      音澄
銀杏や大樹の孫のみどりの眼      人人     逆月
銀杏や墓地分譲の旗の下        人人    喜の字
銀杏の真白き殻より翡翠出る      人      駒吉

【文化の日】
楽隊がブンカブンカブンカブンカ文化の日 天天    酒倒
恐竜展ルネ・モネ・ジャズや文化の日   天地地   駒吉
「遊」の字を大書してみる文化の日    天地    逆月
文化の日栗饅頭に不満なし        天地    音澄
快晴を切り抜く甍文化の日        天     呑暮
鑿振るう一心に振るう文化の日      天     逆月
デパ地下の輸入野菜や文化の日      天    喜の字
文化の日韓国ドラマで終りけり      天     仲春
母国語を失う国に文化の日        天     音澄
名も知らぬ草図鑑見る文化の日      地地    菫女
勲章に縁なく生きて文化の日       地人人  喜の字
新しき辞書買う午後や文化の日      地人    音澄
明治より三代過ぎて文化の日       地人    酒倒
ひとだますひとなにおもふ文化の日    地     逆月
新聞に広告多し文化の日         人人   喜の字
孫と孫字教えあってる文化の日      人     駒吉
酔い痴れて春歌替歌文化の日       人     仲春
さざめきも紺碧に消ゆ文化の日      人    雨不埒
文化の日形見にそっと腕通し       人    雨不埒

【色変えぬ松】
旧道を分けて松の木色変えず     天天天人    音澄
色変えぬ松を背に勧進帳       天天地人人人 喜の字
色変えぬ松に錦の嵯峨野かな     天天地人    菫女
色変えぬ松の根かたでバスを待つ   天天地     酒倒
色変へぬ松色変へる空の下      天       逆月
色変えぬ松や古老は示現流      地地地     仲春
色変えぬ松にも見ゆる老いと若    地人      菫女
京都御所襖の松は色変えず      地      喜の字
色変えぬ松に色なす山模様      地      雨不埒
色変えぬ松や天守に武者隠し     地       仲春
色変へぬ松逆流の洲に立ちて     人       逆月
色変えぬ松をくぐりて旧友の来る   人       駒吉
色変えぬ松刈り込んで盆の中     人       音澄
色変えぬ松や磯波荒き音       人       仲春



平成19年9月 仲秋の句会
【毒茸】
毒茸そしらぬ顔で籠の中        天天天天  喜の字
夜半の雨上がりて今朝の月夜茸     天天地人   菫女
その女匂い放つや毒茸         天天     音澄
毒茸と決めてその先急ぎけり      天地人人   仲春
森じゅうの悪意を込めし毒茸      天地     音澄
先行者あり毒茸踏んだ痕        天      駒吉
毒茸の鮮に見入りて手折らざる     地地地    菫女
山深し雨後の大傘紅テング       地地人    駒吉
雨喰らいむくり毒茸目を覚ます     地人人    酒倒
紅注して撓う毒茸茣蓙のうえ      地      酒倒
毒茸胞子ひそかにばら撒けり      地      駒吉
毒きのこ並べてお山のテロリスト    人人     酒倒
毒茸これみよがしの厚化粧       人     喜の字
毒茸大図鑑見てしたり顔        人      華南
ほの白き肌北欧の毒茸         人      呑暮

【夜学】
夜学子に正体わからぬ女子ひとり    天天天人人  仲春
白球に四弁の影落つ夜学かな      天天人    酒倒
はやばやと一途を照らす夜学の灯    天地     仲春
夜学行く戦ある世を生きのびて     天地    喜の字
当てられて頭起こすや夜学生      天人     仲春
図書室のをなご先生夜学の子      天人     菫女
歳行きてよりの夜学の楽しけり     天      駒吉
人肌の燗なり夜学の5時間目      天      呑暮
若き日の無為を嘆きつ夜学ぶ      地地     音澄
軽トラで通うものあり夜学高      地地     酒倒
紅茶冷え夜学に重く眠気さし      地地     音澄
空腹と孤独に強き夜学生        地      華南
夜学にもマドンナいます帰り道     地      豆蛙
夜学生忘れて行きし赤と黒       地     喜の字
夜学して学成り難し面白し       人人     音澄
爆音は夜学に駆ける鉄の馬       人      豆蛙
アンビシャス机に刻む夜学生      人     喜の字
明日のこと語る廊下や夜学生      人      逆月

【三日月】
きっぱりと三日月見えてあと余白    天天地    仲春
三日月をさして烏賊釣り舟の出る    天天     菫女
三日月も道案内の野宿かな       天地人人  雨不埒
沖津風よせる天守に月の眉       天地     仲春
世は闇とうたふ琵琶の音眉の月     天地     逆月
季を分ける雲に三日月つんつんと    天     喜の字
三日月や乗ってみたいな大箒      天     喜の字
涙染む目に三日月は満ちにけり     天      呑暮
三日月の国よ戦の音続く        天      豆蛙
三日月で清水を掬う旅の宿       地地     華南
紙切りの三日月跳ねる幼稚園      地人    雨不埒
雨降りの薄目のごとき三日の月     地      仲春
三日月や砂丘に生命の気配なし     地      駒吉
三日月の芝居テントに琵琶響く     地      豆蛙
闇の立つも月の剣は降ろさざり     地      逆月
三日月や猫の額に爪のあと       人人     酒倒
三日月や痩せゆく山の向こう傷     人人     豆蛙
芦ノ湖の湖面突っつく三日の月     人     喜の字
三日月や静かなる日をそっと閉じ    人      菫女
三日月や握らざる手で指し示す     人      菫女
三日月に光集めて錦江湾        人      華南



平成19年8月 初秋の句会
【二百十日】
絵馬鳴らし二百十日の風通る      天天地地人  華南
夕ぐれは女波も猛る厄日かな      天天人    仲春
静けさに二百十日の兆しあり      天地人    音澄
お日和もポーカフェイスの厄日かな   天地     酒倒
沖鳴りの二百十日の波真白       天人     仲春
その事は二百十日のあとにして     天人    喜の字
息災に二百十日の終電車        天     喜の字
村役場二百十日の早じまい       天      音澄
遠海の二百十日は凪ぎゐたり      地地人    菫女
初孫や二百十日を越しにけり      地地人    駒吉
二百十日農夫の顔の深き皺       地      駒吉
恐山二百十日の空模様         地      逆月
初物を競らずに仕舞う二百十日     人人     呑暮
憂きことの二つ三つ二百十日かな    人     喜の字

【いわし雲】
磯茶屋の石置く屋根や鰯雲       天天天天地  仲春
いわし雲ぶつ切りにしてジェット行く  天地地    音澄
鰯雲北からくるもの帰るもの      天地    喜の字
転校の少年の恋いわし雲        天人     逆月
いわし雲少しなじんだランドセル    天      豆蛙
鰯雲天をまるごと海にして       天     喜の字
三歳の問ひにあぐねる鰯雲       天      菫女
笠智衆仰ぐ空なり鰯雲         地地地人人  逆月
鰯雲やめた煙草が欲しくなる      地人    喜の字
錆び付いたコインシャワーといわし雲  地      呑暮
烟霞立つ昭和二十年いわし雲      地      酒倒
巡礼の空どこまでもいわし雲      人人     音澄
乳母車いわし雲追い村境        人      華南
いわし雲雑踏掻き分け泳ぎけり     人      駒吉
老妻の肩揉む縁やいわし雲       人      華南

【唐辛子】
太陽と筵二枚の唐辛子         天天天天地人 華南
沈む陽の朱のみ集めて唐辛子      天地地地   音澄
残照を沁ませて独り唐辛子       天地     呑暮
唐辛子大志抱きて赤く炎ゆ       天人     仲春
説教に少し利かせた唐辛子       天人    喜の字
唐辛子真っ赤な炭で焼かれけり     天      駒吉
早暮れる畑に灯る鷹の爪        天      豆蛙
その嘘に発火寸前とうがらし      地地    喜の字
正直に生きて愛でるや唐辛子      地人     華南
風の道パリパリ乾きし鷹の爪      地      駒吉
間をおいて行けば赤濃き唐辛子     地      音澄
八合目山小屋に揺る唐辛子       人人     仲春
遠からじふるさと伏見の唐辛子     人      酒倒
唐辛子紅き花園李礼仙         人      酒倒
手みやげは聖火のごとき唐辛子     人      豆蛙
角にして子供の遊ぶ唐辛子       人      仲春



