(メールマガジン"ZEKT"寄稿コラム バックナンバー)

vol.8:若者たち
2003年06月08日(日)配信分
 「ぼやき」が身上のおっさんが、「若者たち」なんて表題を掲げると、どうせ苦言を呈しまくるのだろうと思われそうですが、ま、読んでやってください。ここで言う若者というのは、学生さんやフリーターの方々ではなく、大学を卒業して企業に就職された方々のことで、わたしも現在はさほど多くの接点があるわけではありません。なので、あまりありがたみはありませんが、とにかくわたしの感じたことを書いてみることにします。

 古来、「近ごろの若いモンは…」というのは、上司先輩間のグチや酒場ばなしの定番になってきたフレーズでありまして、いかなる世代の人間でも一度は言われてきたものです。ですから、あまり気にする必要はないのですが、おっさんになって気づいたことは、どの世代も「近ごろの若いモンは…」といわれていた状態のまま悪い部分を修正することなく歳を重ねてスライドしてゆくのみ、と言う事実です。ですから、多少毛色の変わった感性が、というより自分たち以外の世代には必ず違和感を感じるようになっているみたいですな。

 この悪癖(だと思うんですが)、日本だけのことなのかどうかは解りませんが、若い人からみた「おっさん連中」、確かに苦労経験は積んできてはおりますが、社会に出た頃に言われた「近ごろの若いモンは…」の内容から、ほとんど進歩してはおりません。自分はワルガキのまま歳を食い、自分たちの流儀を肯定化して、それを次の世代に「正しいこと」として押し付けてゆく、この繰り返しなんです。あげく、世代ごとに地層のような感性のカベが積み重なって、相容れない雰囲気を作ってしまうんですが、どうも残念なことに、このことは、この国では全く「改善」する対象事項に取りあげられないきらいがありまして、これからも相変わらず「近ごろの若いモンは…」というフレーズは語られてゆくことでありましょう。

 さて、われわれの巣くっております業界も、景気低迷に伴って、一時の華やかさは陰を潜めているとはいえ、メジャーCMなどが、野心と好奇心に充ち満ちた若者たちの琴線を刺激して、オレもワタシも!と誘因する魅力は、まだまだ衰えてはいないようで、こちらの進路を目指す方も少なくはありません。そういった最近の若者から感じることといえば、まず、「頭の回転の速さ」に驚きます。新しい環境を理解するのに、さほど時間を要しません。う〜ん賢いんです。そして、「自分のたてた予定」通り遂行してゆくダンドリの良さ、なんてのも昔に比べてずいぶん上手になったものです。人とのツキアイ、なんてことにもかなりサッパリできていまして、仕事を進めるうえでは、実はこちらのほうが合理的なのであります。ですからわたしは、「近ごろの若いモンは…」どころか、「日本の将来は明るいのではないか」などと思ってしまうくらいなのですが、どうでしょう。

 今の若者、社会に出た時点での基礎的能力が、かなり向上していると感ぜずにはいられません。これらは、恵まれた経済環境、怒濤の教育、溢れる情報、細分化されたサブカルチャー等のなかで揉まれ育ってきた賜物でありましょうが、しかし、不安な面も多々見受けられます。「新しい環境を理解」し対応するのは早いんですが、「本質」を捕まえたうえでの対応となると、どうも妖しい。多大な量の中から自分が走査し選択した情報の「価値」というものが、まだ良く理解出来ていないのに、安易に「それでよし」と納得してしまうこと。スケジュール遂行に関しても、不意にイレギュラーしたときの対応の不器用さ。ウエブや媒体からの情報を、自分の手作業に落し込んだときの、仕上げの大雑把さ。このあたりが、特に気になるところですか。で、そのまま修正せずに齡を重ねベテランに進んでしまう傾向があることですな。

 これねえ、おっさん連中にも問題があるんですよ。先に書いた年代地層のカベが癌なんです。上記問題点は、パソコンや同世代でやいのやいのとやっていても始まらず、ナマの人と人との繋がり、とくに世代間の情報交換がクリアしてくれることなんですが、どうも昨今お互いが避けつつある傾向にあるようで。この点に気づいて改善すれば、今の若者たちの優れた能力をもっともっと活用できて、「日本の将来は明るい!」と断言できるようになると思うのですが…。若者のみなさんも「オッサンはウザイ」なんて言ってないで、どんどん呑みに連れていってもらい、グチ(生きた腐った情報)にでも耳を傾ければ、多少はタメになりますテ。もっとも、今の景気じゃ向こうから誘ってくれることは少なかろうと思いますが…。