(メールマガジン"ZEKT"寄稿コラム バックナンバー)

vol.11:いいかげんな抱負
2004年01月25日(日)配信分
 おごぶさたでございます。偏屈・不器用・貧乏性のcaveです。もう残すところ11ヶ月と少々になってしまいましたが、今年もどうぞよろしくということで。

 さて、編集長のほうからいただきました今回のテーマは「ことしの抱負」。なんですが、あたしのほうは「偏屈ぼやき」でやらせていただいてまいりましたもんで、あなた、手前のホーフなんてものは、こっ恥ずかしくて考えたこともございません。少々狼狽えております。しかしま、いつものようにぼやいていれば、そのうちおのずと抱負も見えてくるだろうと高をくくりまして、進めさせていただくことにしますか。

 しかしなんですね。年明け早々から、やれBSEの、鶏インフルエンザの、SARSのとあいかわらず不健康なニュースばかりでございます。その上、自衛隊のイラク派遣やミサイル防衛問題などの物騒な話題ばかり。首相もさっさと初詣に行っちゃうし。のんきに抱負なんて言っていられる世相じゃありませんぞ。昨年にしたって、年間ニュースのトップが阪神タイガースのリーグ優勝だ、っうんですから脳天気の極み。おまけに昨年の漢字まで「虎」ですと。いくら他に明るい話題が無かったからといって、あまりにもいいかげんですな。

 どうも、不安定な世相をスポーツやお笑いやらで誤魔化されているような気がして仕方がない。今年にしたって、リトル松井の大リーグ参戦やチョーさん(長嶋監督)が目玉のアテネ五輪の話題で一年をケムに巻くつもりなんじゃないでしょうかね。そのための大きな役割を担うのがマスコミですな。また、参院選が近づけば、政治家のマスコミへの顔出しも増えてくることでしょう。討論番組などで、都合の良い話を振り撒き、または深刻な顔で訴えたりするんでしょうが、地方じゃ相乗り選挙もしている二大政党が政策を争うというのも、これまたいいかげん。そしてイベント化してしまった開票番組が夜通しのお祭り騒ぎ。あたしはテレビは見ないようにしているんですが、もはや野放しにしていて良いのかと言う気になってきます。お、ここで抱負がひとつできました。「今年はなるだけテレビを観ます」。マスコミの監視ですな。しても仕方ないといえばそうですがね。

 政策が、マスコミが、というより「日本人」という集団全体が、難儀なご時世から、気楽なほうに逃げて行っているような気がしてなりません。現実から目を逸らせて、ちっぽけな我が身の回りだけの保身に走る。このいいかげんさ。そういえば昔から「ええじゃないか」なんてのがありましたからね。身に染みついた性なんでしょうか日本民族の。最近の若者が多用する言葉の「とか」なんてのも、いいかげん傾向の露出でしょう。「何気に」なんてのもそうですな。この何気、どうやら「何となく」の意味で使われているのではないらしい。本当は、「とっても」なのだけれど、自分が断定した表明をして、それを否定されるのを怖れるあまり、曖昧なニュアンスを加味しているご都合のいい新表現のようです。そのうち、国会の代表質問でも「何気に」なんて答弁が聞かれるようになるのは間違いありません。いいかげんな表現がもっとも重宝されるのは、なんたって国会ですからな。お、また出た抱負。「新しい異様な言葉に注意します」。でもすでにあたしだって使ってしまっているんでしょうがね、知らず知らずのうちに。ラクで便利な言葉の魔力ですな。

 株価はじりじりと上昇傾向にありますようで。本当に景気は良くなるんでしょうか。もっとも、あたしの懐に還元されるまで、我が身が持ちますかどうか。あいかわらず下々のものには厳しいことに変わりがありませんな。しかし円もまた上がってますようでして。政府は市場介入でドル、米国債をどんどん買っているようで、それでアメリカは多大な貿易赤字にもかかわらず助かっていると言うんですから、どうも本当に賢い策なのかよと疑いたくなりますな。イラク戦争以降、米国に一極化したベタ寄りの進路を取っているように見える日本。ハッキリと自分の意見を言う欧米に比べて、曖昧な外交と言われ続けてきた訳ですが、このうえ先程触れた、「いいかげん語」が増殖し外交語としても幅を利かせるようになれば、目も当てられません。あたしは外国語に不案内なんですが、得意な皆さんはぜひ会談の内容などを原語でよく聞いておいてください。「とか」「何気に」「じゃないですか」なんてニュアンスがちらほら感じられたら「何気に日本を逃げ出そうとか言う感じになってくるじゃないですか」、こっちも。

 だいたい、今回多用している、「いいかげん」という言葉自体が、いいかげんですな。手元の簡易な辞書によりますと「好い加減」の意味は(1)適度、よい程度。(2)中途半端、でたらめ。(3)かなり、相当、大分。ですから…どうにでもとれる。なんとまあ「いいかげんな抱負」なこと。