平成19年7月 晩夏の句会
【夏負け・夏痩せ】
卒爾ながら夏痩せですか恋ですか    天天天地人  酒倒
夏痩せや丸き子どもを抱き直す     天天地地人  菫女
夏まけは踊り太鼓を家で聞き      天天     音澄
夏痩せの子らの溜まりて塾の夜     天地地人   華南
夏疲れ九官鳥はよくしゃべる      天地地   喜の字
夏負けや怒涛寄せくる崖に立ち     天人     仲春
夏痩せや鎖骨美人の気のつよさ     地人人    逆月
薬店主「夏まけ」幟の横に立ち     地      酒倒
夏まけて鬼平積もる四畳半       地     雨不埒
万人に晒されゴリラ夏痩せす      人人     駒吉
夏やせは応挙の掛け軸外したり     人      音澄
夏痩せてバット重たき甲子園      人      華南

【Tシャツ】
Tシャツや雷門の雨宿り        天地地人人 喜の字
Tシャツを着てリア王の稽古かな    天地地    仲春
Tシャツや夕暮れていく海がすき    天地人   喜の字
Tシャツの似合ふ小唄の師匠なり    天地人    仲春
やんばるの川にTシャツ搾りけり    天地     酒倒
帯解きてティーシャツになる夕端居   天地     菫女
大空を泳ぐ鯨やTシャツと       天地    雨不埒
Tシャツと浴衣並びて日暮れ待つ    天      菫女
Tシャツの白さは今も若き夢      天      音澄
夏シャツが吸い込まれていく朝の駅   天      華南
Tシャツに小さき名あり合宿所     地      音澄
TシャツやYシャツ時代が長すぎて   人人    喜の字
旅の荷はTシャツ2枚ばかりなり    人      酒倒
樹々の間にTシャツ干すや夏合宿    人      菫女
手を広ぐTシャツ3枚干してある    人      駒吉
お揃いのTシャツ母L(エル)娘S(エス)人     駒吉

【青田】
青田行く子等はてんでに好きな歌    天天地人  喜の字
渡れるは実りの神や青田波       天天地    逆月
雨去って星座と向かう青田かな     天地人人  喜の字
三両の車両の中に青田風        天地人    菫女
国道を横に突っ切り青田風       天地     駒吉
青田波静まり雨の落ちてくる      天地     豆蛙
木の橋をわたりて山へ青田風      天      仲春
陸奥の奥の奥まで青田かな       天      華南
青田風球児を撫ぜて海へ抜く      地人     酒倒
青田より手を振つてゐる牛牽く子    地      仲春
麓から青田海まで埋め尽くし      地      音澄
青い田の海切り裂いてこまち行く    地      豆蛙
山の端にしがみつきたる青田かな    人人     華南
風鳴りて青田の海のさざめけり     人     喜の字
一片も青田に風の便りなし       人     雨不埒
SLの汽笛に波す青田かな       人      菫女
 



平成19年6月 仲夏の句会
【蝙蝠】
ボール追う空に蝙蝠母の声       天天地地   豆蛙
蝙蝠や連続放火を目撃す        天天地    音澄
蝙蝠のサファイアの目よ闇深し     天地地    華南
蝙蝠は人なき校舎の裏手より      天地     音澄
かくれんぼ、蝙蝠でてきてまた明日   天地    喜の字
たそがれは蝙蝠友に逆上がり      天人     華南
かはほりや逢魔が刻の倉庫街      天      仲春
コウモリと呼ばれし男ウツを病み    天      逆月
かはほりの狩りを眺める夜学生     天      酒倒
蝙蝠やドラキュラ伯の皓歯かな     地人人   喜の字
蝙蝠の休む長押や旅の部屋       地人     酒倒
蝙蝠や昭和の記憶は貧しくて      地     喜の字
蝙蝠の図案は磔ばかりかな       地      酒倒
蝙蝠や逢魔が時を告げて飛ぶ      人人     音澄
蝙蝠や人を宥さず過ぎし日々      人      菫女
蝙蝠のやうに真っ直ぐ翔ぶをんな    人      逆月
蝙蝠の居ついて二年廃校舎       人      駒吉
蝙蝠を虫の仲間に分類す        人      駒吉
蝙蝠の闇に潜みしどくろ団       人      仲春

【白扇・扇・扇子】
手の鎌を扇子に変えて婚礼へ      天天天    駒吉
白扇のかすかな風を父に向け      天天人    駒吉
せわしなく扇を使う叔父来たる     天地地人   音澄
道問へば扇で指せる雲の先       天地     菫女
茶箪笥の扇は古き香を畳む       天人     豆蛙
絵扇の風に沈黙ほどけたり       天      華南
なすことのなく老あふぐ我が扇     天      菫女
地区予選土手に扇子の列長く      天      音澄
あおぐ程飛び出す蝶や手に扇      地地    雨不埒
京扇子おんなの嘘の見え隠れ      地人人   喜の字
浅草や寄席の扇の七変化        地人     逆月
グリーン車に扇子一つの忘れもの    地人    喜の字
扇の櫓漕いで進まぬ徳の舟       地      豆蛙
ジーンズの尻に扇子を挿す妓      地      酒倒
枕辺で扇が語る夢十夜         地      華南
遊といふ一字一気に白扇        人      逆月
手品師の扇子吹き出す紙吹雪      人      仲春
踏ん切りがついて形見の白おうぎ    人      音澄
小三治の扇子づかいや志ん生似     人     喜の字

【水芭蕉】
天と地の際に端座す水芭蕉       天天天地   逆月
水芭蕉白し朝靄夕闇に         天天     仲春
師を囲む笑顔と写る水芭蕉       天地人   雨不埒
遠路より届く宛名に水芭蕉       天地    雨不埒
ぬったりと泳ぐ鯉あり水芭蕉      天      音澄
水芭蕉朝に残りし万灯会        天      豆蛙
水芭蕉我も濡れたり尾瀬の雨      天      華南
遠山に雨雲わきて水芭蕉        天     喜の字
木道に背を向けており水芭蕉      地地     酒倒
湿原の果つまで白き水芭蕉       地人人    酒倒
水芭蕉礼儀正しき人の列        地人     豆蛙
大沼を白く灯せり水芭蕉        地人     仲春
青くさき歌声喫茶や水芭蕉       地     喜の字
その庭で名を覚えたる水芭蕉      地      音澄
水芭蕉中からホルン聞こえ来る     地      駒吉
水芭蕉三つの子にある孤独かな     人      菫女
水芭蕉誰が教へしや人恋ふを      人      菫女
水芭蕉そこだけ避ける風の道      人      駒吉
萩の間に水芭蕉ある旅館なり      人      音澄
水芭蕉頭の中に持ち帰る        人      駒吉
水芭蕉戦国ヶ原はざんざ雨       人      酒倒



平成19年5月 初夏の句会
【初夏】
初夏の仕掛け絵本に波の音       天天天天人  仲春
初夏や海はかいなを広げたり      天天天    華南
初夏やのれんを白に鳩居堂       天地地人  喜の字
蔦のぼるワイヤの先に初夏の空     天人人    酒倒
初夏や帽子置きたるギター弾き     天人     菫女
初夏や少し辛目のカレー店       天     喜の字
初夏を抱きしめきれず深呼吸      地地人   雨不埒
境内に花嫁のゐる夏はじめ       地地     菫女
初夏や波にあずける足の甲       地人    喜の字
産みたての卵や初夏の胸騒ぎ      地人     華南
ドライブの窓開け放つや初夏の風    地      駒吉
初夏や揺れに息詰め川下り       地      仲春
仲見世にひと犇きて夏初め       地      逆月
はつ夏やコートに白線引く娘      人      酒倒
しどけなき少女制すや初夏の街     人      音澄
初夏をあくびで迎える大き猫      人      華南

