(メールマガジン"ZEKT"寄稿コラム バックナンバー)

vol.5:ほんとにいいの?
2003年03月09日(日)配信分
 偏屈・不器用・貧乏性でお馴染みのcaveでございます。
 今回も、あいも変わりませず、みみっちい「ぼやき」でお茶を濁させていただくわけなんですが…

 冬場から春先にかけまして、わたしのところにはいままでのご縁から、採用関係のお仕事が増えるのです。学生さんにお送りするダイレクトメールや会社案内、ホームページなどの採用ツール類の制作なんですが、そちらのほうのお仕事にもここ数年、目立った変化が現われてきております。

 他ジャンルにも増してこちらのほう、インターネット化が進んでおりまして、大手採用サイトを利用した、ネットによる登録・選考のシステムが確立しました。もはや学生さんはパソコン無しでは就職できかねないような具合になってます。それに伴い各企業も、自分ちのサイトの採用コンテンツづくりに注力せざるを得なくなり、会社案内等もウエブ上のものが主流になってきました。

 ところが、この傾向、問題点も含んでおりまして、全国津々浦々から広くいろいろな人材を数多く集めることはできるものの、どうしても有名・人気企業にエントリーが集中します。また、その多数の若者が会社の欲する人材かどうかを見極め、フルイに掛けるのはなかなか難しいのでありまして、この点は、インターネットありと言えども、やはり旧来通りの説明会や試験や面接ノウハウに頼ることになります。となると、やはり「紙」に印刷されたツール類も必要ということになり、パンフレットなどのお仕事がわたしのところにも回ってくるワケなんですな。

 この採用広告のジャンル、ほんの数年前までは各企業とも、よりよい人材に入社していただこうと、結構な予算をかけて高度なレベルの企画・表現を要求され、それに応えるクリエイターたちも「ヤリガイ」のある面白いお仕事として、アタマを捻っていたものなんですが、最近はどうもおかしな気配が。

 先日も、某大手メーカーさんの入社案内のお仕事をいただきました。A4サイズ、六十数ページオールカラーの堂々たる体裁なんですが、その制作予算たるや、エエッ!と思うほど微々たるもの。各事業部ごとに図表や写真情報満載の台割りなんですが、このページ単価でどうやって図表起こそうというの? と、あきれておりましたら、各事業部から支給するという連絡。ヤな予感がわたしを包み込みます。

 送られてきた原稿をみると、ヤな予感が的中しました。わはは。やはり各事業部の担当さんがお作りになられた、ホームページ用のパワーポイント図表ではありませんか。それもシロートさんが勝手に作っているものだから、色も書体もイラストもなにもかもバラバラ。これをレイアウトしながらマンマ嵌め込んでいってくれりゃいいよ。ってことなんですが、あなた、これ、社内資料じゃないんだから…それに御社は国際的にも名の通った天下の○○社さん。社格、世間体というものもおありでしょうに…

 わたしも一応デザイナーとしての見解を述べさせていただきましたが、予算が無いのヒトコトでお終い。職人気質フル発揮で出血大サービスしようにも、このページ単価じゃどうすることもできません。血のモトがありません。仕方なく割り切って、ご依頼通りにシロート原稿大量ナマ使用の某大手企業会社案内を納品する羽目になってしまいました。嗚呼、自己嫌悪。

 まあ、採用関連予算ワクの大部分を大手採用サイトの利用料に吸収され、その上、自社ホームページ内に凝った採用情報コンテンツを制作したうえの、残り予算&残り材料で紙媒体は制作してしまおう、というものなんでしょうが、インターネット上のものならともかく、紙に印刷された冊子ですから物体として残ってしまうのであります。表紙には有名なロゴマークも鎮座ましましている代物です。大手企業全部の傾向というわけじゃないんでしょうが、一体、こういうものが完成してしまう大手企業の内部って、今どうなっているのですかね? 
 あのパンフレット、社長や株主が見たら怒ると思いますよ、たぶん。