【蕗】
蕗の香を連れて乗り込む路線バス    天天地人   駒吉
蕗さして走り抜けたる一反歩      天天地   雨不埒
伽羅蕗の甘さ辛さに母おもふ      天天     逆月
蕗の葉にまず揺れきたるにわか雨    天地地人   菫女
普段着のままが好きよと蕗を煮る    天人    喜の字
叱られてぽっと見てゐる蕗の雨     天人     逆月
蕗を煮る有るか無しかの京の味     天     喜の字
折箱に伽羅蕗の染み窓に富士      天      酒倒
刈る鎌に水の跡残す若き蕗       地地     音澄
うすく煮て蕗のさみどり箸の先     地人     仲春
山寺の鐘を濡らすや蕗の雨       地      華南
つまみ食い蕗の穴から息を吸う     地      音澄
手弱女や蕗の広葉に雨の降る      地      逆月
腰曲がる婆腰折って蕗を刈る      地      駒吉
中尊寺までの山坂蕗ばかり       人人     仲春
うすみどり一直線に蕗を剥く      人人     菫女
弁当の蕗を食らつて蕗を採る      人      仲春

【雨乞い】
スタンドは雨乞いのごと鉦太鼓     天天地人   菫女
雨乞いの涙集めて田に満ちよ      天天     華南
頭垂れ雨乞いをする蕾かな       天地地   雨不埒
雨乞いのライトスタンド五回前     天地     酒倒
雨乞いの村はダム湖に沈みけり     天地     酒倒
雨乞祭無慈悲に青き村の空       天地     華南
雨を呼ぶ雨乞い小町の詩歌かな     天     喜の字
雨乞いの祝詞をさらう老宮司      天      音澄
町じゅうの人の目がみな雨乞いす    天      駒吉
雨乞いやかすかに雲の増えにけり    地地     駒吉
涸れ谷が終の住処か雨乞い師      地人人    華南
雨乞いや神主の声の湿りたる      地人     駒吉
雨乞いの巫女の踊りに犬怯ゆ      地      仲春
雨乞いに全会一致の村議会       人人人    音澄
雨乞いの御幣の白さ目に残り      人      音澄
雨乞いの労をビールで潤しぬ      人      呑暮
雨乞いの儀式横目に犬の舌       人     喜の字
雨乞やうからやからの黒き肌      人      菫女



平成19年4月 晩春の句会
【蜃気楼】
海兵の無念ありしや蜃気楼       天天天    華南
しんきろう凪の海ゆく転覆船      天天地    酒倒
蜃気楼見てゐる二人ふつと消ゆ     天地地地   仲春
波の上都のさぶらう蜃気楼       天地人    豆蛙
一人旅思いの果ての蜃気楼       天人     華南
蜃気楼リゾート計画宙に浮く      天      駒吉
船影は世界一周蜃気楼         天     喜の字
蜃気楼振り向きもせぬ浜千鳥      地地人    逆月
世乱れて人海に立つ蜃気楼       地人     呑暮
酒過ぎて句は幻の蜃気楼        地人     逆月
釣り船の空母のごとく蜃気楼      地      音澄
幻をしかと見たぞと蜃気楼       地      呑暮
雨上がり葉毎に見える蜃気楼      地     雨不埒
蜃気楼の北より船来てひと攫ふ     人人     仲春
蜃気楼「千夜一夜」を読み返す     人     喜の字
不安げなカラス見ている蜃気楼     人     喜の字
宿の客浜に駆け出す蜃気楼       人      音澄
伸びをする彼方の街や蜃気楼      人      酒倒

【独活】
若き僧独活掘る御手の柔らかき     天天地    華南
独活喰らひ笑み満面の大男       天天     逆月
独活の皮剥く台所まだ暮れず      天地地    豆蛙
酢味噌うどほろ苦きかな家族会     天地地    駒吉
酒に独活すこし大人になったヤツ    天人人   喜の字
独活好む父の享年すでに過ぎ      天人    喜の字
大木と言われて永し独活を噛む     天      駒吉
独活の香を届けしひとの無欲かな    天     喜の字
独活肩にだらだらくだる駒ケ岳     天      酒倒
独活喰らう箱膳湯煙山の音       地人人   雨不埒
肌白き小鉢愛でるや独活嫌い      地人     呑暮
独活の香が分かるか息子の無精髭    地人     呑暮
沢道を山独活採りの早足よ       地      仲春
山独活を揚げて塩添ふ寺料理      地      仲春
短冊の山独活さくり冷気噛む      地      酒倒
大木のうど強風に耐えており      人      駒吉
それほどのものでなけれど独活は独活  人      音澄
読めぬ者に食わすべからず独活入荷   人      音澄
独活ゴーヤ百合根レンコン味の妙    人      逆月

【種蒔き】
よく晴れて大字小字種を蒔く      天天人    仲春
ぬかるみで時代遅れの種を蒔く     天天     音澄
種蒔いて刈る人あるや孤老の身     天天     華南
袋ひとつ分け合うほどの種まきや    天地     豆蛙
種まきは何より土に触りたく      天地     豆蛙
粒ごとに命起こせと種を蒔く      天人     音澄
種蒔きやすゞめ並びて腰浮かし     天人     酒倒
種蒔きを終えて一日終えにけり     天      駒吉
種蒔きや土黒々と呼吸せり       地地人    逆月
種を蒔く農夫世間を疑わず       地地人   喜の字
車窓より種蒔く人は遠ざかり      地地     酒倒
種を蒔く花摘むひとは知らねども    地人     逆月
種蒔けど愛に溺れて枯らしをり     地      逆月
種蒔きの農婦賛美歌口ずさみ      地      華南
種蒔きに選挙カーより手を振れり    人      仲春
雨が輪を描く大地に種を蒔く      人      華南
種を蒔く木曽駒ヶ岳まだ白き      人     喜の字
捨てた田に赤い実つける種を蒔く    人      呑暮
種を蒔く地球は青しと火星人      人     喜の字



平成19年3月 仲春の句会
【水温む】
水温み竿しなわせる釣り前夜      天天天人   音澄
ぬるむ水手足延ばして田に満ちる    天天     音澄
乳飲み子の掌(て)もひらきをり水温む 天地人    逆月
水温む女子漕艇部様子よく       天地     酒倒
水温み豆腐屋すこし軽き顔       天人    喜の字
殉教の小島しずかに水温む       天     喜の字
水温む川にて鎌の土洗う        天      駒吉
せせらぎの音和らぎて水ぬるむ     地地     音澄
水温みズックの並ぶ塀の上       地人人    豆蛙
青春の憂さ外堀の水温む        地人     菫女
川底に穴ぶつぶつと水温む       地      華南
水温む社に巨き孕み石         地      仲春
腹晒す山椒魚や水温む         地      酒倒
組体操崩るるたびに水温む       地      仲春
土に土空に空の香水温む        人人     菫女
水温み奈良の仏に会いに行く      人     喜の字
水温み昔少女の膝こぞう        人      豆蛙

【春休み】
春休み宙ぶらりんの逆上がり      天天天地   豆蛙
丸刈りを試されている春休       天地人    仲春
春休み列車の親子みな眠る       天地     豆蛙
補助輪を外す手大き春休み       天人人    菫女
消しゴムを弟に下げ春休み       天人     華南
担任がよそよそしげな春休み      天人     華南
春休みゴジラに挑む自衛隊       天      酒倒
「何もせぬ」たった3日の春休み     天      駒吉
吹奏部楽器の余る春休み        地地地    音澄
江ノ島に誘われている春休み      地人    喜の字
春休み大音声す国ことば        地人     豆蛙
春休み乗せて江ノ電はしゃぎをり    地      仲春
春休み留守番自堕落大食らい      地      音澄
祝杯の色はさまざま春休み       人      逆月
春休み隣の子らの二重唱        人      菫女
兄とする手旗信号春休         人      仲春

【蛙】
沼のつく町名多き蛙鳴く        天天人   喜の字
ニコライ堂蛙門番していたり      天天    喜の字
蛙跳ぶ分厚い夜の一軋み        天地     呑暮
夕蛙恋の相手は母の足         天地     豆蛙
立ち止まる音に応えて蛙鳴く      天人人    華南
人待ちの駅前タクシー遠蛙       天      菫女
たとへれば蛙しぐれや闇の道      天      菫女
叱られて泣き泣き捨てし蛙かな     天     喜の字
農道で思案顔なる青蛙         地地地地   音澄
旅先の枕なじまぬ蛙の夜        地地人人   仲春
蛙居たまだそこに居た風呂帰り     地地    雨不埒
朝はや蛙の占めるベンチなり      人      仲春
庭に出て目合ひてしまふ夕蛙      人      菫女
蛙の目まだまどろみの中にいる     人      駒吉
薬屋のハリボテ蛙に会釈する      人      酒倒
山の井に新妻を待つ蛙かな       人      酒倒



平成19年2月 初春の句会
【猫柳】
戯れに空くすぐるや猫柳        天天地    華南
大仏もおとがい揺らす猫柳       天天人   雨不埒
猫柳売切れ御免の饅頭屋        天人人人   菫女
せせらぎと訛り交わすや猫柳      天人     華南
猫柳ぽかぽかそよそよふわりかな    天人     酒倒
手のひらにこそばゆき春猫柳      天      豆蛙
猫柳砂丘の先に遠州灘         天      菫女
古里や光る花咲くねこやなぎ      天      酒倒
猫柳ポンと弾けて空青し        地地地人   駒吉
猫柳活ける弟子の手初々し       地地     音澄
少女てふ意地包みたる猫柳       地人     華南
猫柳くすぐる光水面より        地      豆蛙
増水の大河を従え猫柳         地      駒吉
ふるさとの川の記憶や猫柳       地     喜の字
濃い朝の雫をはじく猫柳        人      呑暮
水わたる風に踊るや猫柳        人      豆蛙

【春めく】
春めきて花盗人と歩きけり       天天天天地 喜の字
引戸あけ春めく内田カバン店      天天地人   酒倒
春めいていつもは行かぬ蕎麦屋まで   天地人人   音澄
春めきてまたケスクセの初級より    天人人    豆蛙
春めきて事問いたげな蕾かな      天人     華南
春めくは白いズックの中の砂      天      呑暮
D51の動輪軋み春動く         地地人    逆月
春めくやこれ見よがしの乳房かな    地地    喜の字
春めくや猫の集まる谷中墓地      地     喜の字
どろ水の皮膚も春めく戎橋       地人     酒倒
春めけば化粧坂(けはひざか)にて脱ぎにけり 地   菫女
春めくや白き灯台ふと揺らぐ      人      駒吉
まっさきに梢の先の春めけり      人      菫女

【白魚】
しらうおの目にも遥かな九十九里    天天地人   酒倒
白魚の小鉢は父の膳にのみ       天天     音澄
白魚や素描のように泳ぎけり      天天    喜の字
白魚は夢二の目して横たわる      天地     豆蛙
朝まだき目の群れ汲みし白魚舟     天人     華南
透けゐても姿を成せるしらをかな    天      菫女
白魚を選る白魚や若女将        天      呑暮
白魚や天下を取りて駿河富士      地地    雨不埒
白魚や線一本の世過ぎかな       地人     華南
汽水湖の香り漂うしらを椀       地      音澄
白魚や酢醤油滲みて確かなり      地      華南
白魚やたとえて言えば水の稚児     地     喜の字
白魚の二文字経木に新しく       地      音澄
白魚はスペースシャトルに形にて    地      逆月
白魚や板場のさわぎ聴いており     人人     酒倒
白魚舟墨水時を遡り          人人     逆月
白魚や短命ゆえの白さかな       人     喜の字
白魚やためらひた後ためらはず     人      菫女
白魚を噛めば潮の香ばかりなり     人      豆蛙



平成19年1月 晩冬の句会
【白鳥】
出稼ぎへ戻る車窓やコハクチョウ    天天人人人  呑暮
月光の川白鳥の影の濃さ        天天     逆月
鴨池に白鳥降りて光さし        天地人    酒倒
現身を浮かべて白鳥天にあり      天地     華南
白鳥の湖に迫るやブルドーザー     天人    喜の字
白鳥の群れ飛び立ちてむくろ二羽    天人     華南
白鳥の羽汚れをり飛ばざれば      天      菫女
母逝けり鵠の沼と呼べる地に      地地     菫女
白鳥の観察員の垂れ目かな       地人     駒吉
白鳥の声まず起きいだす沼の朝     地人     音澄
長旅のおもひで対の鵠(くぐい)かな  地      逆月
大艇のごとく白鳥着水す        地      酒倒
白鳥の見下ろす湖の青さかな      地      駒吉
白鳥や眼下は海峡冬景色        人      音澄

【湯冷め】
湯冷めして叱る人なき旅の宿      天天地地   華南
ぽつねんと湯冷めしている離れの間   天天地    音澄
湯冷めして指になじまぬ洗ひ髪     天天     逆月
湯冷めしてネコ引き寄せる長電話    天地人人  喜の字
湯ざめして石のごとくに待ちにけり   天地     逆月
湯冷めきて束ねたる髪梳きにけり    天      菫女
湯治場に湯冷めしに行く青二才     地      酒倒
湯冷めして二人で月の露天かな     地     雨不埒
湯冷めして今日は月下を楽しめり    地      華南
湯冷めして読むまでもなき本を読む   地     喜の字
風呂焚きの愚痴につきあい湯冷めかな  人人     呑暮
妻の愚痴留まり知らぬ湯冷めかな    人人     駒吉
湯冷めしてあわて二合の燗つける    人      音澄
一陣の風が届ける湯冷めかな      人     雨不埒
筆進み湯ざめ厭うて垢を得る      人      酒倒

【冬椿/寒椿】
落ちてなお花をつづける寒椿      天天天地  喜の字
托鉢のまた戻りきて寒椿        天地地地地  酒倒
寒椿別れ話に沿って咲き        天地地    音澄
くろがねの飯場釜石冬椿        天      酒倒
一輪の暖かさかな寒椿         天     雨不埒
みな去りしリビングルーム寒椿     天      菫女
ギブスにも血の流れあり寒椿      天     喜の字
寒椿むかしの紅を残しをり       地人人    逆月
私小説花は越後の寒椿         地     喜の字
朝まだきひとつ微笑む寒椿       人人     華南
遠い日も色褪せずある寒椿       人     雨不埒
冬椿音消して来る救急車        人人     音澄
寒椿落ちたるままにこの家は      人      豆蛙
小鳥らに金の化粧す寒椿        人      豆蛙



平成18年12月 仲冬の句会
【火の用心・夜回り】
人の声失せて寒柝残りけり       天天地人   菫女
寒柝に送る響きや冥王星        天地人    逆月
三日目は声もとおるや火の用心     天人    喜の字
寒柝が木霊す月の山の里        天人     華南
界隈の犬もなじみや火の用心      天      音澄
寒柝や白川静逝ける年         天      逆月
一番星出て寒柝を打ち合わす      天      華南
火の番や消えて終夜の店灯る      天      菫女
火の用心満天の星声返す        地地     駒吉
寒柝でお江戸のごとき夜となる     地人     豆蛙
火鉢さえ無さげな街に火の用心     地      豆蛙
谷中には鬼平気取りの火の用心     地     喜の字
煤けたる守り札なり火之用心      地      菫女
夜回りや猛勉の子の窓開く       地      駒吉
境内に二人連れあり火の用心      人人     音澄
火の用心これからおとなの時間です   人     喜の字
ぼやき声もまじり過ぐる火の用心    人      豆蛙

【鱈】
鱈食ふて言わずに過ごす怒りかな    天天天    菫女
「鱈」覚ゆ雪の魚と声に出し      天地地地   駒吉
漁師やめ遠き思いや鱈の海       天人     駒吉
荒海の静けさ白き鱈を食う       天人     音澄
赤き血をつけて売らるる鱈の切れ    天人     菫女
鱈に合う酒を求めて激論す       天      華南
好物は鱈の子ですと書き遺し      天      酒倒
鱈鍋や夜半に風の鄙の宿        地地     逆月
北国の空錆び鱈の肌白き        地人人    華南
鍋番の重き買い物鱈半身        地人     音澄
鱈買いて夜道に下駄の音高し      地人     華南
しみじみと箸先にある鱈の身や     地      酒倒
鱈熱く幻のゴール語りけり       人人     逆月

【大晦日】
6Bで大晦日に童話書く        天天天人   逆月
為残しを明日に繋げり大晦日      天天     菫女
秒針のひとつずつ鳴る大晦日      天地地地人  菫女
大晦日大鍋に湯の煮えたぎり      天地     華南
晴天を約す夜空や大晦日        天人     菫女
晩年の計もないまま大晦日       天     喜の字
痛みさへどこへやらゆく大晦日     地地     酒倒
流されつ逆らいつ過ぐ年の夜      地人     豆蛙
入日燃ゆ海兵挙手して大晦日      地人     華南
足し引きはこちらに捨てむ大晦日    地      逆月
早々と寝てしまう手もあり大晦日    人      音澄
さざめきつ醒めつつ町は大晦日     人     喜の字
大晦日圓生志ん生で明けを待つ     人      酒倒



平成18年11月 初冬の句会
【小春・小春日】
小春日や一年分の深呼吸        天天地   喜の字
小春日やかき揚げそばをつき崩し    天地人    音澄
予備校を小春日薄く包みおり      天地     酒倒
小春日やバス待つまでの足湯かな    天人    喜の字
小春日や定席埋めて猫だまり      天     雨不埒
テケタカテン小春日和の寄席太鼓    天      逆月
トタン屋根猫滑り落ち小春かな     天      華南
小六月厚き書物を求めけり       天      逆月
物干に斜め影ひく小春かな       地地     酒倒
小春日や愁ひは置きて窓放つ      地人     菫女
小春日や碁も早々に酒肴        地      音澄
小春日や机に句帳置いてある      地      駒吉
小春日や駅前広場の大道芸       地     喜の字
ふた駅も過ぎぬに寝入る小春空     人人人人   音澄
小春日や老婆地蔵と並びおり      人人     華南

【白菜】
白菜をかかえて男盛りなり       天天天地地 喜の字
白菜や昭和の母の割烹着        天天人    菫女
蒼天に白は白菜老北京         天地人人   豆蛙
白菜を切る夜微かに地の揺るる     天地     逆月
白菜がうなじ艶めく季節かな      天人     華南
迷ふても人は甲斐なし大白菜      天      逆月
煮崩れのせぬ白菜の気骨かな      地      駒吉
白菜のつっぱり緩むお湯の中      地      華南
決心をしてざっくりと白菜切る     地      逆月
我読書妻は白菜漬けており       地      駒吉
いつからか買う白菜は四半分      地     喜の字
朝粥や白菜噛む音確かなり       人人     菫女
白菜の四把重たし老夫婦        人      華南
白菜を抱いて戻れり鍋の夜       人      菫女
白菜の小さいを選る妻の世話      人      音澄

【毛布】
うしろゆび指されるおんな毛布干す   天天天天天 喜の字
生き始め毛布を握る赤子の手      天天     逆月
抱き合えば毛布の中に超新星      天      音澄
我が毛布奪ひて眠る遅き客       天      菫女
残照の匂いほのかな毛布掛く      地地人人   駒吉
旅すれば毛布遊女のごとはべり     地地人    華南
毛布にも病棟の臭い消灯時       地地人   喜の字
毛布一枚難民少女の祈りかな      地地     逆月
人型の毛布悲しきバクダッド      地      華南
幼き日指でなぞった柄毛布       人      酒倒
陽を吸って軽き毛布の匂い嗅ぐ     人      音澄
みちのくの宿の毛布の肩さむき     人      酒倒
古毛布むかしのいへの香のなごり    人      逆月
独り身に旅の毛布は薄かりき      人      華南



平成18年10月 晩秋の句会
【柿】
また一人止まり仰ぐや柿の秋      天天天人人  菫女
柿熟れて夕日を絞って滴りぬ      天地     華南
歯に染みる肉の冷たさ次郎柿      天地     逆月
柿熟れて路地に子規の句ある根岸    天人    喜の字
マンションの隣の部屋の柿簾      天      豆蛙
柿熟れて蒼穹横切る鳥の影       天      華南
渋柿に丹似たる教師も恋をして     天      華南
紺碧に鳥も飽きたか柿一つ       地地人人  雨不埒
足柄の畑の煙や柿赤し         地人     逆月
嵯峨野まで歩いてみたり柿の庄     地      菫女
熟れ柿の大仏の背に赤一つ       地     喜の字
廃屋の裏で密かな柿実験        地      酒倒
白き朝柿は転がる我駆ける       地      呑暮
柿ありて異国の市やKAKIとして   人人     菫女
切り分けて白き身の出る柿の種     人      音澄

【夜なべ】
いきどほるからだで夜なべつらぬけり  天天天地   逆月
夜なべの灯月入る頃に消えにけり    天地地   喜の字
一目づつ思いに近づく夜なべかな    天人人人  雨不埒
夜なべ明け我に賛美の朝日さす     天     喜の字
夜なべして漬ける青菜に月の味     天      華南
漆黒も夜なべも消えし過疎の村     天      菫女
目覚めれば母の夜なべや晴れの服    天      菫女
ペンを置き靴下を穿く夜なべかな    地人人人   酒倒
空缶を蹴る輩あり夜業かな       地人人    酒倒
「沙翁」読む晩学故の夜なべかな    地人    喜の字
風狂のわれひとりする夜なべかな    地      逆月
分け置きしうどん夜なべのあとに煮る  地      音澄
居間廊下あし音ひそか夜なべあり    地      音澄

【秋深し】
山に城父出づる地や秋深し       天天天地人  菫女
隧道に入日細くて秋深し        天天地    華南
爺さんも婆さんも居ぬ秋深し      天人     酒倒
電柱に『さがし猫』ありて秋深し    天     喜の字
秋深し黄ばんだ乱歩の字の細き     天      華南
秋更けて白鳥ボートの所在なき     天      豆蛙
秋さびて両手温めの大湯飲       地地     豆蛙
秋深し遂にニコンは持てぬまゝ     地人     酒倒
幾たびも秋闌にひと恋ふる       地      逆月
秋深しつい無理筋の恋をする      地      呑暮
秋闌けてアンナカレーニナ読了す    地      逆月
秋深き田舎札所を急ぎ足        地      音澄
秋深し消えし名もあり住所録      人人     音澄
秋深し人づてに聞く運不運       人人    喜の字
深山に草踏む音や秋深し        人      逆月
秋さびてコンビニさまざま湯気仕掛け  人      豆蛙



平成18年9月 仲秋の句会
【柳散る】
長やまひ馴れし女や柳散る       天天地人人  菫女
柳散る渡るひとなき二重橋       天天地   喜の字
葬列に一陣の風柳散る         天地人   喜の字
八丁も見なれぬ顔や柳散る       天人    雨不埒
風吹けば吉野の渡しに散る柳      天人     華南
散る柳駐車違反のボンネット      天      音澄
柳散る屋形の艫や船頭唄        天      酒倒
訪れる人なき庵や柳散る        天      華南
制服の二人の距離に柳散る       地地地    音澄
柳散るジャズピアノ鳴る窓の下     地人     駒吉
柳散る運河の舟や櫓の軋み       地人     逆月
柳散る十三屋越し池之端        地     雨不埒
街の灯に戻る昭和や散る柳       地      逆月
ビヤホール煉瓦の端に柳散る      人      菫女
辻斬りの癇にさわるや柳散る      人      華南
柳散る堀割眺む犬ひとり        人      呑暮

【水見舞い】
水見舞い遠くにありてラジオ聴く    天天地   雨不埒
引かぬ水にゆがんだ月の水見舞い    天天地   喜の字
秋出水真綿のごとき雲映し       天天地    逆月
水見舞ひ空に青さのあるばかり     天地地人   菫女
水見舞いまず表札の泥拭う       天地     華南
乾物を土産に遅き水見舞        天人人    酒倒
一村が白地図となりて水見舞い     天     喜の字
こころみて出さずに了ふ水見舞ひ    地人    喜の字
水見舞消防団の声高し         地人     駒吉
出遅れの水見舞いにはビールなり    地      呑暮
水見舞い地図役立たぬ町歩く      地      華南
サイレンにおののく夜の秋出水     人人    喜の字
水見舞い二階の皆に笑顔あり      人人     音澄
風入れてビール飲み出す水見舞い    人      音澄

【衣かつぎ】
手捻りの豆皿咲かす衣かつぎ      天天    雨不埒
老い猫と酒一合と衣かつぎ       天天    喜の字
衣かつぎなま暖かき地の匂い      天地地地   音澄
独酌に余る一鉢衣かつぎ       天地人人人人人 呑暮
火点しの早まる日々や衣かつぎ     天地人人   菫女
衣かつぎくつくつ笑う小鍋かな     天人    喜の字
静かなり娘ゆく日の衣かつぎ      天人     華南
衣かつぎ付毛の友と酌み交わす     天      酒倒
初物と仏壇に座る衣かつぎ       地地地   喜の字
衣かつぎ酒器離すまい片手剥き     地地地    酒倒
ものおもひしつつ剥くなり衣被     地      逆月
婆さんの髷が並ぶや衣かつぎ      地      音澄
衣被つるりむければ今日の栄え     人      菫女



平成18年8月 初秋の句会
【初秋】
秋初め川辺の煙高く伸び        天天地人   逆月
初秋や雲は芯から緩みゆき       天天地人   華南
初秋や空一色の大旋回         天地    雨不埒
初秋満つ人ひとりなき田園に      天地     音澄
海の家店仕舞いして初秋くる      天      駒吉
初秋や寝息重なる四畳半        天      呑暮
北側の窓開け放てば初秋なり      天      音澄
目覚めれば日焼け肌にも秋初め     天      駒吉
初秋や孫でも遣いに出しましょか    地人     酒倒
孟秋や女流の棋士のいきどほり     地人     逆月
初秋や愛さるることなき乳房かな    地     喜の字
ブルースになりし初秋の波の音     地     喜の字
初秋や音と色とに満ち満ちて      地     雨不埒
水湧ける庭初秋に旅心地        地      菫女
雲去りて天に初秋の高さあり      人人    喜の字
初秋や静かになりぬ露天風呂      人      音澄
初秋を足袋裏で知る大泥棒       人      華南
初秋や雲は暫しの展覧会        人      菫女
不細工な実畑に寝る初秋かな      人      華南

【山椒の実】
木漏れ日を食いつつ山椒の実太る    天天天地人  華南
お茶漬けに古都の香りや実山椒     天天人    華南
山椒の実好々爺にはなりきれず     天天    喜の字
人描かぬ絵師の筆なる山椒の実     天地地人   酒倒
山椒の実採りつつ隣の庭眺む      天地人    音澄
山中の分子模型や山椒の実       天地人    酒倒
若かりし母の小言や実山椒       地人     菫女
山椒の実不良中年いきいきと      地地    喜の字
山椒の実麻酔銃だぜBB弾       地      酒倒
鰻屋や親から手を出す山椒かな     地      駒吉
実山椒なぜか五木の子守唄       人      駒吉
だれきった脳に山椒の渇入れる     人      駒吉
三等賞あの笑顔の子山椒の実      人      逆月
山椒の実世間を拗ねてのつぶてかな   人     喜の字

【鈴虫】
鈴虫の声なくなりて夜広き      天天天天地地人 豆蛙
話尽きただ鈴虫の鳴く夜かな      天天天人  喜の字
鈴虫の途切れるところで別れたり    天地地    華南
鈴虫のふと止みたれば気配たつ     天地     菫女
鈴虫を庭に放てど無音なり       天人     酒倒
鈴虫に瓜一片やり酒を酌む       地地     音澄
鈴虫や妻のひと言優しうす       地人     駒吉
鈴虫と笹で帆舟ができまいか      地人     酒倒
鈴虫や深夜の点滴終わるころ      地     喜の字
鈴虫の声冴え冴えと孤閨の夜      人      華南
鈴虫が買って呉れろと鳴く八百屋    人      豆蛙
籠野菜ともに旅する鈴の虫       人     雨不埒
鈴虫やジャズヴォーカルの君と居て   人      駒吉
鈴虫や納戸の闇を震わせて       人      音澄



平成18年7月 晩夏の句会
【梅酒】
一杯の梅酒を昼寝の薬にし       天天人    音澄
秘め事の床下にあり梅酒瓶       天地人    菫女
ひとりして小言百遍梅酒酌む      天地     酒倒
うめざけに酔ふてピアスの染まりけり  天地     逆月
下戸にして老妻自慢の梅酒かな     天地    喜の字
鉾町にひと雨過ぎて梅酒かな      天地     酒倒
酒飲まぬ妻の梅酒や熟しけり      天人     音澄
古民家の土間梅の酒出されけり     天      駒吉
ふっふっふ拙者が梅酒小僧なり     天      酒倒
梅酒瓶くせ字残して母は逝き        天     こし庵
借用の口上述べて梅酒ほす       地地人    華南
寝酒にと梅酒ひと口ねだる妻      地人    こし庵
長客と思わず梅酒を出しにけり     地人     華南
未だ開けぬ梅酒の瓶に母の文字     地     喜の字
梅酒漬く思わぬ人の技自慢       地      豆蛙
腹痛よやれ頭痛よと梅酒減り      人人    喜の字
一年の長きは梅酒を待つ間       人      呑暮
漬け初めを忘れ梅酒や夜の淵      人      逆月
南極をグラスに浮かべ梅酒かな     人     雨不埒

【夕焼け】
サヨナラの手を夕焼けに染め抜かれ   天天天地人 喜の字
夕焼けに建て替えを待つ団地かな    天天     豆蛙
夕焼けがビールに溶けるガード下    天地人人   呑暮
快速は夕焼け行きの吉祥寺       天地人    豆蛙
大夕焼け告解僧も懺悔かな       天地     華南
我独り夕焼け負って疾走す       天      華南
夕焼けに相撲甚句の節流る       天      酒倒
夕焼けてまた一日を使いけり      地人人    酒倒
夕焼けに染まるからくり山車の上    地人     逆月
夕焼けて連絡線は貨車を呑む      地人     酒倒
夕焼けの影を連ねて家路つき      地     こし庵
夕焼けの朱色に街は廃墟めき      地      音澄
夕焼けに染まりし烏も宿帰り      地     こし庵
夕焼けや空が紅差す眉を引く      地     喜の字
夕焼けも松鶴家千とせも夢のあと    人      呑暮
夕焼けや雲は時々母の顔        人      逆月
夕焼けやとどろく脳内交響楽      人      逆月

【かみきり】
かみきりやそこだけ動く壁の蔦     天天地地地  音澄
カミキリと渾名の人の通夜である    天天地   喜の字
ギチギチとかみきり虫のメカ仕掛け   天地人    音澄
かみきりや孤高の生に誇りあり     天地     音澄
標本のかみきりのちと動きけり     天地     駒吉
かみきりや髭の先まで気魄あり     天人    喜の字
天牛のゆうゆう歩む寿陵かな      天人     豆蛙
かみきりや断髪式を見ていたり     天     喜の字
虫籠で秘策を練るやかみきり虫     天      華南
髪切虫少年の掌のやはらかき      地      菫女
カミキリで妹泣かして叱られて     地      豆蛙
かみきりを見て翌朝床屋行く      地      駒吉
ホイホイがかみきり虫を捕らえたる   地      呑暮
ひげ吊られ宙をにらむや天の牛     人人     華南
髪切りや泣き虫つよ虫黙り虫      人人     逆月
天牛に意地あり正楽師匠にも      人人     逆月
カミキリや夜間金庫でなに狙う     人      酒倒
かみきりや倒されたるは橡の木     人      菫女



平成18年6月 仲夏の句会
【かたつむり】
かたつむりY字路で問ふ雨静か     天天     菫女
猫の目に映らぬ歩みかたつむり     天天     音澄
かたつむり眺む午後なりずる休み    天地地人人  呑暮
蝸牛シュールな地図を描きおり     天地     酒倒
かたつむり明日には垣根越えてこよ   天     喜の字
かたつむり売る朝市や異国なり     天      菫女
首すくめ亀と蝸牛は桶の中       天      華南
一軒の借家もあらずかたつむり     地人     音澄
寄り道で怒る友無きかたつむり     地人    雨不埒
かたつむり角突き合わす妻はなし    地人     華南
かたつむり集め集めて男の子      地      豆蛙
尼寺の石段歩むかたつむり       地      華南
かえり道まだそこに居り蝸牛      地      酒倒
蝸牛夜どうし歩いて五尺かな      人人     駒吉
ででむしやイナバウアーの真似をする  人      駒吉
一ミリのその半分からかたつむり    人      豆蛙

【夏草】
尋ねれば夏草だけの住所なり     天天天天天天 喜の字
夏草やついに廃屋占領し        天      駒吉
夏草やここより永久に特攻隊      天      音澄
山迫る街に住みたし夏の草       天      逆月
夏草を二歳の足が踏んでゆく      地地地   喜の字
夏草や昭和の子らのかくれんぼ     地人人人   菫女
夏草の壁に消えればホームラン     地人人    音澄
夏草や知覧上空群青色         地人     菫女
夏草や恋の味方し邪魔もする      地      音澄
夏草も夕ぐれも友だったころ      地      菫女
夏草や娘は叫ぶ妻怒鳴る        地      酒倒
夏草や一寸法師夢の中         人     雨不埒
外野手はバッタのごとく夏草に     人      豆蛙
夏草や暴君殺む将の眉         人      逆月

【枇杷】
枇杷熟れて表札ひとつ加わりぬ     天天地   喜の字
枇杷のなる家の娘をもらいたり     天天     華南
教頭に呼び出されしは枇杷の件     天人     酒倒
ひとつずつ巻ける地方紙安房の枇杷   天人     菫女
ポケットに枇杷二つあり小盗人     天人     駒吉
恒例の素描を終えて枇杷を剥く     天     喜の字
この家は枇杷目印しと今年また     天      豆蛙
電車みち獲られぬ枇杷の大きさよ    地地人    駒吉
三代の夢を紡ぐか庭の枇杷       地地    雨不埒
病人の歯の痕のこす枇杷捨てる     地人     豆蛙
枇杷熟れる夜更けの家に帰りつき    地      華南
枇杷届く旅の記憶のふたつみつ     地     喜の字
とって食う子もなき庭に枇杷実る    地      音澄
枇杷剥いていのちの水を見つけたり   人      逆月
父と娘とそぞろ夜道に枇杷灯る     人      豆蛙
ゴーギャンにボンジュールという枇杷たわわ 人    華南
放埒を己が勝手と枇杷を剥く      人      逆月




平成18年5月 初夏の句会
【走り梅雨】
走り梅雨艇庫に急ぐエイトかな     天天天天  喜の字
ジェット機の千尋下は走り梅雨     天天     駒吉
走り梅雨盗られた傘の懐かしさ     天      音澄
宅配の若者奔る走り梅雨        天      酒倒
片付かぬこともう重なりて走り梅雨   地地     豆蛙
立ち止まる画廊の暗み走り梅雨     地人人    逆月
図書館の古書の匂いや走り梅雨     地人    喜の字
バス停に待つ人のなき走り梅雨     地人     音澄
走り梅雨薄暮のバーの扉の外      地人     逆月
外野手の我慢している走り梅雨     地      音澄
こなからが心張り棒や走り梅雨     地      菫女
走り梅雨風炎我を襲ひけり       人      菫女
露天商ビニールかぶせて走り梅雨    人      華南
走り梅雨卒論テーマ決定す       人      菫女

【若葉】
若葉照る蟻這いまわる明日は雨     天天     酒倒
熟睡の眼にたのもしき若葉かな     天天     逆月
若葉風賢治は今日も畑にいる      天地地人   音澄
乗りたくてただ乗る路線若葉かな    天地     菫女
若葉してサクラクレパス総本舗     天地    喜の字
隧道をでれば若葉の萌ゆる山      天人人人  喜の字
大鳥居おおう九段の若葉かな      地地    喜の字
丘の下若葉の間(あい)に町役場    地      音澄
若葉打つ雨の滴や箱根の湯       地      華南
若葉風古き蕎麦ちょこひとつ増え    人      豆蛙
若葉雨屋根にぱらつく資料館      人      逆月
柿若葉サイクリングの父と児と     人      駒吉
濃い闇にまさか若葉の萌える音     人      呑暮

【夏服】
夏服や侍従長の猫背かな        天天天   喜の字
夏服の少女鴎の群のごと        天天人    豆蛙
昭和史の写真に残る夏の服       天地地   喜の字
夏服の妻軽やかに映画観に       天地     駒吉
霜降りという名の夏の服を着る     天      駒吉
夏服や江ノ島までの乗車券       地地人人  喜の字
夏服や裾丈おろす十センチ       地人     菫女
長患い麻の夏服をゆるくして      地人     音澄
明日からは夏服ですよ教師告ぐ     地      菫女
夏服や袖の冷たき旅の朝        人人     逆月



平成18年4月 晩春の句会
【黄砂】
黄沙吹く流浪の民の砂時計       天天天地  喜の字
つちふりて蒙古力士に活入るる     天天人    酒倒
大陸の近づける日や黄沙来る      天地地人   菫女
黄砂湧き時を超えたる宙の旅      天地    雨不埒
都心部の黄砂夕暮れ早めけり      天人     駒吉
確かめてみる突き当り霾(よな)ぐもり 天      逆月
霾るや時代を刻む大樹あり       地地     逆月
日曜日黄砂の中を水買いに       地人     駒吉
隊商も胡姫も黄色き砂と降る      地人     豆蛙
黄砂立つ赤い大地に命あり       地      音澄
駐車場黄砂まみれの新車かな      人      駒吉
黄砂舞う友をなくした記憶呼ぶ     人      呑暮
朝がえり黄砂舞う街ややこしい     人      酒倒
黄塵を流さず大和の小糠雨       人      菫女

【茶摘み】
ラジオから虎造流れて一番茶      天天地地地  酒倒
お茶を摘む背中にぬっと富士の山    天天人人   音澄
茶摘時一山いよよ丸みたり       天地地    菫女
居住まいを正して見合う一番茶     天人    雨不埒
早技もときどきくるう茶摘みかな    天      華南
ジーンズの娘茶を摘む午前9時     天      駒吉
黄檗の野辺にただよひ茶摘唄      天      酒倒
空の青海の青背に赤襷         地人     逆月
一番茶摘む指先に苦味あり       地人     音澄
二番茶を摘みに来る娘の標準語     地     喜の字
茶摘女は高校生や道の駅        地      菫女
緑海に見え隠れする茶摘みかな     人人    雨不埒
茶摘女の手練手管や高級茶       人      華南
肩越しに富士が顔出す茶摘みかな    人     喜の字

【しゃぼん玉】
お隣のにぎやかな日よしゃぼん玉    天天天地   豆蛙
何十も虹を運ぶやしゃぼん玉      天地人    呑暮
遮断機の竿くぐりゆくしゃぼん玉    天地     酒倒
薄命や花より早きしゃぼん玉      天人    雨不埒
しゃぼん玉も夕焼け空が見たかった   天     喜の字
行く先を風に託してしゃぼん玉     天      駒吉
得意げに煙草吹き込むしゃぼん玉    天      音澄
近づけばフンと横向くしゃぼん玉    地人     音澄
幼な子の手を逃れ飛べしゃぼん玉    地人     音澄
蟹吹きしシャボン玉舞う凪の磯     地人     酒倒
留守番はのらねこ黒としゃぼん玉    地人    喜の字
しゃぼん玉棟上げ式の庭で爆ぜ     地     喜の字
飄逸にこだわる矛盾しゃぼん玉     地      逆月
携帯をなくした乙女しゃぼん玉     人      逆月
死ぬまでは生きてみようかシャボン玉  人      酒倒
いずこより来たりし虹の石鹸玉     人      駒吉



平成18年3月 仲春の句会
【雲雀】
朽ち果てし砲台跡や揚雲雀       天地地    酒倒
地にあれば土くれのごとき雲雀かな   天人人    音澄
揚雲雀川風虚し凡フライ        天人     酒倒
風運ぶ大河の空に揚雲雀        天人     音澄
躁鬱の病に障る雲雀かな        天人     酒倒
揚げ雲雀ここ東京のはずれなり     天人    喜の字
重力をもてあそぶかな舞雲雀      天      逆月
雲雀籠犬は耳まで欠伸する       天      菫女
雲雀鳴く母の作りしのり弁当      地地     菫女
揚げ雲雀鈍行列車時間待ち       地人     菫女
草に寝て雲雀を聞いてた少年期     地     喜の字
土手を行く吹奏楽団揚げ雲雀      地     喜の字
雛の声届くや雲雀降りて来し      地      駒吉
雲雀舞う天に響くや詩の一篇      人      華南

【沈丁花】
雨戸繰る手を止めさせて沈丁花     天天地    豆蛙
合い鍵は花壇の奥の沈丁花       天地人人  喜の字
老いの町無聊静寂沈丁花        天地人    音澄
立ち止まることもなき猫沈丁花     天地     音澄
犬の息止めさすほどの沈丁花      天      駒吉
陽だまりに母の影あり沈丁花      天      華南
沈丁の匂ひの中や鬼を待つ       天      菫女
沈丁の香り疎まし婦人会        地      酒倒
沈丁花感じ口開く歯科の椅子      地      菫女
沈丁花たどれば著名な人の墓      地     喜の字
瑞香や硝子の先に夜の香り       地      逆月
厚化粧ど演歌シャンソン沈丁花     人人     酒倒
バス通り沈丁花のほか香りなし     人      駒吉
沈丁花満開の庭子ら走る        人      駒吉

【卒業】
卒業証丸める先の道細し        天地地人   華南
ほこり積む卒業証書の筒四本      天地人    酒倒
腕を吊る包帯白し卒業式        天地     華南
教え子と一緒に教師卒業す       天人     駒吉
子ら去りて星美しき卒業式       天      華南
帽子投げ拾ってかぶって卒業す     天     喜の字
うとましきものまで愛し卒業式     地地人    音澄
帰郷して卒業の道辿りみる       地      酒倒
図らずも卒業のこと多き五十前     地      酒倒
友の声幻聴のまま卒業す        人      音澄
卒業式大和撫子希少価値        人     喜の字
学び舎も少年時代も卒業す       人      逆月
専門書棚には少な卒業す        人      菫女



平成18年2月 初春の句会
【おぼろ月】
谷底の小屋にも遅きおぼろ月      天天天地   音澄
朧月イヤリングひとつ落としたの    天地    喜の字
おぼろ月薄墨おとす大伽藍       天地    雨不埒
夢に飽き眺める先のおぼろ月      天地     華南
はしご酒家路は遠しおぼろ月      天      呑暮
会うこともまたなき人やおぼろ月    天      華南
おぼろ月問われて嘘の二つ三つ     天     喜の字
おぼろ月待って静かに家を出る     天      音澄
飴ひと机に光る朧月          地人     逆月
小湊の潮待つ人に朧月         地      音澄
戯れて愛の仕草やおぼろ月       地      菫女
浜行ける人はだしなり朧月       地      菫女
見る人に百万の夢おぼろ月       地     喜の字
待ち人は次の電車か朧月        人人人    酒倒
君乗りしtaxiの尾灯おぼろ月    人人     酒倒
二年前おぼろ月夜の露地のファド    人      逆月
朧月髪復活す四十八          人      酒倒
初恋の記憶かすかにおぼろ月      人      駒吉
銀色の鱗跳ねたり朧月         人      華南

【春景色/春色/春景】
同じこと考へてゐる春の色       天天地人   逆月
春景や画帖一閃黄色引く        天天人人   酒倒
万華鏡くるり変わりて春の色      天地地    菫女
濃く薄くいずれ緑や春景色       天地人    音澄
春景色峠の茶屋の昼の酒        天地人   喜の字
パレットの中に春色はなやぎて     天地     駒吉
じょじょはいておんもへ出たか春景色  天     こし庵
人目引く緑の靴や春景色        天      逆月
春光や楽の役者の笑ひ声        地地人    逆月
イーゼルの二つ並びし春の景      地     喜の字
春光や九九唱じたりランドセル     地      華南
一色にまた一色と春景色        人人    雨不埒
祇王寺の道へとつづく春景色      人     喜の字
春光やできなくなりし逆上がり     人      菫女

【蕗のとう】
山深き僧の悲恋や蕗の薹        天天天地   華南
この先は入るべからず蕗のとう     天地    喜の字
山道のやがて花なれ蕗のとう      天人     音澄
あれここにほうれそこにも蕗のたう   天      菫女
台本に無き台詞あり蕗の花       天      逆月
蕗のとう揚げる主の独り笑み      天      呑暮
少女らの青き香りや蕗のとう      天      駒吉
二つ三つ光は野にあれ蕗の薹      地地人    華南
ふきのとうひっそり目覚めを告げており 地地    こし庵
蕗の薹膝で潰せし二人かな       地      酒倒
ほろ苦き通夜に出されし蕗のとう    地     喜の字
蕗のとう揚げて大瓶でんと置く     地      菫女
腹這いになりて馨し蕗の薹       地      酒倒
北の宿三日続きの蕗のとう       人人人    音澄
蕗のとう坊主頭に採られけり      人人     駒吉
唇を噛んでいる子や蕗の薹       人      菫女
登山靴が踏んで行ったのだ蕗のとう   人     喜の字
蕗の薹刻んで酒を温くする       人      音澄



平成18年1月 晩冬の句会
【雪下ろし】
老いてなお生きる重さよ雪下ろし    天天地地人 喜の字
雪下ろし終えて夕餉の納豆汁      天天地人人  華南
雪降ろしTV昭和を映しおり      天天     酒倒
父母や雪を下ろして雪に住む      天地人人   菫女
雪下ろしシャベルの先にわが家あり   天人人    駒吉
駆けつける甥ありがたや雪下ろし    天      華南
屋根屋根にシジフォスのいて雪下ろし  天      豆蛙
己(な)を守る家といふもの雪下ろし  天      菫女
朝日射す巡査サドルの雪下ろし     地地人人   酒倒
家々は白き山波雪下ろし        地地     音澄
客帰るヤレ雪おろしの続きかな     地      酒倒
鍬よりも重き齢の雪下ろし       地     雨不埒
屋根広く途方にくるる雪下ろし     地      音澄
雪下ろし苦闘を語る爺の皺       人      駒吉
雪下ろし空に瞬く北極星        人      華南

【寒雀】
竹林の風にわき出る寒雀        天天天天地人 音澄
寒すゞめおのれの影に首傾ぐ      天天地人人人 酒倒
にぎり飯ほどきてやりぬ寒雀      天天地    菫女
目に見えぬ一線の距離寒雀       天天     菫女
門前の箒の先の寒雀          天     喜の字
読み飽きて小庭の主や寒雀       地地人人   菫女
良きことがあり寒雀に米をやる     地地人    呑暮
固き土何をついばむ寒雀        地人    喜の字
寒雀ポケットに手を入れており     地      酒倒
人見知りせぬか軒下寒雀        地     こし庵
見上げれば紙ふぶき舞う寒雀      地      華南
路地温し神保町の寒雀         人      逆月
朝の客ふくら雀の一並び          人      豆蛙
凍雀ぱらぱら落ちて鈍の雲       人      豆蛙
  
【水仙】
水仙や青年迷はず選びたり       天天     菫女
中退を届け出る朝や水仙花       天地人    音澄
水仙や缶コーヒーで手を温む      天地人    菫女
水仙にふとため息の月半ば       天地    雨不埒
行き止り水仙揺れる官舎跡       天地     酒倒
口数の少なきがよし水仙花       天人     逆月
水仙の葉揺らす和服の脚捌き      天人     呑暮
房総の水仙八百屋に香り添え      天      豆蛙
野水仙帆かけ舟ゐる海へ向く      天      菫女
断崖に水仙咲いて臨時バス       地地地人  喜の字
控えの間ほの白く立つ水仙花      地人     華南
水仙を美男にしたる夜半の雨      地人    喜の字
花知らずといえどもこの香水仙花    地      音澄
猫の窓水仙の鉢占拠せり        地      音澄
水仙をたずねて海のやわらかき     人人     豆蛙
水仙にワーズワースを探しけり     人      華南
水仙の茎写しゆく画学生        人      酒倒



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